50話 演劇部主要メンバー
宮下さんの承諾をもらい。俺たちは博樹さんの車で大学に向かっていた。
なんでもこれから演劇部の人達と顔合わせらしい。
なんてタイトなスケジュールだろう。
宮下さんの説得の後に予定を詰め込むなんて。
しかも家から出る時、宮下さんに「鼓君、ちゃんと梢ちゃんを守ってね!」って見送られたし。
守るって何から!どうやって!
にこやかに笑う宮下さんに反論一つできず、小声で「…できる限り、努力します」と言うのが精一杯だった。
「鼓君」
運転している博樹さんから後ろに座っている俺に何かが投げられた。(ちなみに山城は博樹さんの真後ろに座っている)
投げられた何かはケータイだった。
「もうすぐ鳴るから出て」
「はぁ?」
「なんでわかるんですか」と言う間もなく投げられたケータイが鳴った。
「もしもしっ」
「あら、木野村君の声じゃないわね」
電話の相手は若い女性みたいだ。
「今、運転中なんです。あの、俺は…」
「あなた木野村君の後輩でしょう。話は聞いてるわ。私は演劇部の部長よ。
それじゃあ、木野村君に食堂に来てくれるように伝えてくれる?」
「はい、わかりました」
「またね、後輩君」
ケータイを切った。ちょうど信号待ちだったからケータイを博樹さんに返した。
「なんで電話がかかってくるって分かったんですか?」
時間指定してたくらいピッタリにケータイ鳴ったし。
「なんとなく分かる時ってない?」
質問に質問で返すのはダメだと思う。あれだ、特に説明する理由はないんだな。
「えっと、演劇部の部長さんが食堂に来てくれって言ってました」
「あ〜、やっぱり部室は片付かなかったかぁ」
なんとくなくは分かってたよ。みたいな雰囲気で博樹さんが言う。
なんで、よその部室の状態まで把握してんだこの人。
「博樹さんのケータイって凄そうですね」
「ん?なにが」
「いろんな部長のアドレスが入ってそうで」
「いろんなって…うちの大学のサークルの部長のアドレスなら全部入ってるよ」
「何だ!その個人情報の塊!!」
「鼓、うっかり心の声が出てますよ」
「おっと、すみません」
「ちなみに野球部のコーチの番号も入ってるよ」
コーチ!!!
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大学の食堂には2人座っていた。
「ごめんなさいね、いきなり呼び出す形になっちゃって」
そう言ったのは清楚系お嬢様。ゆるふわパーマにフリルたっぷり半袖ブラウスは、野球を見に行った時の山城みたいだった。
「私は、演劇部の部長の柿沼です。こっちは2年の立花さん。今回の脚本と演出を担当してくれてるわ」
そう紹介されて頭を下げた人は一瞬少年だと思った。
男の子かと思うほどベリーショートな髪型と飾り気の無いシンプルなTシャツにジーパンという姿。
しかも顔には分厚い黒フチ眼鏡。
「立花です」
声を聞いて、やっと女の子だとわかった。
そかれら簡単な自己紹介と正式な依頼内容を聞いた。
「ごめんなさいね。本当は部室に呼びたかったけど、今すごい状態だから」
「すごいって…」
「火の車みたいになってますから」
「あの、そんな状態で練習できるんですか?」
「大丈夫です。明日から教室が借りられますから」
「これから1週間よろしくお願いします」
それそれに頭を下げて食堂を出た。
演劇部の忙しさは尋常じゃなく、二人はすぐに戻らなければいけなかった。
いつもなら山城が「そんなに大変なら今からお手伝いします」って言いそうだけど。言わない。
なんでだろう?
食堂の前に男が立っていた。博樹さんに似た好青年が立花さんに近づいてくる。
「胡桃子、話がある」
「秋沢っ」
立花さんは助けを求めるように部長さんを見た。
「秋沢が脚本の事で話があるみたいよ。私は3人を見送ってから戻るから、先に戻ってて」
「……」
「返事は?」
「…はい」
立花さんの返事を聞くや否や秋沢という人は黙って立花さんの手を引いて歩いていってしまった。
…盗み聞きじゃないけど、会話から察するに今の秋沢という人は演劇部の人らしい。
これから一週間お世話になるのだから、どういう人なのか部長さんに聞こうとした。
「今の秋沢はね、大道具にいるには惜しい男よ」
そう言って部長は微笑むだけだった。
…それ以上は教えてくれないんですか!
長らくお待たせして申し訳ありません。
部長、立花、秋沢の3人を覚えてもらえれば演劇部メンバーは大丈夫です!
ああ、梢ちゃんちっとも喋ってない;;;;(;・・)ゞウーン
今年はバリバリ書けるといいなぁ ε=(・ρ・*) フゥ