リーヤ口伝第一話
この物語は語り部リーヤと一人の少年のお話
眩しいほどの陽光が差し込んでいる石畳の商店街には、甘く香ばしい香りをたたせている焼き鳥屋、冷たく扉が閉まっている鍛冶屋、カラフルなおもちゃを売り歩くおばさん。
みんな目に飛び込んでくるけどすぐに視界の端へと消えてゆく。肺を苦しくしながら、そんな通りを駆け抜ける。
「リーヤおじさん!」
目の前でベンチに腰掛けながら茶色いタレを口の周りにつけているそのおじさんは「リーヤおじさん」。
でもそれは本名ではないらしい。
彼と出会ったのはほんの昨日。
私の両親はレストランを経営しているが業績は良なく、お客さんも「レストランなのだからこれぐらい当然だろう」と言った態度で無愛想だった。
そんなときにうまいうまいと絶賛してくれたのがリーヤおじさんだった。
私はその人のことが気になって、親に軽く断りを入れると親の返事を待たずに家を飛び出した。
既に日が暮れかけていてリーヤおじさんは驚いた顔をしてすぐに「すぐに帰るんだよ。」と少し早口に話してくれた。
聞くと、リーヤおじさんが前にいた国は寒い地域だったので保存食が多く、あまりおいしくはなかったそうだ。
この国を出たことがない私は、他に何かないか、とせがんだ。
彼は少し考えた後、若い頃から冒険者だったことを教えてくれた。ふと目線を肌に移すと確かに傷が多かった。
もっと聞きたかったが、もう暗いから、明日の朝広場で待ってる、と言われてしまった。この日ほど時間の進みを憎んだことはないだろう。
そして帰宅しようとする間際に名前を聞いてなかったことを思い出して、
「おじさん名前なんてゆうの?」
と聞いた。するとおじさんはこう返した。
「君だけの『語りや』だから『リーヤ』でいいよ」
そうして今朝、どんな話をしてくれるのだろうというワクワクを胸に目覚めた。
「おじさんの冒険話早く教えてよ!」
「そうだねえ、どこから話したものか………。」
その間は私にとってはとても待ち遠しい時間だった。
「じゃあ、僕が冒険者になった理由から簡単に
話そうかな。」




