表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/27

終幕 移りゆく家族

「……ソウカさん、今日こそ決めましょう」

「私とあなた」

「どちらが……妹になるかを!」


***


——ソウカがアルターファミリアを訪れ、数日が経過していた。


「おはようスレンちゃん」

「昨日言われた依頼、俺が行ってくるよ」

「しばらく船を借りるから、姉さんたちにはそう伝えておいてくれ」

「分かりました、お気を付けて!」

ガルムを送り出すと、スレンは再び受付の整理を始める。

「……」

その様子をソウカは静かに眺めていた。

「ソウカ様、おはようございます」

背後からネファリスが現れる。

「あ、ネファリスさん。おはようございます」

「こんなところで、いかがなさいましたか?」

「あっ……それは……」

「私、このまま何もしなくていいのかなと思いまして」

「お姉ちゃんと過ごせるのは嬉しいです」

「でも私だけ、お客さんみたいな扱いで……」

「なんというか……落ち着かないんです」

「ネファリスさん。私にも……お手伝いできることはありませんか?」

「それならいい方法がありますよ!」

受付の中から、スレンがこちらに声をかけた。

「ソウカさんも一緒に働きましょう!実はここ、人手不足で……」

「ソウカさんがお手伝いしてくれるなら、私、とても助かります!」

「それは良いですね。私も歓迎いたします」

「私が……?」

受付に立つ自分の姿を想像する。

「……」

「分かりました。皆さんがよければ、お願いします」

「じゃあ決まりです!早速着替えましょう!」

「ネファリス、受付をお願いできる?」

「かしこまりました、スレン様」

「さあさあソウカさん、こちらへ!」

「え?きょ、今日からですか?」

「もちろんです!早く慣れた方がいいですからね!行きましょう!」

半ば強引に手を引かれ、ソウカは奥の部屋へと入っていった。

「実はサラカさんの制服も用意してたんですけど、着る機会が無くて……」

「サラカさんはどちらかというと、傭兵業に引っ張りだこですから」

「この制服、ソウカさんに合いますかね?」

緑色の制服を取り出しソウカに差し出す。

「可愛い色……一度着てみますね」

制服のサイズはソウカにぴったりだった。

「いいですね!色もソウカさんに合ってます!」

「はい、よかったです」

「では、これからやることを教えます!ついてきてください!」


***


「おっ、嬢ちゃんたちおはよう」

「なんだ?ソウカもここで働くことになったのか?」

受付に戻ると、ブラッツとセルディスが依頼書を確認していた。

「そうなんです!ここは人手が足りませんし、お手伝いしてくれると言ってくれたので」

「ソウカさんの制服、似合ってますよね?」

「ああ、色味も嬢ちゃんに合ってるぞ」

「そうだな。だが俺は、出来れば団長が着ているところを見たかったな」

「セルディスさん、ソウカさんの困った顔が見たいだけしょ?」

「ははっ、バレているか。流石はスレン」

「しかし、このギルドはますます評判になるんじゃないか?」

「美人な二人が受付を担当していると聞いたら、傭兵だけじゃなくても人が訪れるかもしれない」

「そんな、美人なんて……」

スレンが思わず頬を押さえる。

「……セルディス、まさか嬢ちゃんたちを口説いてるのか?」

「そのつもりはなかったが……まあ、そう思ってもらっても構わない」

「やめとけ。お前と嬢ちゃんたちじゃ何歳離れてんだ」

「ブラッツ程じゃ無いだろ」

「俺はまだ三十一だ。まだまだ若いだろ」

「そういやスレンたちはいくつなんだ?団長の歳は前に聞いた覚えはあるが」

「女性にそれを聞くのかよ」

「団長は答えてくれたぞ?」

「そりゃ、前の団長なら歳なんて気にしないだろうが……」

「大丈夫ですよ、ブラッツさん」

「私は二十一歳です。ソウカさんの年齢も聞いて良いですか?」

「私も……同じ歳です」

「そうなんですか!?」

「へぇ、同い年とは。そんな偶然あるもんなんだな」

「……なるほど、それなら困ったことがあるな」

「困ったことですか?」

「ああ」

「スレンとソウカ、どっちが姉でどっちが妹なんだ?」

「!」

セルディスの言葉に、スレンの動きが止まる。

「どっちも団長の妹ってことでいいんじゃないのか?」

「団長の前ならそれでいいだろうな」

「だが、二人の間ならどうする?」

「そんな、私はいままで通りで――」

「……いや、それはだめです!」

突然、スレンが受付に身を乗り出す。

「す、スレンさん?」

「決めましょう、どちらがお姉ちゃんか!」

「いや……私は……」

「ははっ、スレンはこういう時に強引だな。面白くなりそうだ」

「セルディス、お前なぁ……」

「ブラッツ、そろそろ時間だ。俺たちは依頼者に会ってくるから、帰って来るまでに決めておいてくれよ」

「はぁ、悪いな嬢ちゃんたち。あんまり本気にしなくていいからな?」

「いえ、任せてください!必ず決めてみせますから!」

「ははっ、楽しみにしてるぞ」 

セルディスが受付を後にすると、ブラッツは呆れた様子でその後をついて行った。

「……」

(大変なことになっちゃった……)


***


「まったくセルディスは……」

「スレンも、ソウカのことを困らせないで」

日が暮れた部屋の中で、三人は顔を合わせていた。

「別にどっちが姉でどっちが妹なんてどうでもいいでしょ?」

「だめです!私もお姉ちゃんって呼んでもらいたいので!」

「……」

「スレン……お姉ちゃん?」

「!」

突然名前を呼ばれ動揺する。

「私はいいですよ?スレンさんがお姉ちゃんでも……」

「その大人の対応……認められません!」

「ええ……どっちがいいのよ……」

「どっちが相応しいか、ここで決め――」

「もう、大人しくして」

「!」

サラカがスレンを抱きしめる。

「あなたたちはあたしの妹。それでいいでしょ?」

「う、うぅ……お姉ちゃん……」

「……」

(スレンさん……ずるい……)

