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朝を運ぶ者

朝が来る。


遠く、ロンサールとの国境を描くかのような山々の稜線が薄っすらと光を帯びる。

ついにこの日が来たか……

全員がこれから死に行く運命に顔色は冴えないものの、滅びる直前の……違う。

するべき事をして散る運命の俺達は最後のその時まで生きながらえた喜びとようやく迎える事になった終焉に後悔しないと言う様に最後の光景をしっかりと目に焼き付けていた。

この間までは嵐だの霰だのと不安定な天気が続いていたと言うのに、この日ばかりはどんないたずらか雲一つない青空が広がり、最後を迎える事になった朝日が俺達の顔を明るく照らしていく。


ルゥ姉が指定した時間よりも早くそろっていた俺達を目の前にしてルゥ姉は優雅に紅茶のカップを傾けていた。

背後で給仕するカヤが何とも言えない顔をしていたが


「時間まで自由ですよ?

 張り切るのは構いませんが早く来ても開始時刻は変りません」


相も変わらずマイペースで朝食後からのティータイムに美味しそうに紅茶を口に含んで


「そんなにも暇なようでしたら目覚めの一曲をお願いします」


どこからか取り出したトランペットを俺に押し付けて今日も何故か続く朝の目覚まし時計役を俺に押し付けるのだった。

俺はなんでこんな日まで……と思うもすぐそばから期待しているクレイとエンバーお前もかと予想外の期待に満ちる視線に俺はラッパを吹き始める。

あかるい希望に満ちた優しいメロディが王都の平原に響き渡る。

これから向かう城壁には既にブルトラン側も騎士と魔法使いを配置し応戦の準備が出来ていた。

そんな何処か緊迫した中で俺は子供の頃から何度も見たアニメの早朝シーンを思い出しながら演奏する。

既にこのあたりの野生動物はすべて食べつくされたと言う様に鳥さえ寄り付かない王都にハトが群れを成して飛んでいくと言う光景はついぞ現れなかった。

寧ろ動物の方が野生の感を行かしてこの異様な状態を避けていると言うのが正しいのだろう。

やがて力強い太陽の光が輝く遠くに見える稜線に向かっての僅かと言う短い曲を最後まで吹き終えてゆっくりとトランペットを口元から離した。


パチパチと拍手が流れた。

今までなかったその音にゆっくりと顔を上げれば誰もがこの天気にも負けない晴れやかな顔をしていた。

ああ、こんな朝が最後なら文句はないな。

少し照れてしまえばもういいでしょうとルゥ姉が隣に立った事で拍手は鳴りやむ。

そして高らかな声で


「おはようございます!

 このような日だと言うのにいつもと変わらぬ朝を、最近見ていなかった青空の下で無事迎えれた事を喜ばしく思います」


朝の挨拶から始まる声にどこからかおはようございますとのアンサーに誰ともなく失笑を零していた。


「さて、予定通りの開戦の時間です。

 目覚めの一曲を聞きながらのお茶の時間は終わりを迎えました」

「そんな優雅なことしているのはルーティアだけだぞー!」


クラウスが親切にもつっこんでくれたおかげでどこからか更に笑い声を貰う事が出来た。


「さて、こんないい天気の朝を堪能する事の出来ない方にこの程度のひと時すら一生理解できないのはさておき、ブルトランの方々も我々を随分と首を長くしてお待ちのようでした。

