表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

第2話:新しい生活(2)

【SIDE:小椋薫】



高校生生活もあっというまに2週間が経過した。


2週間前薄いピンク色に染まったソメイヨシノの花びらが散って美しかったこの街路樹も今は青々とした葉をたたえ初めていた。


この2週間で起こった事件と言えば、遥が部活中に突然倒れた。



遥は大丈夫だとは言っていたけれど、やっぱり心配だった。


遥は初めて部活に所属したらしいから先輩達とのコミュニケーションの取り方も上手くはないし、マネージャーとしてもまだまだ未熟で3年のマネージャーの先輩によく質問したりしていた。



それでもその容姿と控え目な性格が先輩達にも1年生にも人気らしく、よく話しかけられていた。

そのかいあってか最近は部活中でもよく笑顔を見せるようになった。


ときおり何かを考えているのか、ぼぉっとしたりブルペン(投手が投球練習をするときなどに用いる場所)をじっと見つめている時がある。





そこにいるのは先日行われた歓迎試合でいきなりレギュラーチームを完封して、エースとして期待されている野村猛と……


……まぁその恋女房(よく野球では捕手のことを女房と表現する)春見優…



ふんっ

ただ野村君のボール捕れる人がいなかっただけなのに偉そうにしてる。




春見優…

この名前が最近私を苦悩させている。



学校生活もしばらく経って、クラスも部活も一緒。

話す機会も多い。

事実、クラスでもたまに話す。(主に部活のことだけど…)



はぁ…

やっぱり私のこと忘れてるんだ…



こうなったら絶対思い出させてやる!



ーーーーーーーーー


とは言ったものどうすれば思い出してくれるだろう…


マンガやドラマでよく見られるような、思い出の物や場所もありはしない。


あるとしたら一緒に遊んだ記憶だけ…



なんとかしてその事を思い出させなきゃ。




ーーーーーーーーー


それから1週間後…

私は携帯に映るアドレス帳を見つめていた。



そこには「春見優」の文字があった。




私はこの1週間で彼のアドレスを手にいれていた。


部活の連絡がしやすい、とそれらしい理由をつけたので案外簡単に手にいれることができた。




そこで私は野球を始めた経緯や中学の時の話などを聞きだした。


さらに今まで特定の彼女ができたことが無いことも聞きだした。



そしてついに私は1番聞きたかったことを聞いた。



「春見君って昔仲良い女の子とかいなかった?」



よし。

送信!



メール送信中という画面から送信完了という表示に変わった。

待受画面の愛犬が画面に現れると、ほっと一息をつく。



どんな答えが帰って来るのだろうか…

やっぱりいないって言われたらショックだな……


でも私はどうしても思い出して欲しい。


一緒にいたあの時間を、そして私のことを…


あの頃と同じような関係に戻れるとは思わない。

でもここからもう一度新しい関係を築いていきたい。



そのように考えていると、携帯が震え始めた。


ディスプレイには「春見優」の文字。




メールの本文を開いて見る。

うぅ…緊張する…



思い切って見てみた。




「俺はあんまり覚えてないけど、小さい頃よく遊んだ子はいるらしいよ(笑)

でもいきなり何で?」




やった!

完全に忘れてるわけじゃないんだ。


あぁでも疑問系で帰ってきちゃった。

そうだよね…

いきなりだもん…



どうしよう…

思い切って私のことを伝えようか…

でも拒絶されたらどうしよう。


拒絶されないとは思うけど…



あぁもう!

悩んだって始まらない!


私は後悔したくない!

今が伝えるチャンスなら伝えなくちゃ!


私は勇気を振り絞って告げる事にした。


何て伝えようか…


そう考えていると再び携帯が震え始めた。


ディスプレイには「春見優」



えっ、どうして!?


私は慌てて携帯を開いた


「今、親にその子のこと聞いた。

名前もね…

小椋薫だって。

君のこと?」



やっと気づいてくれたんだ…

そう思うと、涙がこぼれそうになった。



だけど泣く前に返信しなくちゃ



「やっと思い出してくれたんだね。

遅いから本当に忘れられたかと思ったよ(>_<)」




「やっぱりそうなんだ…

ごめん。

忘れてたm(_ _)m

でも名前とか聞き覚えがあったんだ。

親が今度連れておいでだって。

久しぶりに会いたいらしい(笑)」



「少しでも覚えててくれたから許す(笑)

私もお母さんに話してみる!

あのさ昔みたいに「優君」って呼んでいい?


「了解!

日程とかはまた決めよう。

ちょっと恥ずかしいけどいいよ!」



ーーーーーーーーー



その後は昔話などをして、楽しい時間を過ごした。



お母さんに優君のことを話すとお母さんも覚えていた。


「だってあんた優君がどうした、こうしたってうるさかったんだから。」



などと聞きたく無かった情報も手にいれ、親にはしっかり口止めをしておいた。


だって今度会うことになったけど、お母さんが色々話しそうで恐いもん。




だけど…

優君に気づいてもらえた。

これは小さいけど大きな一歩だ。


そう私には思えた…






これが今年最後の更新になると思います。


読んで下さった読者の皆さん、ありがとうございました!

来年はもっと面白く書けるように頑張りたいと思うので、どうかよろしくお願いします!



ではよいお年を!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