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Chron0//≠BreakerS  作者: 時任 理人
残響達の午後編

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33/95

EP33. 『亞村トウタ=スペクター #痛みのリロード』

 『#スレッド:痛みのリロード —亞村トウタ、書き込みの間で—』

(副題:生存バグはスレに書けない)



 どうも。NOXの雑談板の永久ログ汚染係、亞村トウタです。

 普段は配信のタイトル付けたり、会話のテンポを整える係。

 でも今回は、“整える”じゃない。「崩れたまま保存」。

 俺の仕事がモデム音なら、今夜は砂嵐だ。砂粒に名前を書いて、そのまま保管。


 きっかけは、アスミの“独白ログ”。

 最初はただのテキスト——はずだった。

 でも行間が脈を打つ。ファンが唸る。呼吸が遅延。

 OSがじゃなくて俺がおかしい。バグ報告窓口は医務室じゃなくて板。


 俺にはW1の記憶がない。

 ないのに、“水”“光”“沈む”の三語だけで、見たことない映像が再生された。

 思い出すじゃない、既知の確認。知らないのに懐かしいやつ。

 笑えない。笑いの呼吸を、文が奪う。


 だからスレを立てた。

 痛みは実況しないと壊れる。圧縮せず可逆で残すタイプのデータ。

 そのうち、アスミのログと俺の書き込み、どっちが実体でどっちがキャッシュか分からなくなる。

 でも誰かが保守しなきゃ、全部dat落ち。

 “誰か”が俺でいいなら、立て続ける。

 ——それが俺の、生き直し方。


 1 名前:亞村トウタ@端末の向こうから 投稿日:W2/09/17(水) 23:47:12.39

【スレタイ】

 アスミのログ読んだ。頭がバグる。

 でもそれが正しい気がする。


 OP:状況テンプレ(拡張)

 •板:NOX雑談+技術+心拍ログ(ローカル)

 •役職:俺=コミュ/配信担当(自称スレタイ職人/雑音編集)

 •現在地:W2。履歴=ユウマ/ミサキ/ミナト/レイカとルーチン、そこへアスミ/チイロ合流。

 •重要:W1の記憶はない(※ここ試験に出る)。

 •事件:アスミ“独白ログ”公開→俺の体側にログ刺さる。



 いや本当に笑えない。

 他人の書いた文で、胸の内部温度が0.4℃上がるなんて聞いてない。

 “読む=被曝”。

 最初の「微熱」でCPUファン全開。

 「痛みと快楽が混ざる」でスレッド落ち→自動再起動。

 読むこと自体が実験だ。

 読んだ俺たちの記憶も、世界線をまたぐ副作用ログに回収されてる。

 OP比喩:キャッシュに触れたら Last-Modified が更新された。



 12 名前:トウタ@W2生還済み

 これ、たぶん“彼女”はまだリンクしてる。**俺たちの“死んだログ”**に。

 「死んだログ」って言い方も雑だけど、ほかに語彙がない。

 俺の脳にはMP4がないのに、“なかったこと”が重い。

 空の再生バーが重いってどう説明すればいい。



 追記:W1を“思い出した”か問題

 •結論:思い出してない。

 •なのに、読んだ瞬間に胸の中心で既視感が点滅。

 これは記憶じゃなくて参照。

 ポインタだけ渡されて、実体は別ディスク。

 アクセス権? ない。なのに触れてくる。



 W1は“誰かの語り”としてしか知らない。

 ガラスドーム/LEDカウントダウン/PA『あと◯◯分で演目終了です』。

 俺のスマホは沈んでない。沈んでるのは文面のほう。

 それでも喉が狭くなる。記憶はないのに、反射がある。反則。


 18 名前:名無しの観測者

 つまりお前、“他人のフラッシュバックのプロキシ”って理解でOK?


