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音が消えた街で、君は餃子を焼いた

作者: 百花繚乱
掲載日:2026/01/14

目次

1. イントロダクション:音の仕事

2. 転落:事故と“違和感”

3. 帰郷:餃子の鉄板だけが平気だった

4. 来訪者:音が好きな少女・つむぎ

5. 楽器の街:浜松の“音”を歩いて集める

6. 第一の試練:試奏室で崩れる

7. 小さな修復:商店街のブラスバンド

8. 第二の試練:父の沈黙と、母の不在

9. 謎の層:母の残した「録音ノート」

10. 真実の層:事故の夜の“音”の正体

11. 最大の選択:音を捨てるか、向き合うか

12. エンディング:餃子の音から、音楽へ

________________________________________

1. イントロダクション:音の仕事

東京の夜は、いつも音で濡れていた。

高架下を走る電車のうなり。信号の電子音。深夜のコンビニの冷蔵棚が吐き出す低い振動。

それらが混ざり合う街の底で、俺は「音を作る」仕事をしていた。

スタジオは四階、雑居ビルの奥。ドアを開けると、吸音材が貼られた壁が外の世界を切り離す。

その密室で、俺は波形を見ていた。耳で聴き、目で確認し、手で削る。

「もう少し、息遣いを残したい」

シンガーの声は、空気の粒を含んでいた。俺はコンプレッサーを少し緩め、ノイズを生かす。

音は情報であり、感情であり、体温だった。

夜が明ける頃、仮ミックスを書き出す。

ヘッドホンを外した瞬間だけ、静けさが耳を刺した。

その痛みすら、心地よかった。

三十三歳。

ようやく“このまま生きていける”と思えた矢先だった。

________________________________________

2. 転落:事故と“違和感”

