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俺の小説の書き方 求めるものを作る

求めるものをつくるとは。


人が求めるものを作る、ということ。それを考えてみたい。


無論ながら求めるものと言っても十把一絡げにできるものではないから、そういったニーズへターゲットを絞り込んでゆく……ということを書きたいわけではない。


自分が書きだしたいものは何なのかという事なのだ。


まず最初に言っておこう。自分が何を成したいのか、自分が何を求めるのか、ということが湧出しない人は創作に向かない、というより出来ない。または創作に向き合う意味はない。

何かを生み出そうという気概のある人間とそうでない人間はいる。だから創作の意欲がないからといって嘆くこともないし、卑下することもない。


むしろ、創作意欲のある者は、満たされない現実がそこにあるという事であるから、実際に卑しいのは創作を求める者達であり、それを享受したいと考える輩である。


人の欲望は、おそらくアブラハム・マズローの五段階欲求の理論で説明できる。今のところそう信じている。


マズローの理論の詳しくは割愛するが簡単に示すと以下のようになる。


1・生理的欲求

2・安全欲求

3・社会的欲求

4・尊厳欲求

5・自己実現欲求


という五段階。


読んで字のごとくなのだが、要するに1から5に向かって高次の欲求になっているということはわかるだろうし、これが人間の成長過程における欲求の変化だということもわかるだろう。

無論ながら1が満たされないのにいきなり3が満たるということはない。


使い古された五段階欲求理論だが、これを1から5にかけて順に書物にあてがうならば以下のようになる。


1・作る者は高潔な理念のもとに内なる情念を燃やし、見る、読むにおける行為にて快感、快楽を得る書物。代表的な書物がエロ本やポエム、漫画、絵本、写真集など。


2・作る者は世に智恵をもたらす使命を持ち、読むことにより、知識が付与され(たような気がする)経験値を擬似的に獲得できる書物。代表格は辞書や教科書、各種のハウツー本、雑学本、ガイドブック、など。


3・作る者は社会規範に沿うよう真実をありのまま書く事を極力求められ、読むことで自身が社会に参画していると感じる、あるいは批評批判に耐えるだけの内容が書かれている書物。代表格として新聞や各種の情報雑誌、コラム、エッセー、ドキュメンタリー本になる。


4・作る者は自らを無二の存在と信じ込み、他の追随を許さない排他的性質を持つ。読むことで人間本来が持つ知性や良識に触発され、恍惚感に浸ることができる書物。代表的なのは各種マニア本、ニッチ的研究資料および論文、仏典、聖書など。


5・作る側は創造の世界を脳内で構築せしめ文字に起こし他者に克明に伝えることを要求され、読むことで想像力と妄想力を掻き立て、結果何らかの情緒的変動を楽しむ書物。代表的なのが創作小説などの物語全般。


こうして並べてみると、実はマズローの五段階が低次から高次に向かっているのに比べ、書物の場合の欲求度(便宜上これを“書示欲求”とする)は1と5が同位となるのがわかるだろうか。つまり1-5-1-5-1-5-1-5・・・と無限ループする構造を持っている。


実はこれが小説の作り方となる。無論それは我々が小説を立脚点としているからそう取れるだけだ。

たとえば3に立脚点を置く「記者」などもまた、2は無論のこと、4を参照したり、1で癒しを求めたり、5で現実逃避をしたりしてひとつの書物を書き上げている。


これらはいずれも人間の持つ知的好奇心であり、そのどれもをおろそかにはできないし、無視しては構築されないといってもいい。どの分野の書物にも必ずと言っていいほどすべての書示欲求が関係しており、エッセンスとしていずれかに混ぜられている。


お分かりだとは思うがこれは一例で、作る書物によりどの部分を強く押し出すかという割合は様々である。だがおそらく不変と言えるのは、1及び5から最も遠くにあるのが3であるということで、彼らは互いに相反するエッセンスだとしても良いだろう。

だから小説世界に現実世界は沿いにくい。

逆に言うと隣り合う書示欲求は親和性が高いと言える。


書き示したいものにより、選択するエッセンスは絞られるということだ。であるから、小説を書きたいならば神話と漫画を読みまくればいい。あるいはトンデモ科学でも良いし陰謀論でもいい。ビジュアルブック系は想像を掻き立てるのでとかく妄想が膨らむ。創作には欠かせないだろう。


さて、どうだろう。


もちろん偉そうに書いてみたが、これは俺の単なる思いつきである。

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