俺の小説の書き方 世界観を作る 1
いわゆるライトノベルという分野では異世界、異次元といった世界が舞台となることが多いものだが、俺はそっちにはいけないほど歳をとってしまったので、基本現実世界ベースのお話が多い。
異世界云々というのも書き切るにはかなりの脳力を要すると思う。というのも、例えば単純に「地球に似た惑星」としても、どのくらい違うのかを示すためには地球の説明と相違点を書き連ねなければいけない。
また、惑星ひとつが舞台になることも少ないので、その惑星の何処かの地域で、何らかの気候的特色があるとか、特有の地形があるとか、現象があるとか、そのようなものを理屈をつけて説明しなければいけない煩雑さがある。
自然というものは存在する以上必ず理由があるわけで、そこのところはなぜだかわからないけどこの世界はこうなのだ、とはいかない。むしろ人間のすることや生み出したものの方がよほど整合性や合理性がないと思うのは俺だけだろうか。
そしてその人間の文明、文化だが、これまたその曖昧な中でも縦軸と横軸を考えてゆかねばやはり世界が成り立たない。
時間が存在する世界であれば、過去や未来があり、空間も物理法則も作っておかねばいけない。その上に築かれた文明なら、通貨はあるのか、または男女という概念があるのか、服は着ているのか、といった原始的なところから、地球の中世レベルなのか、あるいは地球から見れば未来なのか……などなど。
俺は現実世界そのままリアルな世界を書くこともあるが、その際はだいたい都市名や町の名前、企業や商品名などは架空のものを創作する。もちろん誰が見ても日本の話だろうとわかることが前提で。
しかし、一見リアルな世界観に見せておいて、実は架空の技術、架空の存在、架空の出来事、などを織り交ぜる場合は、あえて日本は日本、東京は東京として扱い、創作した部分をリアルに見えるように務めている。……いや、たぶん出来ているような気がする。
ある意味では登場人物やその周辺の人間関係は、小説においてはほぼ全てが創作になるわけだから、それらがどんな生き方をし、暮らし、過ごしているのかということを、現実の世界にいる読者にわかりやすく、理解できるようにするために面倒でも描写することは必要になってくる。
● センチな君は戦地へ向かうの場合
時事問題が絡むだけに、実在の地名や個人名はあえて避けた。戦争が起きるという可能性のリアルさは、実のところ現代日本人にとってはファンタジーと捉えている側面があるように俺は思う。だからこそ、この話が成り立つわけ。
つまり、戦争が「架空の出来事」で、それを補強するための状況説明と地勢の設定および内包する問題を現代の日本の周辺問題や過去の事実にリンクさせてみた。
無論、全てをリアルな国名、地名、政治的部署名にしてもよかったのだが、それだとそれぞれにおいて取材しなければいけないし、考えることが多くなりすぎて(実際、政治家のえらーい人々があれほどの頭数でも悩んで悩んで答えが出ないのに)枝葉が増えすぎて、たぶん読んでいるほうは何が問題で、物語の進む方向は何処なのかが見えなくなると思う。
● 参考として 機動戦士ガンダムUC 福井春晴敏
世界観ということで参考物件として。
現代からの連続性が見え隠れする時間軸で語られる架空の未来の話。実際地球上で、西暦以降のUCという新世紀の物語で地球上の地名なども実在するが、モビルスーツという全高18メートルの「人型兵器」という非現実的な兵器が登場するSF戦記アニメ作品の雄。
まずガンダムの興りは紛れもなくスーパーロボットであり、おもちゃ前提の存在だったことは否めない。このところは製作陣もかなり頭を悩ませたようで、なにせリアルなロボット戦記なんてのは前例がないだけに、そこをどうするのかという点は目を見張るものがある。
このUCにおいては人類がスペースコロニーで生まれ育つことが普遍的となって数十年が経っている、という設定が横たわっている。
まずこの「スペースコロニー」だが、スタンフォードトーラス型、オニール型、にはじまるコロニーの形式や特性、また、コロニー建設地のラグランジュポイントといった記述や描写はガンダムの世界においてたびたび登場する世界観であるが、これは「機動戦士ガンダム」が始めたことではなく、ガンダム放映の直前ともいえる時期にアメリカの物理学者オニールより拝借されたものである。
いわゆるファーストと呼ばれるガンダム作品一号からして、わけのわからない技術で人工重力が発生している宇宙都市とかではなく、かなり「本気」な設定をぶち込んできている時点で、従来のロボットアニメとは一線を画す気でいたことは確実といえる。
長くなったので次回に持ち越し。