帰り道、雨上がりのアスファルトは黒く光っていた。

交差点の向こうから、誰かの笑い声が聞こえた気がした。

次の瞬間、世界が折れる。

衝撃は音より先に来た。

身体が宙に浮き、視界が白く潰れ、耳の奥に「キィン」と金属が擦れるような高音が残った。

目を覚ました病室は、静かだった。

いや、正確に言えば、音はある。

点滴の滴るリズム、ナースステーションの遠い呼び出し、カーテンのこすれる気配。

それらが“音”として届くのに、俺の中で別の何かが拒絶した。

数日後、スマホで好きだった曲を流した。

イントロの数秒で胸がざわつき、胃の奥がひっくり返る。

音が歪んで聞こえるわけじゃない。耳が悪くなったわけでもない。

ただ、“ここに置いてはいけないもの”を部屋に持ち込んだような、強烈な違和感。

呼吸が浅くなり、手のひらに汗がにじむ。

病院の検査では異常なし。

医師は「心因性かもしれませんね」と言い、軽い睡眠薬を出した。

スタジオに戻っても同じだった。

スピーカーから鳴る音が、胸の奥を爪で引っかく。

音楽が、俺の味方じゃなくなっていた。

仕事は減り、信用も減り、何より自分が自分を信じられなくなった。

“音の人間”だったはずの俺が、音を避けて生きることになった。

そして、逃げるように浜松へ帰った。

________________________________________

3. 帰郷:餃子の鉄板だけが平気だった

浜松駅に降りると、空気が少し湿っていた。

東京より風が近い。潮の匂いが混ざっている。

実家の餃子店は、駅前の喧騒から少し外れた通りにある。

看板の文字は古び、暖簾の端がほつれていた。

それでも店の前には、夕方になると小さな行列ができる。

父は、相変わらず無口だった。

俺が帰ってきたことを喜ぶでもなく、責めるでもなく、ただ「そうか」とだけ言った。

母はもういない。

店の奥、写真立ての中で笑っている。

俺が高校生のころ、音楽を始めたいと言ったときも、母は笑って背中を押した。

父は何も言わなかったが、その後、いつの間にか中古のキーボードが部屋に置かれていた。

あれは父が買ったのだと、母から聞いた。

今、その母は不在で、父は沈黙で、店だけが残っている。

「手伝うよ」

そう言うと父は小さく頷き、鉄板の前を指差した。

餃子を並べ、油を引き、水を回す。

蓋を閉め、蒸気が上がる。

じゅわ、と音が立つ。

その瞬間、胸がざわつかなかった。

むしろ身体の芯が落ち着く。

“音”が嫌いなわけじゃない。

嫌いなのは、音楽――もっと言えば、音楽が引きずり出す“何か”なのかもしれない。

でも鉄板の音は、ただの生活音だ。

生きるための音で、過去と結びつきにくい。

俺は、餃子を焼く音だけを頼りに、浜松での生活を始めた。

________________________________________

4. 来訪者:音が好きな少女・つむぎ

ある昼下がり、店が少し落ち着いた頃。

一人の少女が入ってきた。高校生か、大学一年か、その境目くらい。

リュックの肩紐を握りしめ、少しだけ緊張した顔。

「一人ですけど……いいですか?」

「どうぞ」

俺は水を出し、注文を聞いた。

