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34話 閑話、この二人が会話したら

すみません。

完全なる興味本位で書きました。

この二人が会う事は無いだろうな〜と思ったら書きたくなってしまった。


 俺は今、鼓家にいる。勝手に押しかけてサークルの話をしに来て、部屋に上がり込んだ。

 目的は果たしたのでもう帰ってもいいけど、あの二人を部屋に二人っきりにしてみたくて

「あっ、ちょっとトイレ貸して」

 とごく自然に部屋から出てきた。


 一応トイレには行き、トイレっていっても時間に限界あるよなと思いながらドアを開けた。

 すると予想外な人物がドアの前に立っていた。

 俺はその人を紙の上で知っている。

 鼓秀平の妹、鼓南夏。現在、小学6年生。好物はコロッケ。


 彼女の眼差しは鼓君によく似ていた。


「ごめん、トイレ?」

 彼女は首を小さく横に振った。そしてよく似た真っ直ぐな目で俺を見上げる。

「お兄さんがサークルの先輩さん?」

「そうだよ」

「ねぇ、ゲームできる人?」

 その誘いはどうやって不自然じゃなく時間を潰せるか思案していた俺にとって魅力的なものだ。


「できるよ」と答えると俺はリビングに通された。

 そこにはテレビにつながれたスーパーファミコン。画面に映ってる映像は「ストリートファイターⅡ」だった。


「また、レトロな物やってるね」

 最近のゲームはあまり詳しくないが、今の小学生がコレをやってるのも珍しい。

「名作に時代の流れは関係ないって同志のハナさんが言ってたよ。先輩さん、対決しない?」

 そう言ってコントローラーを差し出されたので俺は受け取った。

「いいよ。それで、何を賭けるの?」


「え?」

 彼女はキョトンとした表情で俺を見上げた。

 そうだった。彼女は俺が紙上で何を知ってるか知らないんだった。

「ゲームで戦うなら対戦って言うと思って。でも対決なら何か俺から欲しいモノがあると思って、違う?」

 俺がそう告げると彼女は顔から幼さを消した。

「違いません。私、頭の良い人好きです」

 口から出る言葉も幼さや遠慮が一切なくなった。

 幼い容姿に使い分けられる表情。昔の俺もこんな感じだったのか…と幼かった昔を懐かしんでみる。


「俺も話の分かる人が好きだよ。それで何が欲しいの?」

「私が勝ったらお兄ちゃんの友達の事を教えて下さい」

 鼓君の友達、つまり梢ちゃんの事か。こっちにもなかなか厳しい審判がいるんだな。

「俺が勝ったら?」

「お兄ちゃんの事を教えます」

「のった!」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「博樹さん、なにやってるんですか」

 後ろから鼓君に声をかけられたが、振り向く余裕が全く無い。

 くっ、波動拳相殺し過ぎ。

 俺と彼女は3本勝負でゲームを始めた。

 30分くらい時間を潰せれば俺としては上々だと思っていた。


 しかしだ、現状は1勝1負5引き分け。ゲームをやり始めて1時間が経とうとしていた。


 きた!今だ!!

 渾身の必殺コンボを繰り出す。


「…勝った!」


「木野村、大人げないです」

「博樹さん、小学生相手に…」

 後ろから二人の冷ややかな視線が背中に突き刺さる。

「いや…、あのこれは……」

 凄く弁明したいが、小学生相手に本気を出したのも事実。

 それにこの二人は隣にいる小学生が成績優秀でよく頭のまわる人だと知らない。

 あと、悲しい事に俺への信頼は底辺だ。大体の事を曖昧にしてきた俺が悪いんだけどさ。


「先輩さんは悪くない!」

 幼さをまとった彼女が二人に向き合う。

「勝負は真剣にやらないと駄目だってお父さん言ってたじゃん!だから先輩さんは悪くないもん」

 うっすら涙を浮かべた彼女に鼓君がおろおろし始めた。

「わかった、南夏!わかったから」

 鼓君は彼女の頭を撫でて落ちつかせようとしていた。


 普通に見ると仲の良い兄妹。俺にそう見えない事がとても残念だ。

 何も知らないことが幸福だなんて、現実で見たくなかったかな。

 あと、何歳でも女って怖い。


 それから、俺と梢ちゃんは鼓家をあとにした。

 しぶしぶ梢ちゃんは俺に送られることを了承した。なぜって、今日は珍しく辞書も警棒も忘れてしまったから。


「梢ちゃん、鼓君と二人で何を話してたの?」

「あなたに報告する義務はありません」

 ああ、全く。俺は顔がにやけるのを必死に押さえた。

 俺は鼓君に感謝しなきゃいけない。

 もしあのまま梢ちゃんから逃げていたら梢ちゃんは今、俺に送られる事を了承しなかっただろうし、

 俺を完全に無視してただ帰ることに意識を向けていただろう。

 鼓君の前では俺を無視しなかった。だから、二人が一緒の時を狙って話しかけていた。

 それがどういう事か梢ちゃんは分かってないんだろうな。


「義務じゃないけど、俺はおしゃべりだからついうっかり誰かに梢ちゃんが鼓君の家に行ったこと言っちゃうかも」

「なっ!それはサギです!!」

 素直で可愛い反応するから、ついからかいたくなっちゃうんだよな。

 

 それから二人が大学生の男女か!って疑いたくなるくらいほのぼのな会話をしていた話を聞き、梢ちゃんを無事家まで送り届けた。



 俺のケータイに鼓君から電話がかかってきたのはその日の夜だった。

「もしもし、鼓君?」

「鼓ですが、兄じゃありません」

 声だけ聞くと完全に大人の女の人だった。

「南夏ちゃん。どうしてお兄さんのケータイを?」

「先輩さんにゲームのコツを教えて欲しいからと、貸してもらいました」

 鼓君、妹に騙されてるよ。

「兄についてなんでも話します。何が聞きたいか教えてください」

「いいの?そんな律儀に約束守らなくてもいいんだよ」

「私は初めてゲームで人に負けました。真剣勝負で勝った相手に敬意を示すのが私の流儀です」

「そう、それじゃあお言葉に甘えて…お兄ちゃんの高校時代の恋愛の話を聞かせてくれないか?」

「わかりました」


 全く、鼓家の人は面白い人ばかりだな。


えっと、博樹さんに強力な情報提供者が付きました。

急きょ決まった南夏のキャラ設定。ふらふらっと考えていたら「ハナさんとナツ」って別ネタも出てきたりして…。

次こそちゃんとした夏休みを書きますので。

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