「え?ソウカ?」

サラカの手を掴む。

「……スレンさんの気持ち、分かった気がします」

「え?」

「ずるいです。お姉ちゃんは私のものです。」

サラカの手を引くソウカ。

「ちょっと、ソウカまでやめてよ」

「お姉ちゃんの妹は私」

「だからスレンさんは……私の妹になってください!」

「やる気ですねソウカさん……!それなら勝負です!」

「どっちがお姉ちゃんになるか!」

「はあ……勘弁して……」

二人から手を引かれ、サラカはただ呆れていた。


***


「おや、おはようございます」

「スレン様もソウカ様もお早いですね」

翌朝、食堂を訪れたネファリスは、食事の支度をする二人の姿を目にした。

「おはようネファリス!」

「ネファリスさん、おはようございます」

「ネファリスはゆっくりしてていいよ!朝ごはんの準備は私に任せて!」

「私もお手伝いしますから、ネファリスさんは休んでいて下さい」

「お二人とも、ありがとうございます」

「では少しだけ、自室で体を休めておきます」

ネファリスは小さくお辞儀をすると、食堂を後にする。

「それにしても決まるのかねぇ」

「この声は……」

食堂を出ると、ブラッツたちの話し声が聞こえてきた。

「決まる?何がですかい?」

「嬢ちゃんと団長の妹、どっちが姉なのかって」

「セルディスがあんなこと言うから、嬢ちゃんたち張り切ってるぜ?」

「はは、本当にそうだな。これは面白いことになりそうだ」

「お前なぁ……」

「ガルム、お前はどっちの方が姉っぽい思う?」

「俺ですかい?うーん……」

「俺はやっぱり、ソウカちゃんの方が姉らしいと思いやすね」

「なんだ、お前もそう思うのか」

「兄貴もですかい?」

「ああ」

「団長の妹ってのもあるが、ソウカはスレンよりも落ち着きがある」

「スレンは姉というより、周りの人間を明るくする末っ子って感じだからな」

「姉らしいかと言われれば、少し違うかもしれない」

「嬢ちゃんには悪いがそうかもしれないな」

「だとすると……今頃団長へのアピールが始まってるんじゃないか?」

「面白そうだな。ちょっと様子を見にいくか」

ブラッツたちは立ち上がり、食堂へと向かっていく。

「……」

(スレン様とソウカ様、お二人の中で姉を決める?)

(私には隠して、またスレン様たちだけで……)

――ドクンッ

「!」

(――ほう、面白いではないか)

(アカメ……?)

(――しばらく、体を借りるぞ、ネファリス)

(だめです、今日は仕事が……)

(――うるさい)

「くっ……」

(――仕事なら、私に任せておけ)

(何を……考えて……)

(……あぁ)

ネファリス意識はそのまま落ちていく。

力が抜け、そのまま壁にもたれかかった。

「……」

「――姉を決める、戦いか」

「――私も、楽しませてもらおう」

壁に手をつき立ち上がると、アカメ食堂に向かって歩き始めた。


***


「あ、ネファリス……って」

「アカメ?ネファリスはどうしたの?」

「ネファリスさん、やることがあるって言っていませんでしたか?」

「――言っていたな。このままでは、全て片付かないだろう」

「それなら、どうして出てきたの?」

「――あいつが無理をすれば、私にも負担がかかる」

「――私の身にも、なってみろ。何もしていないのに、一向に疲れが取れない」

「まあ、それは確かに……」

「――そうだろう?だから、困っているのだ」

「――それはもう……」

「――妹の手を、借りたいくらいには」

「!」

「――さて、どこかにいないものか」

「……」

(アカメ、まさか気づいて……)

「分かりましたアカメさん。私がお手伝いしますよ」

「――さすがはソウカだ。サラカに似て、姉らしいな」

「!」

「アカメ、私も手伝うから!」

「掃除でも買い出しでも任せてよ!」

「――スレンも、手伝ってくれるか」

「――それなら、頼むとしようか……ふっ」

「……」

(何を考えてるのか分からないけど、今はアカメの言うことを聞こう)

(ソウカさんに負けないためにも……)

(お姉ちゃんは……私だから!)


***


「アカメさん、こちらの掃除は終わりました」

「――早かったな。助かったぞ」

「王様のところにいた時は、よくお城の掃除をしてましたから」

「まだ一ヶ月も経ってないのに……なんだか懐かしいです」

「――帰りたいと、思うか?」

「……王様には申し訳ないですが、私はここにいたいと思っています」

「ここにはお姉ちゃんがいるし、皆さん私に優しく接してくれるので」

「とても……居心地が良いです」

「――それは、よかったな」

「――やはり……お前の方が、姉らしいか」

「え?」

「アカメ、戻ったよ!」

廊下の先からスレンが走ってくる。

(――先ほどの話、スレンには秘密だ)

(あ……分かりました)

