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53話 気が早いんじゃないでしょうか?

梢ちゃんの視点です。

 立花さんが私に主役を任せる提案は予想済みの事でした。

 最悪の場合として私が舞台に立つ。それができれば劇自体を取りやめる事は無いと木野村から聞かされていました。

 まさかたった一日でここまで最悪の状況に近づいてしまうとは私も思っていませんでした。

 けれど木野村は違ったようです。

 お昼休みの時に木野村はさくさくとこの後の行動を予定していきました。

 返事は明日ですが、私が主役を引き受ける事。

 鼓は演劇部部長の指示に従う事。

 ざっくりそんな風に決まりました。

「まっ、どうにもならないって時は俺に相談して」

 以前の私なら笑って重要な事を言う木野村に何かしら噛み付いていたでしょう。

 けれど今は、本当に「どうにもならない」事になったら木野村がなんとかしてくれる。

 そんな風に信頼できるようになったのが本当に信じられません。私自身、驚きです。


「山城、大丈夫か?」

「えっ?何ですか、鼓?」

「だって、主役を引き受ける訳だし」

 私の沈黙をそんな風に受け取っていたなんて。

 しかし、木野村を素直に頼れる事を感慨深く思っていたなんて言える事ではありません!

「…私なりに力を尽くしてみようと思います」

「山城なら大丈夫だよ」

 優しく笑う鼓の顔を私は直視できす、俯いてしまいました。

 鼓は何も知らなくて、本当に私の事を心配してくれて、私がある程度覚悟を決めている事を話せなくて。

 罪悪感で鼓の顔が見れませんでした。

 今更です。私は今更、気がつきました。鼓に初めて隠し事をしています。

「ほらっ、朝の練習の時だって凄かったし。立花さんから直々にお願いしてきたんだから山城は自信持って大丈夫だって」

 俯く私に、焦ったように言葉をかけてくれる鼓はどこまでも優しくて。

 私はただ「ありがとう」と呟く事しかできませんでした。


 優しさがこんなにも心苦しくさせるなんて、私は知りませんでした。





 気持ちを切り替えて、午後の練習に臨もうと立花さんの所へ向かいました。

 しかし、午後の時間の使い方は私の予想を超えるモノでした。


 私はある個室で4人の女性に囲まれていました。

 ある個室というのは演劇部の衣装・小道具部屋で、4人の女性は立花さんをはじめとする演劇部の衣装さん。今は人数が少ないのでそれぞれ他に照明や音響など兼任しているみたいです。

「どう立花?山城さんは細いから後ろつめればこのドレス大丈夫だと思うけど」

「うん、丈も大丈夫みたいだし。裾を直すよりつめた方が早いね」

 私に色とりどりの衣装を合わせながら凄い勢いで話が進んでいきます。

 衣装ケースやハンガーラックにかかった衣装。色とりどりのカラーボックスがよくぞまぁここまで詰め込んだと感心するほどに部屋の中に入ってます。

 人が4人立つのが精一杯なくらいです。ええ、本当いっぱいいっぱいです。

 パスルのように詰め込んだ技術もすごいですけど、そこから次々と衣装や小道具を探し当ててくる4人は本当に凄いです。ここに入ってる物全てを覚えているんでしょうか?


「でもメインは男装ですよね〜。山城さんが令嬢だったら着飾りたい放題なんですけどね〜」

「あのっ!」

「あっ、山城さんも希望ある?男装だからどうしてもさらしは巻かないとダメだと思うんだけど」

「そうではなくてっ!気が早いんじゃないでしょうか?」

 キョトンとして4人が私の言葉を聞いていました。

 それでも、動く手を止めない辺りは流石「苛烈の演劇部」だと思います。

 いえ、感心している場合ではありません。

 話を聞くかぎり、4人はどのように考えても"私の衣装"を選んでいます。

 しかもかなりノリ気です。

「あの、私が返事をするのは明日のはずですよね、立花さん」

「いいの、どのみち衣装は出してほつれとか直さないといけないし…山城さんって裁縫できる?」

「苦手ではありませんが…」

「じゃあ、山城さんは裁縫の方を手伝ってね。…それに今日はもう稽古できないしね」

 その理由は説明されなくても分かります。

 主役をやるかもしれない人間が戻ってくる人の為に稽古風景を撮影するなんて、場が混乱するだけです。

 私だけでなく、他の役者の方も集中できないでしょうし。

「今日のところは山城さんの衣装は仮決め。一応ね。これから他の役者の分を掘り出していくから」

「山城さんをここに連れてきたのは色々着せてみたいって私たちが立花に言ったからなんだけどね」

 衣装の先輩さんが全く関係無いことを言っています。

 他の方も頷いて同意を示しています。なぜでしょう、一瞬"宮下さん"を思い出してしましました。


「やっぱり、美人って何着ても似合うよね」

 考え深げに立花さんはある服を私に合わせました。


 立花さん、そんな白のフリフリドレスが私に似合う訳ありません!!


 なんともない言葉を思っていても声に出せなかったのは、

 その場の雰囲気に飲み込まれていたせいなのか。

 それとも鼓に隠し事をしているせいなのか。


 私は数多な原因が考えられる中。私は"分からない"と結論づけました。

 無意識的に考えるのを止めました。


 ただ、その夜。

「ハキハキと自分の言葉を話せていた私はどこへ行ってしまったのでしょう」

 と誰にも相談できない事をひっそりと考える事になりました。


色々ぶち込もうとしたらこんな感じになってしまいました。

一気に人物が増えて難しい(´-ω-`;)ゞポリポリ

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