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第66話 宇宙規模の人生相談

【エサリカ村・ジパング大使館】

梅原ナオの被るシルクハットから、巨大ロボのコックピットがせり出していた。


操縦桿を握り、必死な表情を浮かべたピッチリしたパイロットスーツ姿の女性が、半身乗り出すように座っている。


女性パイロット「こちら柊かなで!敵機を複数確認!迎撃の許可を願います!!繰り返す、迎撃の許可を……!」


カイはコックピットの計器を覗き込み、思わず引きつった声を出した。


カイ「なんすかこの道具!?魔石を使ってる感じでもないし、蒸気機関とも構造がまるで違う……」


ステラは呆然とコックピットを指差す。


ステラ「いやそれよりもナオちゃん!これ誰よ!?今度は何が出てきたの!?」


ナオは帽子のツバを押さえながら、呆れ顔で自分の真上を見上げた。


ナオ「いや〜俺も知らんわ。完全に初見やもん、この人」


その間にも、コックピットの計器はチカチカと点滅を続けている。


ピピピピピ……


かなでは操縦桿を握りしめ、左右を見回す。


かなで「くっ……!か、囲まれた!!

もう迎撃の許可は待っていられない……!」


ナオは帽子を見上げたまま、呆れたように呟く。


ナオ「毎度のことながら……帽子から出てくる連中は、一体何が見えとんや」


ステラ「いやあたしもそれ聞きたいわよ!!」


カイ「敵って何すか!?ここ平和な村っすよ!?」


ナオ「もっというとここ室内なんやけどなあ」


かなでは無線に向かって叫ぶ。


かなで「右舷に三機!左舷にも二機!このままじゃやられる……!アズーラ銀河連邦軍のやり方だわ!」


ナオ「おう、なんやなんや宇宙スケールの戦いしよるんか自分?」


カイ「そもそも帽子なのに舷とかないっす!」


かなでは前方を睨みつけ、叫ぶ。


かなで「こちら柊!攻撃態勢に突入します!!」


ナオ「誰に攻撃する気やねんなこの子は」


かなでは操縦桿を握りしめ、前のめりになって叫んだ。


かなで「うおおおおおお!!いっけえええええええ!!!」


そのとき。


???「ちょっと待ちなさいよアンタ」


かなで「な!?」


操縦席の横から、ぬっと別の顔が半身乗り出してきた。

濃いメイクに黒いドレス、堂々とした体格のやたら既視感のあるオカマ。だが、明らかにこの戦場(?)とは無関係な人物だった。


ステラ「人増えたーーー!?」


カイ「また誰か出てきた!!」


ナオ「これまたキャラ濃ゆい奴出てきたのお」


オカマはかなでの横から計器を覗き込み、静かに言った。


オカマ「ねえアンタ」


かなで「え!?だ、誰ですかあなた!?一体どこから......」


オカマ「いやね?アタシいつも思うんだけど」


少し身を乗り出し、真顔で言う。


オカマ「ロボット乗る子って、なんでそんな大声で叫ぶの?」


室内に一瞬の沈黙。


ステラ「そこ!!?」


カイ「ツッコむとこ、そこなんすか!?」


かなでは混乱したまま叫ぶ。


かなで「だ、だって今戦闘中ですし!!」


オカマは腕を組み、ため息をつく。


オカマ「アンタねえ」


計器のパネルを軽く叩く。


オカマ「状況的に不利なんだから、むしろステルスでもなんでも使って退いた方がいいんじゃない?」


かなで「え、いや...そういうわけにも」


オカマ「こういうのってね、正面から突っ込むより生き残る方が大事なのよ」


カイ「戦術アドバイス始まった!?」


ステラ「誰なのよこの人ほんとに!?」


オカマはかなでをじっと見て言う。


オカマ「あとアンタ、叫びすぎよぉ」


かなで「え!?」


オカマ「そんな叫んでたら、喉痛めるわよ」


そういうとオカマは黒光りするセカンドバッグから、小さな袋を取り出す。

取り出しのは、のど飴の袋だった。


オカマ「こういう仕事するなら、のど飴は常備しなさい」


かなで「いや今それどころじゃ……!」


オカマ「いい?戦闘ってのは長丁場なのよ。声帯のケアも大事よ」


カイ「何のアドバイスっすかこれ!?」


ステラは額に手を当て、深いため息をつく。


ステラ「言わんとしてることは分かるのよ。戦闘において体調管理はバカにできないし」


カイ「そこ共感するんすか!?」


ステラ「でもね」


コックピットと帽子を交互に指差す。


ステラ「まずその戦場がどこなのか説明してくれない!?」


ナオ「人の頭の上で叫んどるだけやからなあ、状況的に」


かなではまだ計器を睨んでいる。


かなで「くっ……敵機接近!距離三百!!」


ナオ「どこから見た基準やねんそれ」


オカマはかなでの肩を優しく叩いた。


オカマ「アンタ落ち着きなさい」


かなで「む、無理ですよ!!」


オカマ「深呼吸しなさい、深呼吸」


ステラ「戦闘中にメンタルケア始めたわよこの人」


オカマはのど飴の袋をかなでに押し付けた。


オカマ「ほら、舐めなさい」


カイ「今!?」


そのとき――

廊下の向こうから、ぱたぱたと足音が響いた。


ガチャ。


ノノ「梅原さま、お花買ってきまし――」


ノノはその場で固まった。


帽子の上から巨大ロボのコックピット、パイロットスーツの女性、横から人生相談を始めるオカマ、点滅する無数の計器。


完全に意味不明な光景だった。


ノノの手から、花束がぽとりと落ちる。


ノノ「……え」


ステラ「あー、ノノ...」


カイ「ノノさん、またすごいタイミングで帰ってきちゃいましたね」


ナオは半ば諦めたように笑う。


ナオ「おー、おかえりノノ。いつもの混沌劇場の真っ最中や」


かなで「くっ……敵機接近!距離二百!」


オカマ「だからアンタ落ち着きなさいって!」


相変わらずナオの被る帽子の上でやり取りしている謎すぎる二人組。

ノノは花束を拾うことも忘れたまま、おろおろと周囲を見回す。


ノノ「え……あの……これ……夢ですか……?」


ナオ「現実やぞ」


その後も。

かなでの宇宙戦闘、オカマのメンタルケア、ナオたちの総ツッコミ。


意味不明な混沌はなんやかんや続き――


帽子に引っ込むまで、十五分近く続いたのだった。


ナオ「……グラバー卿がこの状況見ても、笑い飛ばしそうな気がしてなあ」


帽子を押さえて少し笑う。


ナオ「今から会うの、ある意味楽しみやわ」

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