アカメは静かに耳打ちした。

「ソウカさん、随分早いですね……」

「まさか、アカメに手伝ってもらったとか……!」

「――私は何も、していないぞ」

「――ソウカは、優秀だな」

「ううっ、まずい。このままじゃ……」

「三人とも何してるの?」

「!」

背後の声に振り返ると、サラカとティーナが歩いて来ていた。

「お、お姉ちゃんにティーナさん!」

「あれ?ネファリスさん、アカメさんになってますね」

「アカメ、またネファリスを休ませてるの?」

「――そうだ。二人に手伝って、もらっていた」

「――サラカがいるなら、ちょうどいい」

「何か用?」

「――手伝って、欲しい事はないか?」

「――頼れる……妹として、な」

「え?何でアカメが――」

言いかけたサラカに対して、アカメは口の前で人差し指を立てる。

その様子を見ていたティーナは、状況が理解できない様子だった。

「皆さん、何かされてるんですか?」

「――まあ、な」

「――私たちは、邪魔になる。ティーナ、向こうへ行くぞ」

「えっ?」

「――お前にも、教えてやろう」

「あっ、ちょっと!アカメさん押さないで下さい……っ!」

二人の背中を、三人は見送っていた。

「……お姉ちゃん」

「な、なに?」

「私……何でもするから!」

スレンがサラカの手を掴む。

「ええ……そう言われても」

「あっ、いた!サラカさん!」

一人の傭兵が、サラカのもとへ走ってくる。

「取り込み中のところすみません。実はひとつ依頼が来てまして……」

「依頼?」

「実は近くの海域で、海賊が暴れてるみたいなんです」

「商人の船を狙っては略奪を繰り返して……大変なんですよ」

「ガルムはどうしたの?」

「ガルムさんは、昨日船を借りるって言って出かけて行ったよ」

「そうなんです。本来ならガルムさんに頼むはずだったのですが……」

「それなら仕方ないか」

「二人ともごめん。あたしは行ってくる」

「手伝いはまた今度ね」

「分かった、いってらっしゃい」

「……お姉ちゃん、気をつけてね」

サラカは傭兵とともにその場を後にする。

「……」

「スレンさん?」

「……ソウカさん、気付きましたか?」

「え?」

「ソウカさんを見つめるお姉ちゃんの目……」

「私も……あんなふうに見られたいです」

「あんなふう……?」

「……ソウカさんを見る目、すごく優しかったです!」

「やっぱり血の繋がってる妹だから、私なんかじゃ……」

「――それなら、良い方法があるぞ」

「!」

二人の後ろから、二人アカメとティーナが姿を現した。

「スレンさん、私に任せて下さい!」

「ティーナさん?」

「こういう時は、サラカさんにプレゼントを贈ればいいんです!」

「プレゼント……ですか?」

「はい!」

「妹からの贈り物なんて、嬉しくないはずがありません!」

「サラカさんもきっと喜んでくれます!」

「ティーナさん……」

「確かに、それは良い考えですね!」

「――ならば、こうすればいい」

「――サラカがより、喜んだ顔を見せた方が、姉に相応しい」

「つまり……勝負ですね、ソウカさん」

「しょ、勝負なんですか?」

「もちろんです!」

「こ、困ったな……」

「――受付は、ティーナに任せておけ」

「え?ネファリスさんには戻らないんですか?」

「――ああ。最後まで、私が見届けるからな」

「ネファリスさん、寂しがってません?」

「――気にしなくていい」

「――この方が、面白くなるからな」

「……?」

「ティーナさんお願いしますね!」

「私、必ず勝ってみせます!」

そう言うとスレンは、城の外へと走っていった。

「……」

「お姉ちゃんが、喜ぶもの……」


***


スレンの背中を見送った後。

残されたソウカは、一人庭園の椅子に腰掛けていた。

「プレゼントか……」

(お姉ちゃんは、何が好きだったかな……)

あたりを見渡すソウカの目には、庭園に咲いた花が目に入っていた。

「綺麗な花……」

(そういえば私たちの名前って、花の名前から付けられたんだっけ……)

(サラカとソウカ、二人で一つの花として……)

(ずっと一緒に……いられるように……)

思わず表情が曇る。

(だめだめ、今はプレゼントのことを考えてるのに……)

(暗い気持ちになったら、お姉ちゃんは喜んでくれない)

(でも……)

「はぁ……決められないや」

背もたれに体を預け、ソウカは思わず空を見上げた。

「お姉ちゃんが喜んでたものって、何だっけな……」

目を瞑り、サラカと過ごした時間を思い返す。

二人で街へ出かけた日。

二人で綺麗な花を見つけた日。

二人で美味しいものを食べた日。

そして、二人が離れ離れになった日。

「……」

――ソウカさんを見る目、すごく優しかったです!

