地獄からの脱出
おそらく崖から落ちた。
ガラガラガラ!
グシャリ!
「???……よっこらせ」
地獄……そうだここは地獄だ。
『黒と赤しか色が無い』世界に肌色なのは全裸の私の妻と子どもたちだけだった。
等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱。
赤鬼と黒鬼が生き生きと罪人達を痛めつけている。
なぜ私たちはこんな所に……。
何とか生者の世界に戻る方法は無いのか?
家族は不安そうにしている。
私が諦めてどうする。
なんとか鬼達に見つからぬように出口を探すんだ。
例え何百年かかろうと。
、
数年は私が出口を探し、家族は岩かげに隠れる日々が続いた。
地獄に食料などあるはずがない。
当然飢えの苦しみに終わりもないので私は
『妻を切り刻んだ』。
そしてその肉を子供たちに食わせた。
すまない。
私には使命がある。子供たちには未来がある。
お前しかいないんだよ。
ここでは苦しみに終わりは無い。
妻は何度も再生し、何度も切り刻まれる苦痛を味わう。
苦しくない時間は無いので叫び続ける。
これでは子供たちが怖がる。
私は泣く泣く妻を鬼の通り道に棄てた。
鬼達は妻に群がり犯し、痛めつけ◯◯を浴びせた。
妻よ。お前の犠牲は無駄にしない。
子供たちは任せろ。
子供たちは人肉を食ったので、常に腹を壊し脱◯し喉が渇いていた。
終わらない苦痛。
終わらせるにはここから出るしか無いんだよ。
いつまでも隠れていても仕方がない。
一緒に出口を探そう。
、
私は老婆になった娘を犯し、子を産ませた。
元気な男の子だった。が、取り出した瞬間に赤ん坊の身体に鬼の顔と云う奇妙な生物になってしまった。
何百年経っても出口は見つからない。
老いは終わらないのに苦しみは続く。
未来に。若さに賭けるしか無かったんだが。
こんな失敗に終わるとはな……。
娘は出産の苦しみが永遠に続くようになってしまったので私は泣く泣く鬼の通り道に娘を棄てた。
妻の時と同じく鬼達は娘を苦しめたので私は久しぶりに妻の事を思い出してしまった。
「……親子だなぁ」
、
どれだけの時間が経った?
もう家族の中で理性を保っているのは私だけだった。
どれが私の子供だったっけ?
発狂し、全裸で四つん這いになった子供たちが前の子供の尻の穴に鼻を突っ込み列になって1000℃を超える熱い岩の上を前進している。
子供達の列は地獄の地平線まで続いていた。
◯◯と血と焼ける肉の香り。
臭い。
膝から焼け、削れ、やがて肉体が焼け消え、また再生する子供達。
知ってはいたが。
「ここは地獄だ」
。
「うぃ〜!」
「……」
とうとう鬼に見つかってしまった。
もういい。好きにしてくれ。
「ひっさしぶりぃ〜!2分ぶりじゃね〜?」
ひさしぶり?2分ぶり?私に鬼の知り合いなんて。
「崖から落ちた時は心配したのよ〜ん?」
崖?
『ガラガラガラ!グシャリ!』
「……思い出せない」
「何?キオクソーシツとかベタなこと言わないでねん?」
記憶喪失?
私はふと自分の手を見た。
真っ赤な腕。黒く鋭く長い爪。
肌色なんてどこにも無かった。
はじめから鬼だったのか生きながら鬼になったのか。
もうどうでもいい。
早く次の死者が来ないかな。