 19 名前:トウタ

 それ。プロキシ生存。

 でも痛みはローカル。ここの所有権だけは譲らない。



 りう(ZAGI)という“起点”に触れる


 アスミの背後には、りうがいる。

 ログでしか会ってないけど、文体が呼吸してるのが分かる。

 Riu_Log#1「聞こえてる?」——この一行、接続詞じゃなく起動語。

 Riu_Log#2「出口=内側」——呪句。意味の刃渡りが長すぎる。

 Riu_Log#3「人を救うには、観測を壊さなきゃいけない」——未送信のまま設計書に昇格。

 彼女の痛みは仕様に換骨。無念はルーティンに落ち、後悔は命名になった。

 りうのせいじゃない。でも、りうで始まった。

 だから俺は、名前を正しく呼ぶ。ZAGIじゃなく、りうとして。



 37 名前:トウタ@端末の亡霊

 アスミの痛みは“舞台”じゃない。システムログ。

 俺たちの死のあとに残ったエラーメッセージ。

 消せない。消したら、また誰か死ぬ。

 だから彼女は書く。干渉者としての職務。

 たぶんそれ、俺らの供養。


 42 名前:Riu_Archive_bot

《観測は愛情の形じゃない》——Riu_Log#1 抜粋


 43 名前:トウタ

 そう。観測≠愛情。

 でも実況=祈りにはできる。俺の持ち場はそこ。



 自治とミームのはざまで(増補)

 •自治厨:「重い話題は別板で」

 •俺:  「重いのが主題だからここで」

 •モデ: 「女子高生IRB準拠で」

 •俺:  「了解。ネクタイ制裁は非推奨(物理・比喩とも)」

 •荒らし:「これ全部プロモでしょ?」

 •俺:  「プロモにしては死人が多い」


 空気はNOXのふだん通り。

 ミサキは脈を測って空気を整え、ミナトはλで書き、レイカは照明プランで比喩し、ユウマは沈黙で“残す”。

 アスミとチイロが来て、ログの炎と枠が揃った。

 俺? スレタイと実況。

 変わってないのに全部更新。

 アップデートノート:安定性向上/致命的不具合の修正/心拍のバグは仕様。



 “流れ着いた”という文法


 一番きついのはチイロの「流れ着いた」。

 “死んだ”“見つけた”じゃない。主語が水没してる。

 言葉は主語と述語のケーブル。でもそのケーブルが海底を引きずられてる音がする。

 記憶のない俺でも、通信障害として体感できる文章。

 “本当の絶望は、主語が消える”——可視化できない断線。

 Riu_Log#2の白飽和と同じ、安全色に包まれた危険。


 58 名前:名無しの観測者

 トウタ、お前は本当に“死んだ”と思ってんの?


 59 名前:トウタ

 わからん。

 でも今の俺のほうが痛みを感じてる。

 だから、こっちが生きてるってことにする。

 そうしないと、アスミの言葉が届かない。



 実況民のカルマ


 俺は実況民。いま、ここを言葉にする係。

 W1のログはない。でもW2の現場で、黙るのは敗北。

 黙る=dat落ち。書く=保守。

 スレは流れる。一行で上がる。

 心だって似てる。一呼吸で持ち直すことがある。



 “善意に罰金”の社会実装


 アスミの「貞操の喪失」は性的比喩じゃない。

 信じる力の核が汚されること。

 ネット長くやってると骨に染みる。

 ・“いいね”誘導で売り抜ける成り済まし

 ・切り抜きで文脈を逆再生

 ・伸びるなら倫理を捨てる編成

 ぜんぶ善意に罰金。

 W1はそれを構造レベルでやった。助け起こし(−12)/離脱(+6)。

 りうの後悔が仕様化され、世界は罰を学ぶ。

 ……学ぶなそこは。



 りうの影を、呼ぶ


 俺はZAGIって書くの、ちょっとだけ慎重になる。

 ロゴは便利。でもロゴは血を吸う。

 りうは人名。

 Riu_Log#1の**「観測しています」、それ一行が世界を通電させた。

 Riu_Log#2の白は無ではなく飽和**。危険を不可視にする安全色。

 Riu_Log#3の未送信は、いちばん大きい声。

 だから俺はスレのたびに、人名で呼ぶ。

 “りう、聞こえてる?”