スレンの言葉が頭をよぎる。

「……お姉ちゃん」

(お姉ちゃんと一緒にいられることが、私にとって……とても嬉しいこと)

(きっと……お姉ちゃんも……)

「……」

(ずるいかな、私)

ゆっくりと立ち上がり、静かに目を開ける。

(でも……これだけは……)

「自分に……嘘をつけない」


***


――その日の夜。

依頼を終えたサラカがギルドへ帰ってくる。

「ちょっと、みんなで押しかけてきて何?」

サラカが部屋を訪れたスレンとソウカ。

そんな二人の背後には、静かに見守るアカメとティーナの姿もあった。

「お姉ちゃんに、受け取って欲しいものがあるの!私とソウカさんから!」

「え?」

「まずは私から!いいですか?ソウカさん」

「……はい」

「ふふっ、驚かないでくださいね!」

自信満々に言うと、スレンは一つの箱を取り出す。

その中には、スレンと同じ髪色の薔薇が入っていた。

「凄い……青い薔薇なんて初めて見た」

目を丸くして驚くサラカ。

「綺麗でしょ?」

「うん。とても綺麗」

「でも、これをあたしに?」

「うん!」

「お姉ちゃんにはいつもお世話になってるから、そのお礼!」

「ありがとうスレン。嬉しい」

そう言うサラカは優しい笑みを浮かべていた。

(ふふっ……これは勝った……!)