 期待に応えてお会いする事に致しましょう」


さっきまでの陽気な空気が一気に緊張を孕む物へと変わる。


「かつては我らの庭が今ではよそ者に奪われ好き勝手に荒らされる始末。

 元の住人としてこれ以上故郷が荒らされるのをどうしておとなしく見ている事が出来るでしょう!」


高らかな声はこの平原を、そして城壁の上に居る人達にも聞こえる声量での演説に誰もが待機の姿勢でその言葉に力強く頷いていた。


「これから我らはハウオルティア王の指揮よりハウオルティアを奪還いたします!」

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」


凛と響く声に地鳴りのような歓喜の声を俺は手を横に振り払えば、その声はぴたりととまる。


「今より出陣する!」


俺の宣言の許、ルゥ姉はラン兄に誂えてもらった美しい宝石の装飾品のような魔法の杖を取り出す。

タクトのように親指、人差し指、中指で杖を支えてその杖に魔力を集めるように集中する。

一時間前に語った作戦はいたって簡単。

ルゥ姉の一撃の後に脇目もふらず全員で玉座の間をまっすぐ目指すだけ。

人も戦力も足りない俺達が選べる作戦は想像より少ない。

とは言っても、ルゥ姉のバカげた破壊力に総てがかかっている。

ズンと重くなる空気に魔力に抵抗が弱い者は目を回して座り込んでいる。

杖に集まるようにして集った魔力はあまりの濃密度な加減にこの目で目視できるほど高まっていた。

初めて見た者は驚きの声を零していたが、肝心のルゥ姉の顔が芳しくない。

この城壁を見てからずっと明るい顔をしていなかったがまさかと思う。

今口に出してはいけない。

だけど、これだけ魔力をかき集めてもまだ解き放つ事が出来ないのだ。

しだいにざわつきだす周囲の様子にエンバーが一歩前に出てきた。


「期待されると困るが、この後の俺には期待しないでくれよ。

 シアー、後は頼む!」


そう言い残してエンバーも魔力をルゥ姉の杖に手を添えながら上乗せをする。


ドン!


小さな爆発音と共にエンバーの髪と瞳が黄金の色に変わった。

まとわりつく魔力が何かの形を取ろうとしている。

何この子。まだこんな芸を隠し持ってたの?なんていつもの謎の余裕を見てやっと納得できた。

何時もの知ってるエンバーとは別人なまでの、ルゥ姉と並ぶ、いやそれ以上かもしれない魔力の保持量に息をのむ。

初めて見る現象に誰もが驚くが、知っている様子の雌黄と一部の紅緋はエンバーに頑張れと応援をしていた。

ルゥ姉さえ驚いて一瞬不安定になる物のすぐに安定を取り戻した輝きはすぐに先程よりの倍以上に強く輝かせていた。


「となると、私も全力で応援しなくちゃね!

 ウード、後はよろしくね!」


シアーの軽いノリの言葉とは裏腹に、彼女を中心に輝く魔方陣と反応する様にルゥ姉とエンバーの足元にも魔法陣が広がって二人を中心に光が迸った。

ルゥ姉の魔力にエンバーが魔力を上乗せして倍近くになった物にさらにシアーが魔力を強化する呪文を唱えてさらに倍。

どれだけ膨れ上がるんだと、いつこの魔力の密度に壊れてしまうか判らない魔法の杖を不安げに眺めながらも心の中の俺ががんばれと力いっぱい叫んでいる。

だけど三人の顔色は期待に満ちるどころかますます不安げになるのを俺は見逃さなかった。


「我々の魔力に反発して漸く相手の全体の魔力の保存量が見えましたが……

 何年もかけ、民の命と引き換えに準備してきたと言うのは本当でした。

 ですが、一角だけでも崩して見せます!

 なので、どうかあとはよろしくお願いします!」


ルゥ姉らしい凛とした声で総てを託す。

見た事もない柔らかな笑みが瞬間俺へと向けられた。

最後の最後に読み間違えた、そんな泣きだしうな顔を見たのはいつ以来か。

いや、そんな泣き顔は未だに見た事はない。

彼女が泣くときはその優しさからの涙で、悔やむと言う言葉こそ一番遠い存在の物だった。

ゆっくりと腕が振り上げられるのをエンバーもシアーも仕方がないと言う様に届かなかった力の差を悔やむ様に口びるを血がにじむほど噛んでいた。

本当ならその手を振り下ろすのを止めさせ出直すと言うのも一つの手だろう。

だけどここで逃げだせば二度とこの志気を得る事は出来ない。

みんなこの日の為だけに耐えに耐えてここまで生き恥を曝してきたのだ。

それは決して恥じむ事ではない。

だけど俺と言う希望を得た以上これ以上耐えると言うのは無理な話と言うぐらいみんなの心は疲弊している。

俺達の隊列のはずれにはカヤを始め、リーナとアメリアが心配げに見守っている。

戦力の無い彼女らの視線こそこの国を追われた人達の希望を望む瞳なのだろう。

どうか私達の安らぎの地を……

声に出して叫びたいのを、ただひたすら一つの希望を願う視線は腕をまっすぐ空に伸ばした先にある光り輝く杖。

そこからさらに光が強くなる理由は別の何かを媒体に魔力を差し出したのが理由で……


この状況で差し出せるものなんてただ一つしかない。

彼女は最初からそのつもりだったのだ。

付き合ってくれた黄金を纏う彼も、背後で膝をついて祈りを捧げる聖女も思いは同じと言う様に穏やかな笑みを浮かべていた。


ダメだ……

こんなやり方じゃダメだ……


声を枯らして叫びたいのに決意した三人の意思を止める術のなさとその気迫に涙が溢れた……




『まって!』


叫べない俺の代わりに誰かが言ってくれたのだろうか、更に涙があふれる。


『ダメだ!』


止められない俺の代わりに誰かが止めようとしてくれる優しさに鼻水まで溢れだしてきた。


『ルーねぇー!

