第28話 怖いものは怖いんですよぉ!!
【村はずれ・旧鉱道前】
日没直前。赤みを帯びた西日が、崩れかけた坑道の入口を照らしている。
かつて多くの鉱夫が行き交っていた鉱山も、今は人の気配ひとつなく、不気味な空気だけを漂わせていた。
ステラは、坑道の奥をじっと見据える。
ステラ「……相変わらず、気味の悪い場所ね。正体不明の音がするとか、噂が立つのもわかるわ」
ドラーク「ふむ。今のところ、何かが潜んでいそうな気配は感じんな」
ティナはローブの裾をぎゅっと握って、唾を飲みこむ。
ティナ「邪悪な……霊的な気配も感じませんが、油断は禁物ですね」
ハンス「なあ、とりあえず何の気配も感じないのはいいんだけどさ」
そう言って、ハンスは親指で背後を指した。
ハンス「あの子、ほんとに大丈夫なのか…?」
その先では、ノノが小さくうずくまり、両手で頭を抱えていた。
ノノ「無理無理無理!怖すぎますぅぅぅぅぅ!!やっぱ来なきゃよかったぁぁぁぁ!!」
ステラは剣の柄に手を添えたまま、半目で答える。
ステラ「……あー、うん。大丈夫ではないわね」
ハンス「率直すぎんだろ!!」
ティナは慌ててノノのそばに駆け寄り、両肩にそっと手を置いた。
ティナ「ノノさん、大丈夫ですか!?あ、あの、無理なら……」
ノノ「む、無理です!絶対無理です!ほら見てくださいこの暗さ絶対なにか出ますよこれぇぇ!」
ハンス「……まあ、気持ちはわかるけどな。俺も好きじゃねえし、こんな気味わりぃ場所」
ステラ「はぁ…仕方ないわねぇ」
そういうと、ステラはノノの前まで歩み寄る
ステラ「ほらノノ。しっかりしなさいって、ナオちゃんに頑張ってこいって言われたでしょ」
ノノ「そ、それは…そうですけど」
ステラは片膝をつき、ノノと視線の高さを合わせる。
ステラ「さっき、自分の意思で『行く』って言ったんじゃないの?」
ノノ「……は、はい」
ステラ「じゃあさ。自分の言葉に、責任持ちなさい」
ノノ「……っ」
言葉は強いが、声は荒れていない。
ノノ「……自分の……言葉に……」
ステラ「ナオちゃんはね、そういうところ、ちゃんと見てる人よ」
ステラは、少しだけ口角を上げる。
ステラ「ここで踏ん張ったら、きっとノノのこと、すごく褒めると思う」
ノノ「う、梅原様が……?」
ティナも優しく微笑む。
ティナ「大丈夫ですよ、ノノさん。私も中では、ずっとそばにいますから」
ノノ「てぃ、ティナさん…」
ノノは唇を噛みしめ、ゆっくりと頷く。
ノノ「……行くって言ったのは……わたしです。が、頑張ります!」
ステラがその言葉を聞いて、ニッと笑う。
ステラ「よし!よく言った、ノノ!!」
ハンス「じゃあいくか!」
ドラーク「どうやら、腹は据わったようだな」
ティナ「……一緒に、行きましょう……!」
ステラ「大丈夫だって!このパーティなら、何か出てきても絶対やっつけられるから」
ノノはティナと並んで立ち上がり、五人は揃って坑道の奥を見据えた。




