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40話 鼓秀平の迎撃

 鼓視点です。

 鼓君、迎え撃ちます。勝てるかどうかは別にして。

 今回はすんなりと俺は場所取り、二人は挨拶に行き少しばかりホッとしていた時だった。


 不意打ち…というか、一体誰が予想できるだろう。


 俺の隣に平然と座る女性。

「こんにちは」

「っ宮下さん!?」

 

 山城の家のお手伝いさんの宮下さんが突然、俺の前に現れた。


「なんでここにいるんですか!?」

「ちょっと梢ちゃんを尾行してて、だから私がここに来たこと梢ちゃんに話さないでね」


 にっこりと笑う宮下さん。


「…はぁ」

 宮下さんが偶然俺を見つけたのか、本当に山城を尾行してここに来たのか。

 深く考えたところで何か答えが出る訳じゃない。


 だたこの状況、………もしかして、俺ピンチ?


 突然現れた宮下さんは色々質問をして、俺が全部に答えると妙に納得した。

 宮下さんは、このまま「じゃあね」と言って立ち去っていくような気もした。

 その気は俺の期待と楽観視だとこの後すぐにわかる。


 宮下さんは何の脈絡もなく俺に言った。


「鼓君は梢ちゃんのことどう思ってるの?」


 とっさに「はぁ?」と言わなかった俺を誰か褒めてくれ。


「あの、どうしたんですか?宮下さん」

「言葉の通りよ。私は鼓君が梢ちゃんのことをどう思ってるか知りたいの」

 引くつもりは無い。そう言われてるみたいにキッパリと言い切る宮下さん。

 宮下さんは自分の為と言い切る。なんだか人の為ならと嘘を許す山城に似ている気する。

 

 だからだろうか、それまで平然とやってきた「誤魔化す」「逃げる」「はぐらかす」このどれもがこの時出来なかった。


「山城は友達ですよ」

 嘘は言ってない。前に山城からも友達宣言されている。

 そう、俺と山城は友達。宮下さんが期待してるような関係では全くない。

「本当に友達としか思ってないの?」

「宮下さんに嘘言ってどうするんですか」

 俺がそう言っても宮下さんは引き下がらなかった。


「あなた達はもう子供じゃないのよ?」

 隣に座る女性はハッとするほど大人の人だった。


 ”梢ちゃんと一緒にいて、どうして恋に落ちない”


 宮下さんの言葉と目が真っ直ぐにそう俺に訊いている。











「男と女が一緒にいる形がどうして”恋”じゃないといけないんですか?」


 これは言い訳でもなんでも無い。俺は純粋にそう思っていた。

 なぜ友達ではいけないんだと。


 ただ、それだけでは宮下さんは引き下がらなかったし納得もしていなかった。

 次ぎの質問が俺を襲う。


「ねぁ、鼓君。今梢ちゃんの隣にいるのはあなたじゃないのよ」


 そう今、山城の隣にいるのは博樹さんだ。

 遠くからでも分かるほど目立つ美少女と好青年の組み合わせ。今もさぞ周りの視線を集めてるだろう。

 だってあの二人は並んでいるだけでも溜め息が出るくらいお似合いだ。

「それって、ちょっと嫌じゃない?」

 山城の隣にいるのが明日也だったら、嫌どころじゃない。想像しただけで無性に腹立たしくなってきた。

 けど、博樹さんは……博樹さんと山城の間には誰も入れないんじゃないかと思う時がある。

 昔の事とかそんなもの関係なく、そう思うときがある。

「…えっと、その…あんまり嫌ではありません…けど」


 宮下さんは残念そうに、そして見せつけるように大げさに溜め息をついた。

「私は…鼓君はもっと梢ちゃんのこと好きだと思ってた」

 そんな裏切られたみたいな顔をしないで下さい。

「…すみません」

「本当に”友達”なのね」

「はい」


「まぁいいわ。どうせ時間の問題だし」

「えっ?」

「梢ちゃんに惚れない男がいる訳ないでしょう」

 宮下さんは晴れやかな笑顔で言い切った。

 山城に下心のない人だと言われた事は黙っておこう。


 その後、宮下さんは山城達が戻ってくるのを敏感に察知し

「私がここに来たこと梢ちゃんには絶対に喋らないでね!」

 と俺に口止めしてから逃げるように去って行った。


 さっきまで宮下さんが座っていた場所に当たり前のように山城が座る。

「鼓、どうかしましたか?」

「いや、なんでもない」

 話すはずがない。

 宮下さんと何の話をしていたか追求されると思うと話すはずがない。


 もうすぐ試合が始まる。


うわぁ、まだ試合はじまってなかった。

多分、試合の描写無しで終わる可能性高い…。

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