スレンは心の中でそう思っていた。

「……お姉ちゃん、私からも受け取って欲しいものがあるの」

そう言うと、ソウカは一歩前に踏み出した。

「私……嬉しかったんだ。お姉ちゃんとまた一緒に暮らせることが」

「だからお姉ちゃんに喜んでもらいたいと思って、色々考えた」

「お姉ちゃんが好きだった花のことも、お母さんが作ってくれたお菓子のことも」

「でも私は……決められなかった」

「だって私にとって、お姉ちゃんといることが一番嬉しいから」

「ソウカ……」

「だからごめんなさい。私、何も用意してないんだ」

「でも……その代わりに、贈るものを決めたの」

ソウカは静かにサラカに歩み寄ると、そのままサラカを抱きしめた。

「二度とお姉ちゃんと離れ離れにならない」

「贈りものは、私じゃだめかな……?」

「!」

ソウカの言葉を聞き、一同が驚愕する。

「――ほう、これは……」

「ソ、ソウカさん?」

「……」

「そう言ってくれて嬉しいよ」

「確かに、ソウカが今ここにいること」

「それがあたしにとって……一番大切かも」

「そっ……」

「スレンさん?」

「その手が……っ!」

膝から崩れ落ちるスレンを横目に、サラカはソウカの頭を撫でていた。

「もちろん、スレンのプレゼントも嬉しかったよ」

「こんなに綺麗な青い薔薇は見たことない。大切に飾らせてもらうわね」

「ううっ……ありがとうお姉ちゃん……」

「――ふっ。面白いものを、見せてもらったぞ」

三人の元へ、アカメがゆっくりと歩み寄ってくる。

「――姉は、ソウカで決まりだな」

「アカメ……やっぱりあんたが黒幕だったのね」

「――まあ、良いではないか」

「――おかげで二人の、意外な一面も見られただろう」

「まあ、それはそうだけどさ」


「やっぱり私は、妹なんですね……薄々気付いてました……」

「だから負けないように頑張ったのに……悔しいです……」

「スレンさん……」

座り込むスレンに、そうかは手を差し伸べる。

「ありがとうございます。良い機会を作ってくださって」

「ですが……勝負は勝負です」

「これからは私のことも、お姉ちゃんって呼んでくださいね?」

「うう……ソウカ、お姉ちゃん……」

スレンは手を取り立ち上がると、そのままソウカのに抱き寄せられる。

「ソ、ソウカさん?」

「お姉ちゃん、だよ?」

「お、お姉ちゃん」

「うん。いい子だね」

スレンの頭を優しく撫でる。

「……私のこと、妹じゃなくて子供扱いしてませんか?」

「してないよ?ふふっ」


「まったくソウカったら……」

「私の知らないところで、こんなことが起こってたなんて」

「アカメさん、教えていただきありがとうございます」

「――なに、気にすることはない」

「――私もただ、聞いた話だったからな」

「――知るものが多ければ、それだけ面白くなるだろう?」

「アカメ、意外とこういうこと好きだよね」

「――こいつのやってることは、面白みが無いからな」

「――共存すること、選んだのはこいつだ」

「――私も少しは、楽しむ権利がある。それに……」

「――面白くなるのは、ここからだ」

「え?」

「――こいつのこと、頼んだぞ」