 それはダメだって!!!』


最後だから俺のように親しげに名を呼ぶ愛情に彼女がこんなにも愛されていた事を改めて思い知るが


『ルーねぇー!ちょっとどいてえええ!!!

 危ないからどいてえええええええ!!!』


何故かどんどん近づいてくる声にさすがに首を傾ける。


『とにかくみんなどいてええええええ!!!!!!』


ドップラー効果音ではないがどんどんと近づいてくる声にさすがの周囲も何かおかしいと周囲を見回す中それはあった。


赤い光の筋が東の空からものすごいスピードで近づいてきて、どいてと言う叫び声を俺達はようやく理解する中慌てて逃げ出すもそれと同時に膨大な土煙が舞い上がった。

当然ルゥ姉を始めエンバーもシアーも魔力を暴発させるぐらいならと術を解除しながらぎょっとした顔で逃げ出していて、ルゥ姉達の命を懸けた一撃は不発に終わった。

さすがに警戒してかエンバーの黄金化は解除してないけど、周囲もその通りと言う様に誰もが武器を携えて警戒をしていた。

ブルトラン側にも当然のようにこの光景は見えていて城壁の上の兵士の方達が慌てている様子も見れたがとりあえずそっちは外って置こう。


もうもうと立ちこめる砂煙が風と共に去って行く。

やがて現れた現場には地面を抱きしめる赤い髪は長いが男性の骨格の若い男がそこにはいた。


「いてててて……」


大地を抱きしめていた若い男は少年と青年と言う間と言ってもいい若々しい声と共に起き上がるも


「今のでいてててては無理があるだろう」


エンバーの呆れたようなツッコミに誰もがそこじゃないだろうと心の中で突っ込んでいた。

めくれ上がったズボンの裾からうっすらと血を浮かべる擦過傷程度しか怪我の様子が見えない姿と知っている顔に俺は愕然とする。


「ラン……兄?」

「やあ、ディ!

 久しぶりだね!」


会いたかったよと言って立ち上がって服に付いた砂をぱんぱんと叩いて落していた。


「え?何でランが?」


ルゥ姉ですら理解できないと言う様に、でも懐かしさに目を細める様子にランは久しぶりの挨拶をと言う様に俺に向かって腕を広げて……


固まった。


それから俺を睨め上げて目尻にちょっとの涙を浮かべている。

再会の涙とは違うようで戸惑っていれば


「ブレッド!帰ろう!」


来たばかりだと言うのにいきなりの帰宅の宣言。


「え?まってよ!

 せっかく会えたのに何で?!

 俺に会いに来てくれたんじゃないの?!

 ってブレッドは何所だよ?!」


思わずその手を掴んでしまえば睨み上げてきた視線の両方にははっきりと涙がたまっている。


「これだから男の子はデリカシーがないと言われるのですよ。

 ランは大器晩成型でしょうからいずれディックを追い越します。

 それまでのわずかな間ぐらいディックに勝ちを譲ってあげてくださいな。

 って言うかブレッドは何所です?!

 貴方の可愛い弟が大泣きですよ!」


俺を見ながら呆れたと言うルゥ姉にランはついにわあわあと泣き出してその胸に飛び込んで泣いていた。


「羨ましい……」


どこからかそんな声もちらほらと聞こえる中フリーデルがそっと耳打ちしてくれた。


「どうやらあのお方はディック様に身長を越されたのが相当ショックのようですね」


あー……


初めて出会った時は頭一つ分の身長差に手を引っ張ってもらい、やがて成長と共にほぼ並ぶ視線へとなり、今では完全に見下ろす身長差は俺の兄貴として頑張っていたラン兄にはショックが大きすぎたのだろう。

何時までも手を引いてもらっていた頃の俺じゃいられないんだから……


「そんなこと言われてもどうしようもないじゃん……」


ルゥ姉もどうしようもない個人差に困ったように首をかしげていたが


「それよりもこっちにいる人ほかってても大丈夫なのかよ?」


この茶番に黄金化を止めたエンバーが未だに地面を抱きしめている男を警戒しているが、男は地面に『水をくれ』なるダイニングメッセージを残していた。


「そうだよ!ブレッドだよ!

