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もうほぼ初対面と言っても過言ではない

めまぐるしく学園生活

さて、本日学園入学です。


え?何があってそうなったって?

公爵家の家族構成調べたら祖父が領地でご存命だったのをいいことに速攻で祖父にヘルプを送り。

赤ちゃんの起こした本人の意識外の事故になんて対応してんだと怒っていただき、関係改善は全くしないままで平和な生活環境と教師を確保して学園に向けていろいろなオベンキョウをがんばりました。マル。

このじいちゃんも両親が洗脳されていた時には洗脳を見抜けず補佐官だけ置いて隠居生活満喫しており、解除された時には精神が脆弱だからコントロールされるんだと散々両親をののしっててそのせいでしわ寄せがこっちにきたんだからそれぐらいしてくれないとね。


あとは途中やっぱりあの後1年で侯爵家に引き取られた私の体の人が光魔法が使えるだろうと詰め寄ったりイレギュラーな事をするなと言ってきたのを発現してないとか元が分からないから仕方が無かったとのらりくらりと言いくるめたり、マナーが良くなってきていびり甲斐が無かったらしい王妃が今度はお茶に下剤だとかを混ぜてくる始末でお茶会が着々と拷問になっていきそうだったので手を抜く方向にシフトチェンジしたり、学園入学までのオベンキョウと王子妃教育とお茶会対策の合間になんとか相手を出し抜く為の情報収集と光属性魔法の練習と仲間探しと・・・

やる事が!やる事が多い・・・!


と必死になっている間に今日を迎えた訳ですよ。

がんばったね、自分。

仲間は見つかってないけどね。

なんて過去を振り返りたくなる事案発生中です。

今、まさに目の前で。


「ユリシーズ様ぁはじめましてぇあたしも今年入学でぇアリアです!よろしくですぅ」


一応入学式だからか原作でも学園の門で待っていたユリシーズ王子が、原作通りに立っているのが見えてその前で立ち止まりカーテシーをするべく両手をスカートにかけた。

そのタイミングで走り込んで来たアリアが、先の発言を宣って、その勢いのまま王子の手に手を伸ばして王子の横に居た側近のボルヴィネ令息にガードされた。


「えぇ?あたしユリシーズ様と仲良くなりたいだけなのにぃひどいです!」


ぷんぷんと漫画だったら効果音でもついていそうな表情で頬を膨らませ抗議する自分・・・の姿。

いや、許可無く王子に触れていいわけが無いよね?


「でもあなたもアリアと仲良くしてくれるならぁ・・・ゆるしますぅ」


にっこり笑顔で小首を傾げてきゅるんポーズ・・・?

え?さっさと侯爵家に引き取られて早5年貴族やってらっしゃるんですよね?原作の様に貴族になったばっかりで貴族のマナーに不慣れを言い訳に使える年数じゃないですよお嬢さん・・・

やめて・・・その顔と声で・・・

じ・・・自分の体でここまで痛い行動を目にしないといけないとは・・・新手の拷問過ぎる。

というか中身とのギャップに!吹き出しそうを通り越して恐ろしくて寒気が!

それ!私の真似なんですか!?違いますよね!?

違うと!違うと言ってぇええええ!!!


心の叫びはおくびにも出さないアルカリックスマイルもこの6年で板に付いたもんですよ。

王子の斜め横から自分の顔へと作り笑顔を向けてから、会釈と共に出来るだけ優しい声色を意識して話しかける。


「はじめまして、わたくしヴァイオレット・ジョアンブルクと申します。アリア様、とおっしゃったかしら?殿下には突然触れないで許可を取ってからをお勧めしますわ。」


言い終わる前に、自分の姿が顔を両手で多いわっと泣き声の様なものをあげる。


「ひどいですぅそうやって身分を振りかざして差別するんですかぁ!?」


・・・・・・。

いちゃもん極まれりである。


頬に手をあてて小首を傾げ「あらぁ困ったわぁ」一択である。


「ボルヴィネ公爵令息様・・・わたくし何かこの方のご機嫌を損ねる事をしでかしてしまったかしら?」


入学式の会場にも入っていない初っ端から公爵令嬢によるいじめだなんてあまりにも外聞が悪過ぎる。

この人最終的にこの体に戻る気でいるのよね?

あぁでも『全部冤罪でした』で済ませる気なのか。


聞かれたボルヴィネ令息が、彼女を止めた際と変わらぬ無表情のまま首を横に振る。


「いいえ。この者が言語が理解できなかっただけでしょう。お気になさる事はありません。」


言語が、ときた。

ん?君攻略対象でしたよね?初期値こんなに塩対応なの!?

それとも光の魅了が無いから?