そう言い残し、アカメが目を瞑る。


「……スレン様」

「え?」

「随分と……お楽しみでしたね」


そこには意識を取り戻したネファリスがたっていた。

「私のことを差し置いて……サラカ様のことをばかり……」

「それに……私一人が蚊帳の外……」

握りしめたその手には、側から見てわかるほどに力がこもっていた。

「ね、ネファリス……?怒ってる……?」

「……いいえ、怒っていません」

「この感情は……以前学びましたので」

そう言うとネファリスは、スレンの方へ歩み寄る。

思わず後ずさるスレンだったが、徐々に部屋の隅へと追い詰められていった。

「……スレン様、なぜ逃げるのですか?」

「に、逃げて無いよ?」

そう言いながらも後ずさるスレンは、いつのまにか壁際まで追い詰められていた。

「……もう逃げられませんよ」

「ね、ネファリス……?なにを……」

「今まで、私のことを放っておいた分です」

「!」

そう言うとネファリス、スレンを抱き抱える。

「ちょ、ちょっと!ネファリス!」

「私と生きてと仰ったのはスレン様です」

「それなのに、スレン様はサラカ様のことばかり……」

「私にも、構ってくださって良いのではありませんか?」

「ネファリス、これは事情があって……!」

「承知しております。アカメに全てを見せていただきましたので」

「ですが……それとこれとは話が別です」

「今夜は離しませんから、覚悟して下さい」

「ご、ごめんってネファリス!謝るから下ろして!」

「だめです」

「そ、そんな……!」

「お、お姉ちゃん!ティーナさん!助けて!!」

三人に手を伸ばすスレン。

「はい、助けて差し上げますよ」

「私も、スレン様のお姉ちゃんですから」

「ち、ちがう!ネファリスじゃない!」

ネファリスはそのまま振り返り、ドアノブに手をかける。

「力強……!?ふり解けない……っ!?」

「みんな、助けて……っ!」

「行きましょう、スレン様」

「ああぁぁっ!!」

ネファリスに抱えられたまま、スレンは部屋を出ていった。

その様子を、三人は呆然と見つめていた。

「……ふふっ」

「まったく……スレンは騒がしいわね」

「うん、ふふっ」

顔を見合わせて二人は笑っていた。

「私、少し様子を見てきますね」

「お二人とも、あとはごゆっくりなさってください」

そう言うとティーナは部屋を出ていった。


「……ふぅ、疲れた」

二人になり、思わずベッドに倒れ込むサラカ。

「お姉ちゃん、お疲れ様」

「ソウカ……びっくりしたよ」

「まさかあなた自身が贈りものだなんて」

「私も考えたんだよ?でも……何も思いつかなかった」

「だからお姉ちゃんと一緒にいたいって……そう思っただけ」

「……ありがと」

「でもソウカ、これから大変になるよ」

「スレンの甘えたがりは凄いんだから」

「うん、見てて分かった」

「でも大丈夫だよ、お姉ちゃん。だって……」

「私はもう、スレンのお姉ちゃんだからね」


どこか誇らしげに、ソウカはそう言うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