第10話 さらば帝都
【帝都・正門前】
梅原ナオは、深緑の羽織を翻しながら馬車の御者台に乗り、手綱を握る。
ナオ「ほれほれ、みんなも乗りや。先は長いでな〜」
やれやれ、といった様子で三人は顔を見合わせ、苦笑しながら荷台に乗り込む。ノノはナオのすぐ後ろの荷台の縁に手を置いて、ちょこんと腰を下ろした。
ノノ「と...とりあえず公務は一区切りですね、梅原様」
ナオ「せやなぁ。とりあえずは幕府にええ報告ができそうや。ノノもよう頑張ってくれたわ」
そういって振り返りノノを見る。
ノノ「......エヘヘ...」
手綱が軽く振られ、馬が走り出す。馬車はゆっくりと動き出し、一行は帝都の正門を後にした。
湖上に浮かぶ荘厳な大都市は、少しずつ遠ざかっていく。
石造りの城壁や聖堂の大鐘楼が小さくなるにつれ、周囲の景色は開け、やがて緑の濃い街道へと変わっていった。
【バロア帝国内 森の中の街道】
数時間後。
使節団を乗せた馬車は、森に囲まれた街道を北東へと進んでいた。
天候は良好で、馬車の小刻みに揺れる音と心地よい風が続く。
街道は石畳で整備され、道の両脇には等間隔で魔術式による自動点灯のガス灯が立ち並んでいる。
ナオ「お〜順調順調。この調子やと、日が落ちる前には宿場町に着けそうやなぁ」
カイ「ですねえ、雨も降らなさそうだし平和そのものっすよ」
ステラ「そうねえ」
そういいながらステラは荷台で軽く伸びをする。
ステラ「なんだか小腹も空いてきたし、もう少ししたら軽く何か食べない?」
荷台の端では、 陽気と馬車の揺れにあてられたノノが、うとうととしている。
ナオ「せやなぁ、けどこういう時って.........大体フラグ立つんよなぁ」
ステラ「ちょ、ちょっと!?やめてよ、そういうこというの」
ナオ「まあ、経験則よ経験則」
そういって、穏やかに笑ったまま手綱を操るナオ。
しかし、前方の森から数人の人影が姿を現した。
ステラ「げ!?」
前方だけでなく、背後からも、わらわらと人影が現れる。
カイ「か、囲まれた……」
人種は人間を始めとして、リザードマンやオークも混じっている。手には、ろくに手入れされていなさそうな短剣や錆びついた斧。
いかにもな山賊である。
ナオ「ほらのお? お約束や」
この状況でも、ナオは焦る様子を見せず、ステラの方に振り向いて笑う。
ステラ「全然嬉しくないのよ!そんなお約束!!」
山賊A「へへへ、運が悪かったなぁ兄さんたち!さ、金目のものを全て置いていってもらおうか」
その声にノノがヒッと息を呑んで、荷台の縁にしがみつき身を縮こめた。
ナオは帽子のツバを摘んだまま、穏やかな笑顔で山賊に声をかける。
ナオ「いや〜……すんませんなあ。私ら、貿易キャラバンでも何でもない、ただの旅人ですさかい。ほれ」
ナオは親指で、馬車の荷台を指す。
ナオ「ご覧の通り、金目になりそうなもんは持ってへんのですわ。このくそデカいのも、彼の試作品いうだけでねぇ......商品でも何でもないですし」
山賊たちは、怪訝そうな顔で互いを見合わせる。
山賊A「アニキ……あの帽子の男の言う通りですぜ。あの馬車、大したもん乗っちゃいねえっすよ」
山賊B「そ、それに……あの紫髪の姉ちゃん、剣持ってますぜ。割に合わねえ気がしますが……」
山賊頭「バカ言ってんじゃねえ!!」
怒鳴り声とともに、山賊頭は刃こぼれした剣を抜き放つ。
山賊頭「それでもテメェら、山賊の端くれか!?むしれるもんは、むしっていく。それだけだ」
その動きを見て、ステラもすぐさま荷台から飛び降り、剣を構える。
ステラ(くっ……数が多い。カイの支援があっても、あたし一人でナオちゃんたちを守り切れるか……)
ナオ「……あかんのぉ」
小さく、誰にも聞こえない声で呟く。
ナオ「こりゃ、さすがに交渉決裂か」
そう言いながら、ナオは腰に下げていた刀を留める紐をそっと外した。
山賊頭「野郎ども、やっちまえ!!」
号令と同時に、山賊たちが一斉に動き出す。馬車へ向かって、わらわらと距離を詰めてくる。
ステラ「カイ!援護お願い!」
カイ「りょーかいっす!!」
カイは腰に下げたポーチへ手を伸ばし、青白い液体の入った小瓶を一つ掴み、山賊たちの足元へ投げつけた。
小瓶が地面に叩きつけられ、バリンという割れた音と共に霜のように白い煙幕が立ちのぼる。
山賊C「うおっ!?つめてぇ……なんだこれ!? 霧か!?」
視界を奪われ、足を止める山賊たち。
ステラ「ハァッ!!」
その隙を逃さずステラが踏み込み、剣を振り抜く。間合いに入った山賊を押し返し、さらに横から来た一人の剣を弾き返す。
一方でノノは目に涙を浮かべ、荷台の端でおろおろと立ち尽くしていた。
白い煙の向こうから、二人の山賊が剣を携え距離を詰めてくる。
山賊D「へへへ!!」
山賊E「悪く思うなよ?お嬢ちゃん」
そういうと二人はノノを左右に回り込んで、挟み込む形で同時に斬りかかる。
ノノ「……ひっ……!」
小さく悲鳴を上げながらも、ノノの指は高速で印を結ぶ。
ノノ「……変身の術!」
ボワンッ
直後、ピンク色の煙がふわりと広がり、ノノの姿は消え代わりに小さなリスが一匹荷台の床に現れる。
山賊D「えっ!?」
山賊E「ちょ、タンマタンマ!!」
ガツン!!!
山賊たちは互いの額を正面からぶつけ合い、鈍い音を立ててその場に倒れ込んだ。
ステラ「ナーイス!ノノ!」
ステラは山賊たちを薙ぎ払いながらグッと親指を立てる。
しかし、その瞬間。
御者席に座るナオめがけて、山賊頭が剣を振り上げ飛び掛かろうとしていた!
私は戦闘描写を書くのが非常に苦手なので、わかりにくかったらごめんなさい汗