ポーズと表情をそのままに、自分の姿が抗議の声をあげるまにあらぁと声を出す。


「そのような事をおっしゃらないで?けれどアリア様がわたくしに威圧感を感じられたのなら申し訳ありませんわね?すぐ失礼しますから、ご容赦くださいませ。・・・殿下、御前失礼いたします。ボルヴィネ公爵令息様もアリア様も失礼いたしますね」


おっとりと、でも異論は挟ませない様に、言葉を切らずに言い切ってカーテシーをして踵を返す。

私の中の人間には好都合なはずだ。王子や令息はどうだか知らないが、後の事は知った事ではない。

王子はそのままそっちと仲良くしていたら良いのだ。


「ひどぉい!」


聞き取れた声が恐ろし過ぎて後ろを振り返る事もしないまま、入学式の会場へと向かった。


後からボルヴィネ公爵令息が教えてくれたところによると、あの後私がアリアが言語が分からない猿だと馬鹿にし、去り際の挨拶にアリアの名を最後にして差別したのだと泣き、王子様はそんな事しませんよね?からの怖いから一緒に居てくださいと続いた様だ。

アリア(の中の人)・・・恐ろしい子・・・





そうして始まった学園生活だが初っ端はさておき思いの外平和なスタートが切れたと思う。

原作では同じクラスだったアリアが下から数える成績のクラスだったし、教室に突撃してくる休憩時間にはさっと教室から避難している。


殿下は、接触しなければどうということは無い。

無い、はずでしたよね!?


「婚約者殿との交流が足りていないと思い至ったのでね。迎えにあがった。」


目の前で作り笑いを披露しているこいつは一体誰だ。

令嬢仮面、仮面・・・と脳内で繰り返しながら笑みを作る。

ここには殿下が来たのならばご挨拶をと、両親と長男様まで並んでいるのだ。

下手に喜んでる風を作れば調子に乗りやがってとつついてくるだろうし、あまりに無碍にしてもどの身分でとつついてくるだろう。まさか殿下の前で失態を犯す様な真似はしないだろうが後で確実に面倒が起こる。

やんわり、へりくだって・・・


「勿体ないお言葉ですわ。殿下のお忙しい時間を削っていただくだなんて申し訳ございません。学園でお会い出来ればそれだけで・・・」


「せっかく迎えに来てくださったのになんて事を言うんだ!失礼な奴だな!これだからお前は。王家に入っても我が公爵家の恥じになる道しか無いのに辞退もせずにしがみつきやがって。」


横からこの家の長男様が被せて罵ってくるのに驚愕で体がこわばる。

まさか殿下の前で、と思った自分が楽観的だったのか!?

殿下の前でそんな発言をする事こそがこの家の恥以外の何ものでも無いだろうに。貴族ならではの外面ってものを学んでいないのか?いい年して。

と、思ってみても今ここには更なぬ恥も並んでいるのだった。


「本当に。申し訳ございません、殿下。両親に迷惑しかかけない化け物の分際で偉そうに。」

「殿下のご配慮はこれでは無く我が家にいただければ。我々が日々損害を被っている分王家からの恩恵でも寄越せば良いものをそれすら出来ないグズでして。」


この人達本当に貴族として今まで生きて来たの!?

え!?馬鹿じゃないの!?いや馬鹿だよね!?それとも洗脳の後遺症なの!?6年経っても!?


驚きに両親を2度見したいところをぐっと堪えて笑顔の仮面をキープする。


「貴方方は・・・」


「殿下!学園に遅れてしまいます!本日のところはご一緒させてくださいませ。」


明らかに眉を顰める殿下の言葉を失礼を承知で遮って馬車へと促す。


「お前・・・!」


長男様の声がするが、殿下が付いて来ている事を確認して声を無視して馬車へと向かう。

これ以上恥を上塗りしないで欲しい。

なんとか殿下の馬車へと逃げ込んでほっと一息つく。

テンパり過ぎて普通に殿下にエスコートさせて馬車に乗ってしまった・・・


それはそれとして


どうして、こうなった。

あの方々は生粋のお貴族様だ。お貴族様のはずだ。お貴族様・・・ですよね?

少なくとも本日この日まで爵位返上したという話は聞いてはいない。

しかし、先程の態度を見るにまともに貴族社会でやってきた人間とはとてもじゃないが思えない・・・


「侯爵家は代替わりの手続きがあったのに今も前侯爵が政務を全て執り行っているご様子だったが、当主がご病気というわけでは無かったのだな?」


脳内で頭を抱えたところに更にで殿下による爆弾投下が行われた。

いや、内容も爆弾だがあなたそんなに長い言葉喋れたんですね!!!???


