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45話 初、打ち上げ

今回は博樹さんの視点です。

 

 女子テニス部の試合は一つの黒星をつけることなく、三連覇を果たした。

 絶対王者の貫禄を見せつける部長とは裏腹に部員達は複雑な表情をしていた。


 居心地の悪い場所に長居する主義じゃないので、

 俺は鼓君に梢ちゃんを回収させ、二人を車で拾って…今ここにいる。


「梢ちゃん、勝利おめでとう!」

 三人ジュースで乾杯する。俺たちは今、ファミレスにいる。


 せっかくだから梢ちゃんを労う事になり、でも昼間から居酒屋はやってなので結果、ファミレスになった。

 打ち上げと言ってもご飯食べるだけだけど。なんせファミレスだし。


「山城って凄いな。テニスやってた訳じゃないんだろ」

「はい、授業でやったくらいで…私もまさか勝てるとは思いませんでした」


 試合はテニス部部長の筋書き通りにまるで仕組まれているみたいに進んでいった。

 彼女が梢ちゃんの実力をどこまで知っていたか分からない。


 見た目より体力がある事。

 サーブだけをキレイにライン際に決められる事。(これは天性の才能)

 人の行動をよく見ている事。


 対戦相手はさぞ驚いただろう。

 代わりの選手がテニス経験者で無いことは相手も知っていたみたいだし、その相手がいきなりサーブを決めるなんて考えられない。

 狙い通り、相手の調子は狂わされっぱなしだ。


 何より、梢ちゃんの後ろには鼓君がいた。


 そのおかげで、好プレーがあったのも事実。


 だけどこの手は二度と使えない。

 だまし討ちだからこそ勝てただけ。


 どこまで彼女(部長)の想定内だったか分からない。

 でもまぁ結果は出したから良いか。


「まさか鼓が来てるとは思いませんでした」

「博樹さんに拉致されたから」

「木野村っ!何をしてるんです!!」

「鼓君が居てくれて心強かったでしょ。梢ちゃん」

 少しは俺に感謝して欲しいくらいなのに。

「…確かに、心強かったです。…でも、また鼓に迷惑をかけてしまいました」

「今日のは不可抗力みたいなもんだから気にするな」

 しょげる梢ちゃんに優しい言葉をかける鼓君。

 全く今にも梢ちゃんの頭を撫でてしまいそうな雰囲気だ。

 これで友達と言い張る二人にも困ったものだ。そのうち宮下さんの圧力が俺の所までくるんじゃないか?


「それより山城の方が大変だったろ」

「いえ、私より部長さんの方が大変です」


 ん?梢ちゃんは自分を利用した相手を心配するのか。

 全くどこまでお人好しなんだか。そうやって呆れた自分自身をこの後、俺は恥じた。


「これから針のむしろに座り続けるのは部長さんですから。私なんてたかが一日です。

 部長さんはこれから壊れてしまったテニス部と一人で立ち向かっていくんです。

 それを思うと…私は最善を尽くす事しかできませんでした」


 梢ちゃん(この子)は…。利用された事も全て分かっていながらそんな言葉を言えるようになったのか。


「梢ちゃん。成長したね」

「なんです!私はいつまでも子供ではありません!!」


 すぐムキになる所は昔と変わらない。

 でも梢ちゃんはしっかりと確実に成長している。


 純粋に嬉しかった。

 梢ちゃんが、あの弱くて脆くて守ってあげなくては生きていけなかった女の子が…

 強く、優しく、美しい、女性へと成長している。

 頭ではわかってるつもりだった。

 でも実際に目の当たりにすると、あぁ本当に嬉しい。


 けど、ごめん。

 この感情を素直に言葉にできるほど俺は純粋でも真っ直ぐでも無くなってしまった。


 困ったように梢ちゃんの目線が下に落ちる。

「そんな風に笑わないで下さい。木野村らしくありません」

 俺は一体どんな風に笑ってる?いつも作ってる笑顔と何か違うのか?

 その答えを鼓君が教えてくれた。

「博樹さん、すごく嬉しそうですよ」



 ああ、言葉にしなくても伝わってしまうものなのか。






 ならばいっそ言葉にしてしまおう。







「だって、すごく嬉しいから。本当に嬉しいんだ」




 人前でなかったら泣いてしまうくらいに。

 梢ちゃん(きみ)の成長が嬉しくてたまらない。



はぁ〜、やっと博樹さんの兄心を書けた。

この人はどこまでいっても兄的存在なので、今更ながらどうぞよろしくお願いします。

三角関係みたいなモノを期待していた方すみません。そんな心がハラハラするモノ書けません(>_<)

基本属性ほのぼのですので、しばらくお付き合い下さい。

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