「浜松餃子、初めてで。おすすめってありますか」

おすすめも何も、うちは餃子しかない。

俺は笑いそうになり、言葉を飲み込んだ。

焼き上げた餃子を出すと、彼女は箸を止めて、耳を澄ませた。

鉄板の残熱が、小さくパチパチ鳴っている。

「……音、いいですね」

「音?」

「焼ける音。なんか、安心します」

その言葉が、胸の中に落ちた。

音が好きだと言う人間を、俺は久しぶりに見た気がした。

彼女は名刺代わりにスマホを出し、画面を見せた。

「旅行メモ」と書かれたアプリ。浜松の観光地が箇条書きになっている。

「私、つむぎって言います。

音楽が好きで、浜松って“楽器の街”って聞いたんですけど……来てみたら、よく分からなくて」

“楽器の街”。

地元では当たり前すぎて、わざわざ説明したことがない言葉。

「…案内しようか」

口から出たのは、俺自身が驚く提案だった。

紬は目を丸くして、すぐに笑った。

「いいんですか? 助かります」

その笑顔が、どこか危うかった。

まっすぐすぎて、こちらの影を照らしてしまうような。

________________________________________

5. 楽器の街:浜松の“音”を歩いて集める

翌日、昼の仕込みを終えたあと、俺は紬と駅前で合流した。

冬の風が強く、遠州の空はやたらと広い。

「浜松って、なんで楽器の街なんですか?」

紬は歩きながら、当たり前のように聞いた。

俺は答えを探すように、視線を泳がせた。

「…楽器メーカーの工場がある。昔から」

それだけでは不十分だ。

でも詳しい歴史を語れるほど、俺は地元を知らない。

紬は不満そうではなく、むしろ楽しそうに頷いた。

「じゃあ、工場とか、見れるんですか?」

「見学できるところもある。試奏室も…」

“試奏室”という単語を出した瞬間、胸の奥がきしんだ。

音楽。

そこに近づくのは、怖い。

けれど紬は、音を好きだと言った。

彼女の目の輝きに、俺は逆らえなかった。

工場の敷地の外から見える建物は、無機質な白。

見学者用の受付で手続きをし、案内された廊下を歩く。

その先に、防音扉が並ぶ。

「ここが試奏室です」

案内係が言う。

扉の向こうから、ピアノの音が漏れてきた。

一音一音が正確で、磨かれた刃物みたいだった。

瞬間、胃がひっくり返る。

事故の夜、耳の奥に残った金属音が蘇る。

呼吸が浅くなる。手のひらが湿る。

俺は廊下の壁に手をついた。

冷たい。現実の温度が、かろうじて俺を繋ぎ止める。

「大丈夫ですか?」

紬の声が遠い。

「…ちょっと、空気吸ってくる」

逃げるように外へ出た。

工場の裏手、風が強くて、肺の奥まで冷える。

それでも吐き気はおさまらない。

音を避けて浜松へ戻ってきたのに、俺は自分から音へ近づいている。

何をしているんだ――。

紬はしばらくして、外へ出てきた。

「ごめんなさい。無理させた?」

「違う。俺が勝手に…」

言いかけて、言葉が詰まった。

“音楽が怖い”なんて、簡単に言えるものじゃない。

音楽で生きてきた自負が、まだどこかにある。

その自負が、俺を黙らせる。

紬は、少し考えてから言った。

「じゃあ、工場の音じゃなくて、街の音にしません?

