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俺の小説の書き方 会話を作る 2

前回、難しい、難解な小説は努力してでも読むべきだ、的なことを書いたが、本質的にはそういう意味ではない事は、物書きの皆さんならわかるだろう。


詳しくは後記するので、今回は前回の続きをば。


人は会話をするときに必ずしも文章を組み立ててから発語しているわけではない。仮に何かを説明するような場合はある程度要点をまとめて話を始めるのだが、これが下手だと「お前の説明はわかりにくい」と評される。


これは小説における“地の文”にあたるのではないかと思う。そういう観点から見ると人間は行動を伴って(あるいはジェスチャーなどを交えて)説明できるのに対し、小説は地の文と台詞が全てだから、その二つをうまく使って状況説明から心理描写までをこなさなければいけないのだ。

 

物語の都合で、語らなくてもいいことや、あえて語らずに済ますことも可能と言えるが、読者に突っ込まれるような状況説明や心理描写はやはり相当マイナスに転落する。下手をすればそれだけで心が離れて、読むのをやめてしまうということもある。


実存世界では錯誤という過ちも許されるが、小説内においては錯誤があってはならない。


例外的に、一人称の主人公の錯誤による事実誤認を描写する場合はオッケーだが、それ以外は基本的にアウトである。三人称の地の文であれば、作者読者に対して想定範囲内の仮定形、疑問形で示しておかなければ、これは読者を騙してしまうことになり、結局レトリックに見せかけた嘘を晒すことになる。


作者の錯誤は作品そのものを壮大なウソに貶める。無論意図してそれを行うなど論外だろう。


このあたりが小説と現実の厳しい限界線ではないかと思われる。


言うまでもなく、セリフ内において読者のミスリードを誘う表現は一向に構わない。それを嘘かどうか見極めるのは読者自身であり、暴く快感もまた読み進める目的となるからだ。

ただし、これを多用し、ストーリーラインに応用しすぎると呆れられる。いずれにせよ、嘘は後々面倒になることが多い、ということだ。



小説には嘘があってはいけないという法律があるが、合理的であるべきだという理想論もある。


つまりどういうことかというと、小説は必ずしも「合理的でなくてもよい」という意味だが、理想は現実的ではないからこそ理想とされるのであり、小説内で現実的でないとするのは全ての物事がうまくかみ合い事が運ぶ「御都合主義」を指す。


現実世界ではないのだから、ストーリーの展開を優先してご都合展開に持ってゆくのは往々にしてあることだろう。だから登場人物の会話も恣意的に展開を進めるような会話をさせやすくなる。


そうするとどのようなことが起こるかというと、地の文を分解したような会話が連続する。

これを支えると、物語は判りやすくはなるが、やはり呆れられることにつながる。


ただ、俺はよくこれをやってしまう。


一人称や三人称一元などの作品で、伏線を張りすぎた物語の終盤に、会話の顔をした「種明かし」を延々とせねばならないシーンが出て来てしまう。イベントを中盤で消費しつくしてしまい、あとは確約確定を取るだけといった段で、実に合理的な会話がなされる不自然な展開を生んでしまう。

これは、もはやそうしなければ先に進めないところまで登場人物を追い込んでしまった結果である。


ではなぜ危険を冒して、それらを地の文ではなく、会話に盛り込まなければいけないのかというと、地の文では登場人物たちの理解度が表現されにくいからである。それまでに重ねてきた物語が厚ければ、それだけ言葉の質量も増えざるを得ない。


これは俺の考えではあるが、人は会話と行動で知識と経験を積み重ねてゆき、知恵へとつなげてゆく、ということなのだろうと思う。


地の文は俯瞰した結果(既定事実)を記述するファクターで、会話は過程や仮定を記述することのできるファクターである。

だから前述のように、地の文で嘘を書いてはいけないが、台詞や会話は何を言っても構わない。だがその会話の錯誤的発言も含めて上手く絡み合わさなければ、意味のない妙にリアルなだけの会話だけが宙に浮くことになり、合理的であるべきという理想論からは遠ざかってゆく。


まあ、感覚的ではあるが、会話というのは作品の中での「憲法」(あるいはしきたり)のような役割を担っているのだろうなと考えている。

だから会話には、作者の意図(神の意図)よりも登場人物の意図(下界の民の意図)が優先されるべきなのだろうと思える。

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