リーヤ口伝第六話
パンの入ったバッグを肩からかけて中央街を歩く。
少し遠回りにはなってしまうが子供達が笑っているところが見れるので俺はこの道が好きだ。
図書館の先の角を右に曲がると
「ミシタ技術支援・研究所」と書かれた小さな看板が吊るされているのが見えた。
「カーン、カーン、カーン」
玄関の右にあるボタンを押すと毎回この鐘の音が鳴る。ミシタさん曰く「声を張り上げるよりこっちの方が楽だろう」とのことだ。
「はーい、入っていーよー」
この人の家、「入りたい」と「入りたくない」が混ざって複雑な気持ちになるんだよなあ……。
「お邪魔しまーす…。」
うん、やっぱりきったねえ。
入って正面のキッチンやら食事用の机はまだマシ、
でも左側のリビングがマジ混沌。
あまりの汚さに早くも帰りたくなる。
そんなことを思い足が半歩下がった瞬間
「やあやあ我が助手くん、早速そこで話を聞こうか?」
伸びた髪の毛を後ろで束ね茶色の分厚めのコートを羽織りながらもよれよれのシャツを下に着ている女性、ミシタさんが、円盤に手すりがついたような変な浮く乗り物に乗って吹き抜けの2階から降りてきた。
はっきりいってこれ以外の服装なのを見たことがない。でもだからといってちゃんと洗っているのか、なんて怖くて聞けない。聞きたくもない。
目にかけていたルーペを額まで押し上げながら黒くなった皮の手袋でこちらの方にポンと手を置いてくる。
服汚れるからできればその手袋は外してほしいんだけどなあ………。
「そのバッグはどうしたんだい?」
「俺が昼ごはんこっちで食べるって伝え忘れて父さんが切っちゃったパンです。あと俺はあんたの助手じゃないです」
「まあまあ細かいことは気になさんな」
いや全然細かくねえし。
ミシタさんはくるりと振り返って机に向かう道を作っていく(といっても物を脇に寄せて隙間を作るだけだが)。
「さて、色々聞かせてもらおうか?
チャスジラライカについてあらいざらい。」
どこからか持ってきたペンと木炭、そして紙を用意して前のめりに聞いてきた。胸が見えそうになり気まずくなったので深く椅子に座り直し思い出すように上を向く。
そうして俺はチャスジラライカについてのことをできるだけつぶさに伝えた。