 シュネルに酔って思いっきり吐いてたけど大丈夫?!」

「あんな墜落しておいてそれで済むわけないだろう?!」


と律儀にエンバーがつっこむも俺はダイニングメッセージ通りに水を用意してブレッドに差し出す。


「はい水。

 さすが骨は折れてないみたいだよ」

「聞いてくれ。あいつらがひどいんだ……」


ゲロと共に涙も出し尽くしたと言う干からびた顔で俺の水球を受け取って這いつくばったまま水球に口をつけていた。


「とりあえずこの方達は我々の敵ではないので、シアー、二人の怪我を直してください」

「え?って言うか、ほとんど怪我も擦り傷ぐらいしか目立った所以外何もないんだけど……」

「さすがですね」

「怪我の治療より酔い止めの魔法をくれ……

 吐きそ……」


おえ……

言うよりも早く飲んだばかりの水と共に吐き出して、手に持っていた残りの水で口の中を漱いでいた。

全員が注目する中で。

お替りを要求する手に差し出すも、半分は余ったのか水はもういらないと大地に吸わせてしまったブレッドは何とか地面に座れるようになったが、目が回ると言う様に頭がふらふらとしていた。

なるほどとシアーはすぐに酔い止めの魔法をかけてくれるそのすぐそばで、ラン兄がコップを持ってキラキラした目で俺を見ていた。

うん。

ちゃんと覚えてるよこのパターン。

俺の水魔法でそのコップから溢れるぐらいに水で満たし


「どうぞ」

「ありがとう!

 シュネル!」


そう言ってラン兄は相棒を呼ぶ。

さっきの悲劇から無事逃げたと言う様に相変わらず美しいとこんな時でも聞き入ってしまう声を響かせながらラン兄の頭に止まり、ちょんちょんと移動してランの持つコップの水を飲み始めた。


「シュネルありがとうね。

 ブレッドに足止めされたけど何とか無事間にあったよ」


喉を潤したシュネルは返事をするようにぴゅるるるると囀ってから羽を休めると言う様にランの頭の上の定位置で休まる事にしたらしい。

おなじみの光景だったが初めて見る人達にはあらかわいいとその頭の上の存在を眺めていた。

頭にシュネルの温もりを感じてから水を飲み干したランはごちそうさまと言って手首に巻くブレスレットに近づけて収納してしまう。

周囲はアイテムボックスと言う高級品を羨ましそうに感嘆の悲鳴を上げる中


「所で陛下、なぜこのような時にこの場にいらっしゃるのです?」


その一言に彼が何者かようやく気づいたように誰ともなく姿勢を正し始める。


「改めて紹介いたします。

 フリュゲール国フリューゲル王陛下に在らせられます」


御無沙汰してますとルゥ姉はフリュゲール国の兵ではないので淑女の礼と共に挨拶をすれば


「ランセン・レッセラート・フリューゲルだけど、長いからランでもいいしルゥ姉みたいに陛下とか王様とか適当に呼んでよ」


そうは言う物のと国王相手にそんな気楽でいいのかとみんな困惑を浮かべる中


「それよりもディ、ルゥ姉、僕達の約束覚えてる?」

「約束ですか?」


ルゥ姉ですら小首をかしげる内容に俺が思い出せるはずはないからヒントをくれる。


「僕は約束したよ。

 ディを必ずブルトラン王の目の前に連れて行くって」


思い出した。

ブルクハルトの屋敷での一コマ。

ラン兄の思惑を打ち明けられて取り付けたサポートの代償に俺達は


「俺はランの願いを叶える。

 地図を書きなおす為の魔力を用意する」


言えばランの顔が緊張した物からぱあとあかるくなった。


「だから僕は約束を守りに今日この場に来たんだよ」

「にしても良くタイミングよくあらわれましたね」


ルゥ姉でさえ不審がってしまうも


「もちろんこの時の為にこの子をディの側に置いてもらったんだからね」


どこからともなく音もなくあらわれて飛びついて来たシルバーをラン兄は抱きとめて良く知らせてくれたとこれでもかとわしわしと撫でまくって誉めてあげていた。


「今日の一時間後攻撃に入るって言うから学校を途中で抜け出して全速力で来たんだよ。

 本当なら余裕持ってこれたはずなのにブレッドのせいでウィスタリアとハウオルティア辺りの凄い高い崖の上にある綺麗な湖に向かってゲローなんて事になっちゃったから間に合わなかったらどうしようって思ったんだけど……」


間に合うなんてさすがシュネル!と誉め立てるラン兄にシュネルは当然と言う様にぴゅるると返事をする。

と言うか、国境沿いの崖の上の湖って前にリーナから説明があったハウオルティアの水源だよな?