私は、別に“完璧な音”だけが好きなわけじゃないです」

その言葉が、救いのようだった。

________________________________________

6. 第一の試練:試奏室で崩れる

工場見学のあと、俺たちは商店街へ向かった。

紬は歩きながら、スマホで何かを録音していた。

「何してるの?」

「音、集めてるんです。旅の記録」

彼女は楽しげに言い、風鈴の鳴る店先で立ち止まった。

風鈴の音は軽い。

しかし俺の胸はまだざわついていた。

試奏室の音が頭の中で反響し、消えない。

商店街のアーケードを抜けたところで、ブラスバンドの練習が始まった。

トランペットの音が空気を切り裂く。

その瞬間、俺の身体は反射的にこわばった。

音楽だ。

逃げたい。

でも、紬は立ち止まり、目を輝かせている。

「好きなんです、こういうの」

彼女は小さく手拍子をした。

リズムは揃っていない。

誰かが早く入り、誰かが遅れる。

音はぶつかり合い、少し濁る。

完璧じゃない。

だからこそ、胸を刺さない。

俺は少しずつ、耳を開いた。

息を吸い、音の中に身体を置く。

そのとき、突如として一つの音が、事故の夜の「キィン」と重なった。

金属の擦れる高音。

胸が跳ね、視界が狭くなる。

――まただ。

俺は膝をつきそうになり、壁に手をついた。

「……っ」

声にならない声が漏れた。

紬が慌てて腕を掴む。

「ごめん、ここ離れよう!」

彼女は俺を引っ張り、商店街の裏路地へ連れていった。

そこは車の音も少なく、遠くでブラスの音がぼやけて聞こえるだけだった。

俺は、呼吸を整えながら、ようやく言った。

「……音楽が、駄目なんだ」

紬は驚いた顔をしたが、すぐに頷いた。

「でも、餃子の音は大丈夫なんですよね」

「…なんで知ってる」

「昨日言ってた。焼ける音が平気って。

だったら、音が全部ダメなわけじゃない。

ダメなのは、“何かの音”なんですよね」

彼女の観察は、鋭すぎる。

その言葉に、俺は逃げ場を失った。

________________________________________

7. 小さな修復:商店街のブラスバンド

紬は、その日の夜も店に来た。

客が帰り、暖簾を下ろしたあと。

店内は静かで、鉄板の残熱だけが小さく鳴る。

「焼ける音、聞きたいです」

紬はそう言って、カウンターに座った。

俺は餃子を焼いた。

油が跳ね、蓋の中で蒸気が踊る。

ジュウ――という音が、店の空間を満たす。

紬は目を閉じて、まるで音楽を聴くようにそれを聴いた。

「これ、好き」

彼女は小さく笑った。

「音って、演奏だけじゃないんですね」

その言葉に、俺は少し救われた。

音楽が怖くても、音そのものが敵ではない。

敵があるとすれば、俺の中の“結びつき”だ。

紬はスマホを取り出し、録音した音を再生しようとして、手を止めた。

「…再生、平気ですか?」

俺は迷ったが、頷いた。

再生されたのは、鉄板のジュウという音だけ。

心はざわつかない。

その瞬間、俺は初めて気づいた。

“音楽”が怖いのではなく、“ある特定の音”が引き金になっている。

事故の日に聞いた、あの金属音。

それに似た周波数、似た響き。

もしそれが分かれば――。

俺は少しだけ、前に進めるかもしれない。

________________________________________

8. 第二の試練:父の沈黙と、母の不在

紬と過ごす時間が増えるほど、父の沈黙が重くなった。

父は紬を邪魔はしない。

だが、話しかけもしない。

店の仕事を黙々とこなし、俺の様子を見ようともしない。

ある夜、片付けの途中で父が言った。

「…東京で、何があった」

突然の問いに、手が止まった。

父がこういうことを聞くのは珍しい。

母が生きていた頃なら、母が間に入ってくれた。

今は違う。

「事故にあった」

俺はそれだけ言った。

父はしばらく黙り、鉄板を拭く手を止めた。

「…母さんは、音が好きだった」

俺は喉の奥が詰まるのを感じた。

母の話を、父が自分からする。

それは、何かを突きつけるようでもあった。

「母さん、昔…店の音を録ってたの、知ってるか」

「録ってた?」

父は奥の棚から古いノートを出した。

表紙に、母の字で書かれている。

『音のメモ』

ページをめくると、日付と短いメモが並んでいた。

「餃子の焼ける音:今日は少し油が軽い」

「雨の日の換気扇:低い音が増える」

「あなたがピアノを弾く音:少し強くなった」

母は、音を記録していた。

生活の音も、家族の音も。

俺が知らないところで。

父は言った。

「母さんは、“音は残る”って言ってた」

その言葉が、胸を打った。

音は消える。でも、残る。

記憶として。記録として。心の傷として。

________________________________________

9. 謎の層:母の残した「録音ノート」

翌日、紬にノートを見せた。

彼女は目を輝かせ、丁寧にページをめくった。

「すごい……。お母さん、音を愛してたんですね」

「俺、知らなかった」

言いながら、悔しさが込み上げた。

音楽の仕事をしていたのに、母の“音”を見落としていた。

ノートの中に、録音機材のメモが挟まっていた。

小さなICレコーダーの型番。

「押し入れの箱」と書いてある。

俺は押し入れを探し、古い箱を見つけた。

中にはICレコーダーと、何本かのメモリーカード。

電源を入れると、古いデータが残っていた。

再生――。

指が震える。

音が怖いのに、俺は音を再生しようとしている。

紬が言った。

「聞くの、嫌ならやめましょう。

でも、聞けたら……何か分かるかも」

俺は頷いた。

音の中に、母がいるかもしれない。

それは怖さとは別の、切実さだった。

最初の録音は、店の昼の音。

客の話し声。皿の音。鉄板のジュウ。

平気だ。

次は、遠州灘の風。

ザーッと荒い音。

胸はざわつかない。

しかし三つ目の録音で、俺は息を止めた。

そこに入っていたのは――金属の擦れる高音。

キィン、という音。

身体が硬直した。

事故の夜と同じだ。

「これ……」

声が震える。

紬は眉をひそめた。

「いつの録音ですか?」

データの日付を見ると、事故の数日前だった。

なぜ、母がこの音を録っている?

なぜ、俺の引き金になる音が、ここに残っている?

