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第19話 村の喫茶店

【エサリカ村・喫茶ミルミル亭】

ミルミル亭は、村の西通りの一角に建つ木造二階建ての喫茶店である。

昼時の店内には、焼き立てのパンとコーヒーの香りが漂い、冒険者や村人たちの憩いの場としていつも賑わっている。


木目調の温かみある店内に、ランプの柔らかな光が落ちている。

外の冷たい空気を忘れさせる、何時間でも滞在してしまいそうな居心地のいい空間をつくりだしている。


ステラ「はあ〜。やっぱりここが一番落ち着くわ〜」


リラ「ナオさんとカイさんが来るまで、コーヒーでも飲んでてね。ノノちゃんにはミルク多めの紅茶を用意するわ」


ノノ「……あ、ありがとうございます……あの、お手伝いを……」


リラ「大丈夫!ノノちゃんも座ってて。今日は外もひんやりしてたし、温まってて」


ノノ「……はい。ありがとうございます」


リラはカウンターに回り、鍋の中を覗き込む。


リラ「今日は森の根菜をたっぷり使ったシチューにしてみたの!みんな、喜んでくれるかしら」


ステラ「最高じゃん!私、それめっちゃ好きなやつ!」


ノノ「リラさんの料理……久しぶりなんで、楽しみです」


リラ「ノノちゃんにもそう言ってもらえると、作り甲斐があるわ!」


リラは鍋を軽くかき混ぜてから、蓋をした。

そのままカウンターへ戻り、サイフォンに水を注ぐ。


リラ「それで……久しぶりの帝都はどうだった?」


ステラ「私は外交のことに関してはよくわからないけど、まあ順調だったと思うわよ」


ノノが少し迷うようにしてから、会談中に書き留めていた巻物をそっと取り出した。


ノノ「な、内容的には……とても平和的な関係が……保ててると思います」


リラ「そう、よかったわ!せっかく仲良くしようとナオさんやノノちゃんが頑張ってるものね」


ノノ「あ、あと……こ、交渉次第ではあるんですが。か、関税が……ジパングの分も、下がるかもしれません」


ステラ「それって気になってたんだけど…。ジパングの輸入品が今までより安く買えるってこと?」


ノノ「は、はい……。おそらく……すぐ全部が安くなる、というわけではないんですが……。仕入れは、今より楽になるかと……」


それを聞いて、リラが手を合わせて微笑む。


リラ「まあ!それはうちにとっても、ありがたい話だわ。せっかくだったら、ジパング由来の素材もお料理に使いたいけど……今は、どうしても仕入れ値が高くて」


ステラ「へえ~、こういうところにも影響が出るもんなんだ…。会談の内容は正直よくわかんなかったけど、ナオちゃん、ちゃんと外交官の仕事してるじゃん!」


そう言いながら、ステラはふっと視線を逸らした。


ステラ「……まあ、例によって会談中にも、あの帽子が暴れたんだけどね」


リラ「あらあら。ナオさんも相変わらず大変ね」


ノノ「か、会談中に……河童のお弁当屋さんが、出てきた時は……肝が冷えました……」


リラは一瞬きょとんとした表情を浮かべ、それから困ったように微笑む。


リラ「……河童?」


ノノ「は、はい……板前さん姿で……きゅうり巻きだけ入った……お弁当を……」


ステラ「しかも二人組よ。醤油とガリっていうんだっけ?それを入れるか入れないかで、論争始めてさ……」


リラ「ふふ……それは、また……」


そう言いながら、リラはステラにコーヒーを、ノノにミルクティーを差し出した。


リラ「帝都の人たちも、とても驚いたんじゃない?」


受け取った飲み物を口につけながら、ステラとノノは思わず苦笑いをする。


ノノ「……書記官の方は……腰を抜かしてました……」


ステラ「でもね! ナオちゃんの対談相手だったハヌスさんって人は、むしろ大笑いしてさ!」


リラ「ふふ。だいぶ肝が据わってる議員さんだったのね」


ノノ「センポさんの時に......同じようなことがあったらしくて......むしろ...懐かしがってました」


リラ「たしかナオさんのお師匠さんよね?ノノちゃんにとっても恩人だって聞いたけど」


ノノ「は......はい。とても優しい......本当のおじいちゃんのような方でした」


ステラ「でもたしかその人が、あの帽子を作ったんだよね?どういう経緯であんなカオス発生源を作ったのか......謎すぎるんだけど」


と、その時。

店の外から、場違いなほど張りのある声が聞こえてきた。



「オーライ!オーライ!はーいそのまま真っ直ぐー!」



三人は同時に、ぴたりと会話を止める。


ステラ「……なに、今の」


ノノ「……え……?」


リラは一瞬きょとんとした顔をしたあと、苦笑いを浮かべた。


リラ「まあ......大体想像はつくわね」


ある程度察しはついていたが、3人と数人の客が窓越しに店の外を見渡した。

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