なんか神聖とか言われている所だろな?

って言うか何汚染してんだよ?!と、湖の事を知っている面々は少しだけ難しい顔をしているが、どのみちここまで水が運ばれてくる頃にはもっといろんなものが混ざる事になるから気にするのはやめておこうと心の中の葛藤に区切りをつける。


「そんなわけで、この危険人物を野放しに出来ないから俺も慌てて着いてきたんだが……

 戦況はどうなっている?」


やっと地面から立ち上がったブレッドはランとよく似たブレスレットにつけられたアイテムボックスとは名ばかりの宝石のような姿をしたそれから色々な物を取り出していた。


「戦況は何も、今から全員で突入してまっすぐブルトラン王の所まで目指すつもりでした」

「あんたにしちゃ随分杜撰な作戦だなって言うか勝つ為の作戦じゃないな」


怒りをあらわにルゥ姉を睨んでこの指揮系統がどうなっているかフリーデル、オスヴァルト、セイジを紹介してもらい、短時間で説明を受けている中、俺達は出鼻をくじかれたと言う様にだらけようとするもすぐにブレッドの凛とした声が平原に響き渡る。


「フリュゲール国総隊長のブレッド・アクセルだ!

 フリュゲール国の参加により指揮権が俺に移譲した事で隊の編成を大きく変える。

 まずは城の突入部隊。

 ディとルゥを中心にロンサールの王族とフリュゲールの俺達、そしてフリーデル、選出を許す。

 俺とフリューゲル王を含めた20名程度の戦闘能力の高い者達で精鋭部隊を作れ!

 次にオスヴァルト、セイジを含めて選出を許す。

 王都内に住むブルトランの貴族が逃げ出すついでに持ち出そうとしている物、もしくは蓄えている財産を総てかき集めろ!

 女子供はもちろん住民に手を出したら極刑にする!

 王都住民には自宅待機をさせておけ。

 オスヴァルトには別動隊を1つ作り城から脱出しようとする奴らを留める様に、さらに王都内の治安の監視者、王都内の作戦の総指揮に指名する。

 クラウス、選出を許す。

 機動力ある者達を選んでロンサール、ウィスタリアに逃げ出そうとしている者達を国外に出すな。

 その時の荷物財産を没収しろ。

 さらにウィスタリアから入って来る奴らの足止めをしてくれ!

 人数は少ないがルゥと一緒に過ごす事が出来たのならこれぐらいの作戦は少人数でもこなせるはずだ。

 さすがに五日の準備ではフリュゲールからの距離では応援は間に合わない。

 長引けば不利になるのは数の少ない我々だ!

 応援に駆け付けたフリューゲル王陛下は今日中に王都を落す事をここで貴方達に宣言する!

 ここまで来た貴殿らには突如現れた他国に支持されるのは不快だろう。

 だがこれ以上ブルトランのやりたい放題にするわけにはいかないし我々ももう許すつもりもない!

 迅速に的確に。

 この戦いでは貴殿らの新たな国の基礎となるこの場となる。

 他国からも注目を集めている以上貴殿ら総ての人間の誠実さを大陸中に知らしめ新たな国の国民性を大陸中に広める事になる!

 戦争時の風紀の乱れ、暴動は一切慎むように!」


高らかな宣言に誰もがこのにーちゃん何言ってるんだと言われる物の名指しで指名を受けた者は反論する事もなくどこか希望に満ちた瞳の輝きに変わって言いなりになる様子に周囲は戸惑いを覚える中で早々に大声で部隊割を始めていた。


「いいか!これは勝ち残る為の作戦だ!

 生きて新しい国を見るぞ!」


クラウスの鼓舞に


「戦上手のフリュゲール王の参戦より我々の勝利が確実となりました。

 安心してアクセル閣下の指示に従いましょう。

 勝利を疑ってはいけません!

 彼らを信じる事こそ勝利の方程式です!」


フリーデルまで今まで聞いた事のない厳しくも力強い声で周囲を説得する。

今まで聞いた事もないようなその力強い指示に誰もが希望を見付けて顔を上げて行く。

向かうは死に地ではない。

新たな未来は光射す場所だというように部隊分けをしていく。

勝つぞ!

ガラにもなくこの言葉を何度も繰り返すフリーデルと勝利を信じて疑わないクラウスの声にいつしか誰もが勝利を確信して振り分けられた部隊で更に小隊を組んでいく。

均等に、そして役所も分等して平均になるように組んで行く。

勝つ為に、そして生き残る為の新たな指示は誰の顔にも生気で満ち溢れさせていた。






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