謎が、現実に輪郭を持って立ち上がった。

________________________________________

10. 真実の層:事故の夜の“音”の正体

その夜、父に聞いた。

「母さん、この音を録ってた。事故の前に」

父はしばらく黙り、そして、初めて真正面から俺を見た。

「……母さんは、事故の前から気づいてた」

父の声は、かすれていた。

「お前が東京で、無理してること」

「無理?」

父は言葉を選ぶように、ゆっくり続けた。

「母さんは、お前の曲を聴いても、嬉しそうにしてた。

でもな……電話を切ったあと、いつも同じこと言ってた。

“音が尖ってきた”って」

尖った音。

それは褒め言葉にもなる。

だが母は、それを心配していた。

父は、あの金属音の正体を教えた。

店の換気扇の部品が緩み、あるときから高音が出るようになっていた。

母はそれに気づき、録音し、業者に頼もうとしていた。

だが忙しさと体調の悪さで、後回しにしていた。

「母さん、言ってた。

“あの音、あなたの耳に悪い気がする”って」

俺は、言葉を失った。

事故の引き金は、事故だけじゃない。

その前から、俺は“尖った音”に追い詰められていたのかもしれない。

そして事故の夜、雨上がりの交差点。

金属音に似た高音が、何かを呼び起こした。

恐怖と結びついた“音”。

それが、俺の身体に焼き付いた。

音は、ただそこにあるだけではない。

心が、それに意味を貼り付ける。

怖さも、記憶も、後悔も。

その夜、俺は初めて泣いた。

父の前で。

母の不在の前で。

________________________________________

11. 最大の選択:音を捨てるか、向き合うか

翌日、紬が店に来た。

俺の顔を見て、何かを察したように黙った。

俺は言った。

「音の正体、分かった。店の換気扇だった」

紬は驚き、すぐに言った。

「直しましょう。すぐ」

換気扇を修理し、店の空気が少し軽くなる。

それでも俺の中の引き金は残っていた。

“あの音”が消えても、記憶は消えない。

紬は、遠州灘へ行こうと言った。

「最後に、風の音を録りたい」

砂浜で、風が吹いた。

ざわざわとした音が、耳の奥まで届く。

胸はざわつかない。

紬が言う。

「音って、怖いものにもなるけど……

好きなものにも戻れると思うんです。

だって、さっき、風の音、ちゃんと聞けてた」

俺は答えなかった。

音楽へ戻るかどうか。

それは、ただ“聞ける”かどうかじゃない。

戻った先でまた傷つく可能性がある。

その怖さは、まだ消えていない。

紬はスマホで、ブラスバンドの録音を再生した。

少しだけ。

「これ、好きなんです。揃ってないところ」

俺は耳を澄ませた。

音がぶつかり、濁る。

でも、刺さらない。

人間の音だ。

その瞬間、俺は分かった。

俺が恐れていたのは、完璧な音の“圧”だったのかもしれない。

削りすぎた波形。

尖らせすぎた周波数。

自分で自分を追い詰めていた。

俺は言った。

「…戻るなら、もう少し、揃ってない音でいい」

紬は、笑った。

「それ、すごくいいです」

________________________________________

12. エンディング:餃子の音から、音楽へ

紬が浜松を去る日。

駅の改札前で、彼女は小さく手を振った。

「餃子、また食べに来ます」

「いつでも」

「…音、取り戻してくださいね」

その言葉は命令じゃなく、願いだった。

紬が見えなくなったあと、俺は店に戻った。

父が鉄板の前に立っている。

ジュウ、という音が鳴る。

俺はその音を録音した。

母のノートの隣に、俺のスマホを置く。

そして、その音に、小さくピアノを重ねてみた。

完璧じゃない。

むしろ不揃いで、少し遅れて入る。

でも、その不完全さが、俺には呼吸できる余白をくれた。

夜、店の裏で一人、イヤホンを耳に入れる。

再生ボタンを押す。

餃子のジュウ、風のザー、遠くの車、そして小さなピアノ。

胸はざわつかない。

ただ、少しだけ、熱くなる。

音は、失ってからでも取り戻せる。

取り戻すとは、元に戻ることじゃない。

新しい調律で、生き直すことだ。

浜松の夜は静かで、

その静けさの中に、確かに音があった。

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― 新着の感想 ―
読んでいる間、ずっと胸の奥がじんわりしていました。 音楽が好きだった人が、音を恐れるようになる―― その苦しさが、説明ではなく身体感覚として描かれていて、 何度も息を整えながら読みました。 紬ちゃ…
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