驚きに、思わず表情を作る事も忘れて視線を向けると、ばっちり視線が合ってしまう。

不敬だとは思いつつもつい視線を横へとずらし小さく息を吐く。


「当家の事でしたら王家の方で充分調査済みでしょうに。ご自分の目でご確認されたかったのですか?」


爆弾情報への動揺を令嬢仮面で多い隠すも、0円スマイルまで作る気は起きない。

朝っぱらからどっと疲れるあれこれで不敬だと咎められるなら、もうそれでいいんじゃないかという投げやりな気分だった。


「いや、先程も言った通り、婚約者殿との交流の時間を持つべきかと」


「国王様がそうせよと?であれば、学園で時間を取っていますとお答えいただければそれで良いのでは?」


向かいで足を組んだ無表情の殿下の言葉に、反射的に聞き返してしまうと馬車の中に微妙な空気と共に沈黙が訪れる。

いや・・・これは、不敬では無いはず。少し食い気味だったかもしれないが妥当であるはずだ。

殿下が考え事でもする様に僅かに視線を下げ、口元に手をやる。


「婚約者殿は、私との時間を取るのが嫌だという事だろうか?」


え。下手にこっちのでいにされても困るんですけど。

令嬢笑顔でこてりと首を傾けて見せる。


「とんでもないことでございます。わたくしの為に殿下のお時間を頂戴するのは勿体無いと思っているだけで」


結局は時間を取る気は無いですってことですけどね!


「婚約者殿に取らずに何に取れと?」


「任されていらっしゃるお仕事や学園では生徒会のお仕事もあると伺いました。それに・・・恥ずかしながら殿下と2人でお会いするのは、緊張してしまいますので。」


殿下の言葉に訝し気な声色が混じるのを感じて、奥ゆかしい淑女ぶって恥ずかし気に控えめな笑みと共に付け足してみる。


「かしこまらずとも、婚約者なのだから・・・」


苦笑を浮かべる殿下に何をのたまってるんだこいつの心をまた笑顔の下に押し込める。


「ですが、殿下とはほぼ初対面と言っても過言ではございませんし。」

「いやそれは過言だろう。」


やんわり言った言葉に即入るツッコミに驚きで動きが止まった。

あ。ツッコミとか出来るんですね?殿下。


「あら、ですがわたくし国王陛下にお名前をお教えしていただいた際に「ユリシーズだ。」とおっしゃった声をお聞きして以降、先程6年振りにお声を聞いたかと思うのですが?」


ここは頬に手をあてて小首を傾げ必殺「あらぁ困ったわぁ」である。


「だが、お茶会で顔は合わせていただろう。」


この6年手紙もプレゼントも無く王家主催のお茶会でも舞踏会でもエスコートどころか顔も合わせなかったのを王妃とのお茶会に時折同席するレベルで、しかも同席しても始まりと終わりの挨拶どころか一言も発言せずそれどころか正面で顔を合わせるのも初対面の紹介以降今が初だというレベルで初対面とは呼べない関係を築けているだろうと?

どちらかと言えば完全にガチでマイナス極振りだわ。


「王妃様とのお茶会に時折座ってらした記憶はございますね」


「挨拶もしなかったのはそちらだろう。」


こちらの言葉にとうとう隠すのをおやめになったのか、イラッとした様子の早めの口調で返答がある。


「殿下。殿下はわたくしよりも貴族のマナーについてご存知でいらっしゃいますよね?その殿下が王家の方からのお声がけも無いのに先に発言をして礼を失するべきだったとおっしゃってます?」


頬に添えていた手を離し姿勢を正し直す、そして極上令嬢仮面を作成の上でお伺いをたてた。

難癖か?難癖なのか?あぁん?

こちとらこの6年季節毎のご挨拶の手紙とプレゼントとどうせされないエスコートの確認を毎回取り、そっちの誕生日パーティーには個別挨拶すらさせて貰えないのにプレゼント持参で欠かさず参加してんだぞ?

こっちはなぁ!家族にすら誕生日も祝われてないのに!!


「その様な礼を弁える気があったのか」


さも、今、初めて気付いたとでも、言わんばかりの!その発言と表情!

脳内でぶちっと盛大な音が響きわたった。


「なるほど。わたくしが、その程度の礼儀も弁えない者だと思っていらっしゃったから、自分も礼を尽くす必要は無いと思っていらっしゃったのですね?であれば今後もその様にしてくださればよろしいではないですか。

今更この様なお話はお互いに何の利にもなりませんわ。誰に何を言われて本日いらしたのか分かりませんが、今後は全て遠慮させていただきます。

今後は殿下のお考えの通りに季節のご挨拶も贈り物も全て見直させていただきますので、そんな礼儀も弁えない令嬢に殿下もお気遣いも歩み寄りもなさる必要ございませんわ。」


一気にまくしたてている間に馬車が止まる気配がしたが、最後まで言い切った。

僅かに目を開く殿下の表情が視界に入るが言い返してくるわけでも無さそうな様子にすぐに視線を外す。

業者がドアをノックするかいなかというタイミングで自分でドアを開き、飛び降りる様にして勝手に外へと出ると、そのまま教室へと向かった。


「・・・さっさと殿下とアリアの浮気報告をあげて、早急に婚約破棄にならないかな」



あんな男のせいで、うちの両親と弟の命が奪われるなんて、絶対に許さない。



学園は徒歩圏内

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