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第9話 出発前の一悶着

翌日。


【帝都・正門前】

石造りの帝都内に大聖堂の昼時を知らせる鐘が鳴り響く。

湖上に浮かぶ帝都と本土をつなぐ大きな橋。

その帝都側の門前で、梅原ナオたち4人は馬車の前に集まっていた。


ナオ「いやなぁ?」


彼は腰に差した刀の位置を軽く直しながら、白い目で馬車の荷台を見る。


ナオ「昨日、帝都で必要なもんあったら買ってきときやて言うたけどやなぁ......」


荷台には、これでもかというほどの荷物が積み上がっている。

帝都のあらゆる商店の名前が印字された紙袋、布袋、箱。大小さまざまで、もはや荷物というより小さな山が出来上がっている。


ナオ「いくらなんでも、買いすぎとちゃうか……?」


ナオは白い目のまま、ステラとノノの方を見る。


ナオ「なんや自分ら、夜逃げでもしよるんか?」


ステラ「いや〜、久しぶりの帝都だったからさあ!テンション上がっちゃって!」


悪びれる様子もなくステラはニッと笑う。その横でノノは、人差し指同士をちょんちょんと合わせながら、苦笑いを浮かべる。


ノノ「かわいい食器とかいっぱい置いてて...つい......」


ステラ「ほらね?ノノもかなり満喫してたわよ?」


妙に得意げな顔をする。

二人の様子を見て、ナオは小さくため息をつく。


ナオ「こんなぎょうさん荷物あったら、馬も動き鈍なるでな」


視線を荷台に戻し、続けた。


ナオ「カイくんの試作品だけでも、クソ重そうやのに」


カイ「これ、二人がかりでも運ぶの大変だったすよ〜」


そう言って笑うカイの背後には、丁寧に梱包された冷気魔法の魔道具が荷台に鎮座している。彼は頭の後ろで腕を組み、ニカッと笑う。


ナオ「いやカイくんさぁ……」


ナオは思わず指をさす。


ナオ「思ってた五倍はデカいねんけど!? これ、人一人余裕で入るやんけ」


カイ「いや〜、これの元の案件の商品が業務用でしてね」


カイは苦笑いを浮かべながら、頭をぽりぽりとかく。


カイ「そのベースの材料を使って、そのまま組んだんで……」


ナオ「試作品なんやったら、もうちょい小さくしてもよかったんちゃうか?」


ナオは呆れたように言った。


ナオ「一般家庭に、こんなもん置けるわけないやろ」


カイ「まあ……確かに」


カイは一度だけ荷台をチラッとみる。


カイ「で、でも性能は保証しますよ!冷気の安定性も、持続時間も、理論上は――」


ステラ「ハイハイハイ!」


ステラが被せるように手を叩いて、割って入る。


ステラ「カイが語り出すと5時間は止まんないんだから〜」


カイ「それは盛りすぎじゃないっすか!?」


ナオ「しゃーないのお」


ナオはため息混じりに呟きながら、もう一度荷台に積まれた荷物と巨大な魔道具を見回した。


ナオ「こんなん積んだままやと、馬が重すぎて動かんなってまうわ」


ステラ「じゃあどうするの?」


ステラが問いかけた、その瞬間だった。



パカッ



乾いた音を立てて、ナオの被るシルクハットが右側に開く。


中から、やたらとムキムキなトナカイが、葉巻を咥えたまま半身を乗り出してきた。

黒のタンクトップに盛り上がった筋肉。 首には、その見た目にまったく不釣り合いな、可愛らしいベルがぶら下がっている。


トナカイ「よお、旦那ァ」


トナカイ?は帽子の縁に肘をつき、真下のナオに声をかける。


トナカイ「今、クリスマス本番に向けて、身体を仕上げてる最中なんだが」


親指で自分を指しながら、にっと歯を見せて。


トナカイ「どうだい……?乗ってくかい?」


ナオ「帰れ」


パタン


何事もなかったかのようにトナカイは引っ込み、帽子は静かに閉じた。


ナオ「んでやなぁ、そのままやと馬がかわいそうやから」


ステラ・カイ「いやいやいやいやいや!!!」


サラッと話を戻そうとするナオに、思わずツッコむ二人。


ステラ「何しれっと話の続きしようとしてるの!?なかったことにできないからね!!」


カイ「なんすか今のツノ生えた化け物!?クリスマスてなんかの大会ですか!!?」


ノノは少し間を置いて、ぽつりと呟いた。


ノノ「めちゃくちゃ……ムキムキでした……」


ナオは帽子のツバをつまんで、続ける。


ナオ「ちゃうねんちゃうねん!あれは勝手に出てきよったもんやからやなあ」


ステラ「勝手に出てくるものが大抵、ロクでもない存在だからツッコまざるを得ないのよ!!」


思わず咳払いするナオ。


ナオ「まあまあ、とりあえずやな。荷物、なんぼかもらうで」


ステラ「え?」


ステラが聞き返すより早く。


パカッ


乾いた音を立てて、再び帽子が右側に開いた。


ナオ「ほいほい〜」


ナオは無造作に、いちばん手前にあった紙袋をひとつ掴むと帽子の中へ放り込む。袋は吸い込まれるように帽子の中に入って消える。


ステラ「ちょ、ちょっと!ほんとに大丈夫それ!?割れ物とか入ってるんだけど!」


ナオ「だーいじょーぶだいじょーぶ」


彼はどんどんと荷物を帽子の中に放り込んでいく。


ノノは少し離れた場所から、その様子をじっと見つめている。


ノノ「すごい……なくなっていってます……」


ナオ「収納能力だけは、ほぼチートやからなぁこれ」


最後に少し大きめの布袋を手に取ると、同じように帽子の中に放り込んだ。


ナオ「……よっしゃ、こんなもんでええやろ」


パタン


帽子が閉じ、さっきまで荷台を占領していた荷物の山は、半分以下にまで減っていた。


ステラ「……改めて見ても、やっぱり意味分からんわ」


カイ「ほんと物理法則、完全に死んでますよねそれ」


カイが理解不能と言った感じで、首をひねる。


ナオ「まあこれが本来の“帽子の使い方"やからな。ほないこか〜」


そういうとナオは深緑の羽織を翻しながら、馬車へと向かっていった。

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