第1話:始まりの鐘(5)
【SIDE:春見優】
高校生活2日目
午前中は生徒会の先輩による学校案内や晴祥の1日の流れを劇にした説明などが行われた。
その後クラスの委員決め、自己紹介、学校生活アンケート?(よく分からないけどそう書かれているからそう呼ぶ)の記入など色々なことをしていった。
昼食休憩後には主に吹奏楽部の練習に使われる晴祥館にて、学年集会を受けた。
学年主任や各クラス(1~5)の担任、副担任の挨拶など、長々として正直面倒くさい行事を終えた。
その後各部長やキャプテンによる部活動紹介が行われた。
野球部の紹介では、先ほどまでステージの上で劇をしていた生徒が部紹介をしていた。
(あの先輩、生徒会入ってんだ…)
そんなことを考えながら部活動紹介を流し聞きしていた。
掃除を終え、ホームルームが始まるのを待っている間、俺はひでと一緒に机で読書をしている猛の元を訪れた。
「お~い猛、何読んでんだ?」
ひでが腕をうねうねと揺らし、千鳥足のような歩き方をしながら……
とりあえず気持ち悪い動きをしながら話しかけた。
「……高校生のための経済学。」
猛は本から目も離さずにそう言った。
って、高校生のための経済学?
なんちゅう物読んでんだよ……
いや、すごく良いことなんだけどね。
「へ、へぇ……
何か凄いな…」
あっ、ひでが若干引いてる。
「何でそんなの読んでんだ?」
疑問に思った俺が猛に問いかけた。
「…強いて言えば、将来のため…かな」
「将来?お前昨日プロ野球選手になるって言ってなかったか?」
ん?昨日?
そう思った読者も多いだろう。
説明しよう!
ーーーーーーーーー
~昨日~
「なぁ野村」
俺が呼ぶと野村猛はこちらを向いた。
やべーな、おい。
男の俺から見てもめちゃくちゃかっこいいぞこいつ…
神様って不平等だ…
ってそんなことはどうでもいいんだよ!
あれ?
何て言おうとしたんだっけな?
えっと…
思い出せない…
(作者が思いつかない)
「…お前」
俺が何も言わないで(言えないで)いると、野村猛の方から話し出した。
「…お前会ったことあるよな…練習試合で
確かどっかのキャッチャー」
「お前俺のこと覚えてたのか!?」
「やっぱそうか。リードが上手いと思ってた。あと良いスイングしてたな。打てなかったけど」
そう言うと野村猛は不敵な笑みを浮かべた。
「…なんか誉められてんのか、けなされてんのか分からないな」
「誉めてんだぞ…一応な」
何か意識していたやつにほめられると嬉しいな…
あっ、言いたかったこと思い出した。
(作者が思いついた)
「野村、俺に投げろ。俺はお前の球を捕ってみたい」
こいつの球を捕る。
俺が晴祥に来た目的が叶う…
「嫌だ」
叶う………えっ?
「何でだよ!どっか痛めてんのか?」
「…いや、別にどこも痛めてないぞ」
「じゃあ何でだよ!?」
どこも痛めていないのに何故か俺に球を放ることを拒む野村に俺は苛立ちと疑問の気持ちが沸いた。
だってそうだろう?
俺はこいつの球を捕りたいがために、何校もの推薦を断って晴祥に来たんだ。
その目的の当人が目的の第1歩を叶えさせてくれない。
これが苛立たずにいられるかよ!
「理由を聞かせろ」
俺は野村を睨み付けながら理由を説明するよう言った。
野村も俺を、俺の目をしっかりと捉えていた。
何分もたったような感覚を感じながら、俺はしびれをきらしてもう一度尋ねようとした時、野村は呟いた。
「…けが……」
ん?
やっぱりこいつけがしてたのか?
そう思ったが野村は意外で俺をもっと苛立たせることを口にした。
「けがさせちまうよ。俺の球を捕れないで」
「かっちーん。そこまで言うなら見せてみろよ。けがしてもいいから!てかしないがな。お前の球なんか目をつぶってでも……ごめん。盛った。こほん。お前の球なんて余裕で捕ってやるよ!」
「はぁ…お前やめるなら今のうちだぞ?」
「ぜってぇやめねぇ。放課後河原に行こうぜ。どうせ部活見学は明日からだしな」
「…まぁいいぞ。顔に当たってぴーぴー泣くなよ」
ーーーーーーーーー
放課後河原にて
俺たちは無言で肩を慣らす。
「…なぁ、お前らまだ始めないのか?もう30分もキャッチボールしてるぞ…」
つまらなさそうにひでが言う。
「…だったら帰っていいぞ。ていうかお前何でついてきたんだ?」
「俺だって帰ろうと思ったさ!でも作者がそれを書くの忘れたんだよ!まったく…」
「…?」
「…」
「お前…家じゃなくて病院行け。精神科な」
「ひでーな、おい!俺は正常だっつーの!てかマジで早く始めろよ!」
そうだな…
そろそろ始めたいな。
俺だって捕りたくてうずうずしてんだ。
「…じゃあそろそろ始めるか…春見座れ」
「おぅ。こい」
そして野村はゆったりとした投球フォームを始める。
来る!
そう思った瞬間俺のミットにボールが飛び込んできた。
バシンッ!!
早いな…おい
捕りそこなっちまったよ……
「はぇー、これが高校生になったばっかのやつの球かよ……」
ひでも感嘆の声を漏らす。
「お前やるな。最初からちゃんと捕球にいってる。だいたい最初は当たるか、酷い時は避けるからな。まだ投げようか?」
そりゃそうだ…
こいつのボールめちゃくちゃホップして、生きてるみたいだ…
でも…絶対捕ってやる!
「よしこい!」
その後も野村はすごいとしか言い様のない球を投げ続けた。
あっ、俺も途中からはちゃんと捕球できたぞ。
「今日はこのくらいにするか…」
そういって俺達はクールダウンしはじめる。
「やっぱお前すげーな!でも俺もちゃんと捕れるようになったぜ!」
「俺もこんな早く捕られるようになるやつがいるなんて、驚いた。」
「だろ!?これから一緒に頑張ろうぜ!なっ、猛!」
「あぁ、でも真っ直ぐだけじゃなくて変化球も捕れるようになれよ…優」
「お二人さん…完全に俺のこと忘れてるよね。俺も頑張るぞ!ピッチャーは無理って分かったから違うポジションでな」
その後も俺達は中学の時のことやこれからのことを話し合った。
春の小川が流れる河原の道で…
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おっ、郡山改めてゴリ山が来たぞ。
ひでがそう言うと同時に郡山厚夫改めゴリ山が教室に入ってきた。
「おーい、座れ!ホームルーム始めるぞ!」
号令がかけられゴリ山が話し出した。
「皆知ってると思うが今日から部活動見学が始まる!よく見学して積極的に入部すること!ちなみに俺は陸上部の顧問だ!ぜひ見にこい!じゃあホームルーム終わり!」
再び号令がかけられゴリ山は教室を出ていった。
「じゃあ行くか!」
「おう!」
「…あぁ」
いよいよだ。
俺達の高校野球が始まる!
校内にホームルームの終わりを告げるチャイムが鳴った。
俺達の始まりの鐘が。
地球滅亡しませんでしたね…
あぁ…
作者の受験勉強はまだまだ続く(泣)