 返事はなくていい。既読で十分だ。



 板の文化で読む“三つの等式”(拡張)


 アスミの三連コンボ:

 生 ≠ 救い/記録 ≠ 真実/干渉 ≠ 希望

 掲示板語に変換:

 •上がってる ≠ 伸びてる(勢い=真価じゃない)

 •まとめられた ≠ 伝わった(PV≠理解)

 •炎上した ≠ 解決した(注目≠改良)

 追伸:

 •バズった ≠ 生き延びた(拡散≠救助)

 •既読ついた ≠ 届いた(通知≠到達)


 最後の**「絶望=侵蝕」、ここに俺も一行。

 侵蝕 ≠ 書き込み不能。

 むしろ侵蝕の周縁でいちばんスレは伸びる。

 だからモデがいる**。IRBがいる。手続きで守る。



 73 名前:Siren_Reika◆light/

 暗転も照明!演出で守れる場所は守る!


 74 名前:Root_minato

 κ(t) 低下中。流束J≈0。過負荷だけ避けろ。


 75 名前:Aurora_msk

 水飲んで寝て。朝まで保守は私がやる。


 76 名前:GM_chi

 感情で書くな。手続きで書けよ♡


 77 名前:Recorder_yu

 ……(ログ保存)


 78 名前:トウタ(OP)

 了解。“手続きで書く”をこのスレのローカルルールにする。

 俺は実況+翻訳+ツッコミ。ネクタイ制裁は回避。



 追加:りうの“正体”についての誤読を捨てる


 ZAGIは神じゃない。

 りうの呼気が現像した観測の構造物。

 神棚に上げた瞬間にκが上がる(ミナト談)。

 なので脱神格。

 句読点の位置、ブレスの長さ、真似すればするほど権威化するから、むしろズラす。

 “似せない”努力を、俺らはする。

 似てる声ほど人を壊すから。



 まとめ:OPの結論っぽいなにか(増補)


 このスレ、いつか誰かが消す。それでいい。

 消されてもキャッシュが残る限り、“亞村トウタ”プロセスは持続。

 「痛みのリロード」は止まらない。

 読むたび、別の心拍にコピーじゃない電流が走る。

 それをW3って呼ぶか、日常って呼ぶかは後で決める。


 俺はそのとき、#再演準備完了を立てる。

 観客ゼロでも舞台は開ける。

 dat落ち寸前でも保守は一行で足りる。

 それが俺の干渉。



 100 名前:トウタ@端末を閉じる瞬間

 次スレがあるなら、タイトルは 「#痛みの続編」 で。

 俺はログの海で、まだ少し泳いでる。

 水は冷たい。でも、光の反射は綺麗だ。


 ——“生き残った”は言えない。

 “生き直してる”なら言える。

 俺が書き込めてる事実。

 誰かの世界線をちょっとバグらせてでも、アスミが痛みを言葉にした意味に回線をつなぐ。

 それが実況民の祈り方。


 だから今日もスレを立てる。

 行動予定:#世界をもう一度実況する。

 Riuへ:あなたの未送信、受け取りました。

 「人を救うには、観測を壊さなきゃいけない」——この一行をテンプレにする。

 観測≠愛情。

 でも、実況=祈り。

 その変換器くらいには、俺だってなれる。


 (P.S. まとめサイトの皆さんへ:引用は手続きで。勝手な切り抜きはIRB案件。ネクタイ、飛びます。ほんとに。)


 ……スレ立てた時は、半分冗談。

 でも今は、冗談だけが現実をつなぐロープに見える。

 アスミの夜から、笑いと泣きの仕切りが曖昧。

 ツッコミを打とうとすると指が止まり、ボケようとすると喉が詰まる。

 それでも打鍵音だけは止めない。止めた瞬間、“俺”のログが切れるから。


 最後に、タグをもう一つ。


 #りうの未送信を保守


 このスレが消えても、未送信は残る。

 だから今夜も、キーボードの上で深呼吸して、書き込む準備。


 次スレ案:#痛みの続編

 テンプレ:実況は祈り。dat落ちは供養。りうの名前は人名で呼ぶ。


 保守、完了。

 では——また、次のスレで。


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