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第41話 二次会いっちゃう?

【エサリカ村・ギルド集会所】

二階の酒場で行われている打ち上げは、すでに最高潮の盛り上がりを見せていた。


ナオの帽子からは、いつの間にかでかでかと松が描かれた背景装飾の板がせり出しており、

その前で菊左衛門が大仰に見得を切りながら、先ほどのトロール討伐戦を一幕の演目として熱演している。


菊左衛門「そこに現れたるは鉄でできた蛇のごとき怪物!」


カンッ!


ツケ打ちが入り、菊左衛門がぐっと身を屈める。


菊左衛門「雷鳴を従え、地を震わせ、音を裂きて駆け抜けるその姿。あ、まさしく異界の魔獣!」


「ブハハハハ! あれほんと、びっくりしたよなあ!」「蛇じゃねえ! どう見ても、あれ絶対蛇じゃねえ!」


客席もとい酒場の冒険者たちは、酔いが回った勢いも相まって、爆笑しながら遠慮なくツッコミを飛ばす。


菊左衛門「されど勇士ら、怯まず!剣を構え、槍を突き、稲妻を呼びいたし!」


カン、カン!


菊左衛門「轟天一閃!巨なる獣ッ!ついに地に伏す!」


その瞬間、帽子の中から即席の紙吹雪が舞い散った。


「いつの間に用意したんだよ!?」「ハハハ!! 帽子、何でも出すぎだろ!」


ステラはジョッキを片手に、半目のままその光景を眺めている。


ステラ「……討伐戦、こんな派手じゃなかったわよね?」


カイ「むしろ盛られてますね。だいぶ、盛られてます」


ナオは、自分の頭上で繰り広げられる演目に呆れた様子で、頬杖をついた。


ナオ「せやけどな……こいつが主役になっとることを除けば、ほぼほぼ事実なんがまた腹立つわ」


酒場には、笑い声と拍手がこだまする。

打ち上げは、もはや単なる宴を越え、一夜限りの舞台と化していた。


紙吹雪が床に落ち、菊左衛門の熱演が一段落したところで、酒場の喧騒はひとまず間を挟んだ。


リラは手にしていたトレイをカウンターに置き、軽く肩を回してからナオたちの卓へと近づく。


リラ「……ふぅ。ちょっとだけ、休ませてもらってもいいかしら」


そう言って、遠慮がちに椅子を引き、腰を下ろした。


ステラ「ええ、いいわよ。リラ、ずっと動きっぱなしだったでしょ?」


リラ「うん。さすがにこの人数分だとねぇ」


そう言って、ふっと小さく笑う。


ナオ「いやーほんまリラさんもえらいすまんなぁ。ちょっとゆっくりしいな」


リラ「ふふ。でも、みんなが無事で戻ってきた日の打ち上げだもの。これくらい、全然平気よ」


そのやり取りを聞きながら、ハンスが空になった皿を眺めて、ぽつりと呟いた。


ハンス「なあ……正直に言っていいか?」


ステラは半目で頷く。


ステラ「どうせ止めても言うんでしょ」


ハンス「もう少し、腹に入れてぇ」


リラが思わず吹き出す。


リラ「あら、まだ足りなかったです?」


ハンス「戦ったあとってさ、酒もいいけど……なんか、こう……がっつりしたもん、食いたくならねえ?」


ドラークも静かに頷いた。


ドラーク「同感だな。激しい戦いの後は、肉か何か温かいものもほしいところだ」


ティナは少し遠慮がちに手を挙げる。


ティナ「え、ええと……わ、私も……スープ、もう一杯あったら……うれしい、です……」


リラは三人の顔を見回し、くすっと笑った。


リラ「ふふ……分かったわ。じゃあ、少し軽めになにか」


そう言って立ち上がろうとした、そのとき。


ナオ「あーリラさんちょい待ちちょい待ち。ここは俺に任せてくれんか?」


リラ「え?」


ステラ「ナオちゃん、一体何する気よ…?」


ノノ「な…なんか………不安なんですが……」


ナオ「いやほんま大丈夫やって今回は!ただピザを頼もかと思ってな」


ハンス「ピザ?」


ティナ「……ぴ、ぴざ……?」


ドラーク「……円形の焼き物、だったか」


カイ「それって南方の地方のチーズが乗ってるやつっすよね?この辺じゃ焼いてる人、見たことないっすけど……」


その瞬間、ステラが嫌な予感に目を細める。


ステラ「……ちょっと待ちなさい。頼むって、どうやって?」


ナオは穏やかに笑い、自分の被る帽子を見上げる。


ナオ「なあ、菊左衛門」


背景板の前でお猪口の酒を煽っていた菊左衛門が、ぴくりと反応した。


菊左衛門「む?何用でござる、梅原殿」


ナオ「今からピザパしよう思うんやけどな。アレ、出されへんか?」


菊左衛門は一瞬だけ首を傾げたが、すぐ何かを閃いたようにに大きく頷いた。


菊左衛門「合点承知!しばし待たれよ」


そういうと菊左衛門は芝居がかった動きのまま、すっと帽子の中へと引っ込む。


ノノ「い・・・いったい…何を……?」


しばらくすると、菊左衛門が再び黒光りする何かを携えて再び姿を現した。


菊左衛門「待たせ申した!」


帽子から半身を限界まで乗り出し、それをどんとテーブルの上に置く。


置かれたのは、まさかの黒電話だった。


黒光りする受話器。ぐるぐると巻かれたコードが帽子の中へとつながっている。

酒場の空気が、一瞬で静まり返った。

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