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第75話 対等の関係を

【エサリカ村・ジパング大使館】

応接室の空気は、わずかに重みを帯びていた。

グラバーは葉巻の煙をくゆらせながら、遠い記憶を辿るように目を細める。


グラバー「当時の議員たちはね……『大陸の勢力図が変わる』と騒ぎ、震えあがったものだ」


その言葉に、ナオは思わず吹き出す。


ナオ「アハハハ!!まあ……そりゃあ、例の話だけが先に伝わってたら」


刀から手を離し、膝に手を置いた。


ナオ「『とんでもない化け物が、大陸に侵攻を始めた』、って受け取られても仕方ないでしょうね」


グラバーも思わず吹き出す。


グラバー「ハハハ!まさに、その通りだったよ」


指先で葉巻を軽く弾き、灰を落とす。


そして。


ふう、と煙を吐き出した。

グラバーの視線が、静かにナオへと向けられる。


グラバー「……ところで、ナオくん」


わずかに口角を上げる。


グラバー「ヨシムネ殿の例の伝説。あの話は、本当のことなのかね?」


その問いかけに、ノノは肩をビクッと震わせる。

ソファに腰を下ろしたまま、わずかに身を縮こまらせた。

再び、顔が青ざめていくのがわかる。


ナオ「ええ、本当です。自分も、あの時は……何が起きてるのか、理解できませんでした」


グラバー「ほう?見たのかね君も」


グラバーは興味深そうに、わずかに身を乗り出す。


ナオ「ええ……この目で実際に」


ナオは一瞬だけ視線を落とし、続ける。


ナオ「私とここにいるノノが、その場に居合わせておりましたので」


ノノが青ざめた顔のまま、こくこくと頷く。


グラバーは再び葉巻を口に咥え、ゆっくりと口を開く。


グラバー「正直、私は尾ひれがついた噂話の類だと思っていたが……」


ゆっくりとナオとノノへ視線を向ける。


グラバー「君の口ぶりを見る限り、どうやらそうでもないらしいな」


ナオは静かに頷く。


ナオ「少なくとも、自分が見たものに関しては一切の誇張もありません」


その言葉に、ノノは再び小さく頷いた。

応接室に張り詰めていた空気が、わずかに緩む。



襖の外の三人は。


ステラ(小声)「……え、なに?その豊臣ヨシムネって将軍そんなヤバい人なの?」


カイ(小声)「なんか……“伝説”とか言ってましたけど」


リラ(小声)「……ナオさんとノノちゃん、一体何を見たのでしょうか……」


再び、視線が応接室の中へ戻る。



葉巻の煙をくゆらせながら、グラバーは足を組んだ。


グラバー「だが実際に元老院にやってきたのは、妙に人の良さそうな老人と……」


一瞬だけ、ナオの帽子へと視線を向ける。


グラバー「妙に騒がしい‟帽子‟だった」


その時、帽子の上では。


ガソスタ店員「あのーお客さん。もう給油とっくに終わってるんで、お支払いを……」


ハードボイルド男はダークスーツの胸ポケットから、すっと一枚の紙切れを取り出す。


ハードボイルド男「……給油2円引き。適用、頼めるか」


店員「あんたその見た目で妙に生活感あることしますね!?」


ナオは自分の頭上を指さし、呆れ半分に笑う。


ナオ「妙に、で済ませてええんですかねこれ?」


グラバーは思わず吹き出した。


グラバー「フハハハハ!いや……当時はさすがに人間が出てきたりまではしてなかったはずなんだがな」


軽く肩を揺らしながら続ける。


グラバー「さらに言えば奴は争いではなく、帝国との間に和親条約を結びたいと持ちかけてきた」


葉巻を軽く指で弾き、灰を落とす。


グラバー「元老院としては、まさに拍子抜けだったよ」


再び葉巻を口に咥えて続ける。


グラバー「『化け物が来る』と身構えていたところに現れたのは、その奇天烈な帽子を被った穏やかに笑うじいさん」


懐かしむように目を細める。


グラバー「しかも、その口から出てきたのは侵攻でも威圧でもない。『互いに利のある関係を築きたい』という、至極まっとうな提案」


ナオは小さく笑う。


ナオ「まあ……当時の帝国からしたら。400年以上鎖国を貫いてきた島国が、いきなり『仲良くしましょう』なんて言い出したら」


帽子のツバを軽く摘まむ。


ナオ「不気味以外の何物でもないでしょうね」


グラバーは小さく頷く。


グラバー「その通りだとも」


葉巻の煙をゆっくりと吐き出す。


グラバー「元老院は表向きは穏やかに応じながらも。内心では、いつ牙を剥くかと警戒していた」


指先で葉巻を軽く回す。


グラバー「あの覇王が治める国が、何の裏もなく頭を下げてくるなど……信じられるはずがないからな」


ナオは苦笑いを浮かべる。


ナオ「まあ……正直、自分が帝国の立場でも思いますね」


グラバー「だがな」


彼の視線が、静かにナオへと向けられる。


グラバー「あのじいさん……センポは、最後まで態度を変えなかった」


カイゼル髭を撫でながら続ける。


グラバー「こちらが疑おうが、試そうが、牽制しようが……ただ一貫して、奴は『対等であろう』とし続けた」


ノノはそれを聞いて、ほんの少し頬を緩める。

グラバーは、口元を緩める。


グラバー「それがな……気味が悪いほど、誠実だったよ」


ナオは帽子のツバを軽く押さえたまま、少しだけ目を細める。


ナオ「……センポさんらしいですね」


グラバー「ハハ……ああ、アイツとは個人的な因縁もあってね。よく知っているとも」


グラバーは背もたれに体を預ける。


グラバー「だからこそ、当時は余計にわからなかった。その背後にいるヨシムネという男が……」


ゆっくりと煙を吐き出す。


グラバー「いったい何を考えているのかがな」

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