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俺の小説の書き方 世界観を作る 3

一人称での殺人殺傷の描写のえぐさは、世界観のえぐさの描写でもあり、例えば首を切られた被害者の現代物の殺人描写ならば単に「首を切られて死んでいた」というところに終止する。


どういうことかというと、身体部位、とりわけ首の殺傷部分の中身や仔細までを描写するということは、その世界では殺人が日常的に街角で行われており、人々が死体を目にすることが珍しくないということを暗に示すことになる。


なぜなら通常、我々は腹を割かれて死んでいる人がいても、その内容物が胃なのか肝臓なのかなど見分けることはできず、ただ驚くか目を背けるのみとなり、冷静に切り口を観察する余裕はない。


もし観察し分析することがあるとすれば鑑識官か医療監察官くらいのものだろう。


三人称一元視点の文体で死に様を、地の文で表現したとしても、主人公の常識に沿って書くことは肝要で(特に説明がない限りは、そうならなければいけない)主人公が鑑識官などでなければ、そのような人物をそばに置くことでしか身体損壊描写は不自然に映る。


ここを履き違えて、偏りが起きると世界観か人物像がぶれて話がまとまらなくなる可能性がある。有り体に言えばこれが「作品の色」というものに直結するので注意したほうがいい。という所から、今までよりも突っ込んだ話をしてみよう。




よく、異世界転生物で、転生先で(ほぼ躊躇なく)いきなり剣でモンスターを斬り殺す描写があるが、あれの違和感は、転生した(虫すら殺したことがないような)現代っ子がいきなりそんな場面で血しぶきをほとばせながら命を奪うことはできないと、誰もが断じることができるからである。もし出来たとしてもパニック状態の中で事が終わり、しばらくトラウマになるだろう。


よく俺が使う方便で「洋の東西を問わず中世における人間に人権などというものはない」むろんながら「男女同権もない」まして「子供など動物並みの扱い」現代とは180度別の世界であると考えるべきであるという話。


剣で斬り合うような野蛮な状況下(戦闘、私闘が日常的にある、あるいは戦争が日常にある)という中世を意識した異世界なら、そこにいるのが地球人と違わない感覚を持つ限り、無秩序で無慈悲、道徳や倫理観といったものもかなりオミットされているはず。

無秩序であればこそそれは助長されるから、その世界を書きたければ、上記の三つの要素を入れるとたちまち無秩序世界が完成する。


蛇足だが、騎士道や武士道といったものはこういった傾向への警鐘として自らを戒律で縛ることで、暴力の拡散や暴発を防いだのではないかと(必要然として発生した)思う。


これは力あるものが自らを規定するという、ある意味では強者であればこその傲慢な行いではある。庶民は力がないところに自らを規定し制限するということをダブルマイナスだと考えるため(これ以上弱くなれるか!)下からこのようなムーブメントは起こりえないからだ。


であるから、世界観を表現するときに、地の文で説明を書き連ねる方法もあるが、表現を重ねることでも相当に伝わるということを意識したほうがいいと思う。


例えば“風呂に何日も入れない、飯は必死で追い回して捕まえたねずみの丸焼き、子ネズミは骨ごと食べられる”という描写だけでも、現代人からすればかなりきついと感じる。ところが、ハラが減って町に向かい、パン屋にいけばパンがある、金を出せば売ってくれる、といった流れでは同じ飯を食うという行動に印象がまるで違って映るのは当たり前だろう。


後者はかなり社会秩序が整っており、通貨秩序も含めて安定した世界であると見受けられる。しかし町の外に一歩でも出ればモンスターがわんさといるようであるなら、やはり世界観は怪しいと言える。


なぜなら、そのような過酷な環境に置かれている場所で、その町が脅威にさらされないはずはなく、小国レベルの軍事力を持ち、物理的に脅威を排斥する能力を持ち、物流を確保する街道や大規模な農園を有していなければ安定した経済が回らず、商品の流通も望めないからである。むろんながら通貨が流通するのはその前提があるからであり、通貨だけが流通するということもありえない。


だから、都会の者が金貨を渡して田舎町で食物を買おうとしても「そんなもので食料は分けられん」と拒否される方が現実的なのだ。

そういった意味でも、あっちこっちでモンスターや危険な動物と遭遇するということはほどほどにしなければいけない。たとえば街道を歩いている限りはモンスターも警戒して近づかないから安全、という文言がなければ変だと思う。

あるいは、魔力や結界などでルートやスペースが確保される仕組みがあるなどという、説明が必要なのである。面倒ではあるが、ゲームではないのだからルールは説明しなければならない。


また、食物に関しても、異世界で地球上と同じ食物が流通している、あるいは似た食物があるという世界観はまったくもって“なし”ではない。無用な説明を省くために、そこまで設定を詰める必要はないとも言える。


だが、食事に意味を持たせる場合や、生活感を描きたければ、こだわるべきところでもあるし、モンスターが跋扈する世界の中で、果たして一般的な動植物の生態系が地球のように確保されるのかというと、これもかなり怪しい話になる。


ならば必然的に異世界の人間が口にするのはモンスターの肉であることも考えられる訳で、撃退したモンスターや狩ったモンスターを村や町まで持ち帰り調理するという風景も、それらの食材を金品と交換するという経済もあり得る。であるから、いわゆる冒険者という攻性人種はこのあたりで金稼ぎをするとしても何も不思議はない訳だ。


どんな世界においても裸一貫無能の状態からいっぱしに稼げるようになるプロセスというのは、相応の下積みが必要になる。それを二年や三年やってしまうと話が進まないため、ショートカットのために「転生による付加価値や副産物」を主人公に与えるという事をする。


これは何も悪いことではないが、主人公がどこまで行ってもムテキングだと、それに対する対価がどこかに見出せない限りバランスの悪いものとなってしまうため、あえてリスクを背負わせなければ話として面白くもなんともない物になる。




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