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33話 俺のプライバシーは皆無ですか!

 二階の部屋に入るとローテーブルの前に二人が行儀良く座っていた。

 山城は正座で、博樹さんはあぐら。ただ二人の間には妙に距離があるけど……そこは無視しよう。

 自分の部屋にこの二人がいるっていうのは不思議で仕方ない。まさか、こんな日が来るとは。

「取りあえず、どうぞ」

 二人に麦茶を勧めて、自分も飲む。


 勧めた麦茶を一口飲んで、口を開いたのはやっぱり博樹さんだった。

 いや、全てはこの人発信だから、説明してもらわないと困るんだけど。

「さて、どうしてわざわざ鼓家に来たのか凄く気になってる感じだね」

「突然訪問された身にもなってください」

「じゃあ、さくっと本題に入ろうか。この三人が揃ったらサークル関係しか無いでしょ」

 博樹さんはどこから取り出したのか、薄っぺらい手帳をペラペラとめくり始めた。

 俺と山城は博樹さんが部長をつとめる「サークルボランティア部」という、どういう部なのかよく分からないサークルに所属させられている。


「それで、今のところ鼓君の予定は水曜と金曜、あと18日と27日が空いてるから…」

「ちょっと!なんで俺の休み知ってるんですか!!」

 今、博樹さんが言ったのは俺のバイトが無い日だ。そんなのバイト仲間くらいしか知らないはず。

「いやー、世間って本当に狭いよね」

 博樹さんは爽やかに笑うが全く答えになってない!

 そんな俺の心の声が山城に届いたのか、顔に思いっきり出ていたのか山城がぽろっと言った。

「これが木野村の行動力です。本気を出せばこれほどじゃないですよ」

 今になって山城があんなにも警戒していた理由がわかる。

 しかもコレでも本気じゃないって…本気出したら……ちょっと想像したくないな。

 やっぱり俺って浅はかだったのか。今更いっても仕方ないけど。

 ああ、俺のプライバシー……。


 博樹さんは山城の一言には全く触れず、話を進める。

「もちろん、梢ちゃんも予定は空いてるね」

 山城は静かに頷く。

「夏にこっそりアルバイトをしようと画策していたんですが、正面から反対されてしまいました」

 そりゃあ、本物の箱入り娘だから親御さんも心配だろう。

「宮下さんに」

 あの人、本当に何者なんだ?

「あっ、でもサークル活動は鼓が一緒なら大賛成と宮下さんが太鼓判を押してくれましたよ!」

 …あの人も俺の事をどう思っているんだか。

 一度誤解を解かないといけないような気がしてきた。絶対に俺の人物像が間違えてる。

「それはちょうど良かった。梢ちゃんは鼓君とセットって元々考えてたから好都合だ。

 なんせ梢ちゃんは大人気だからね、えっと野球、サッカー、バスケ、剣道とか」

「わっ私、そんなに運動神経良くありませんよ!」

 おっと、山城なぜガッツリ参加する方向で考えてるんだ。普通に考えて違うだろ。

「山城、参加する助っ人じゃないから」

「え?」

「そうだよ、梢ちゃんはただ観戦してればいいんだ」

「それでは何もお役立てできませんが?」

「いいんだ。梢ちゃんが試合を見てくれてるだけで野郎どものやる気の度合いが変わるから」

「…そういうものなんですか」

 山城の顔にさっぱりわからないと書いてあった。まぁ分かってたら下心どうこう言い出さないか。

 その男の心理を巧みに突く博樹さんも博樹さんだけど。


 それで俺は山城を連れ出す為の餌か、博樹さん的には。

 で、宮下さん的には山城のボディーガード。

 どこまでも使われるな、俺。


「一応聞くけど、試合の後の打ち上げに参加したりしないよね。二人とも」

「それは駄目ですよ、博樹さん」

 俺は当たり前のように言ったのに、意外な方向からパンチが飛んできた。

「どうしてですか?」

 えっ、山城がそれを聞くの?

 いつもなら「獣の中になんて入れる訳がありません」とか言うくせに。

「スポーツマンの勇士を労うものですよね?」

 そうか、山城は大学生男児の飲み会を知らない。

 なんでも有りのドンチャン騒ぎ、体育会系の飲み会に参加した事はないがあまり想像したくない。

 そこに山城放り込むなんて俺だけではとても守りきれない。

「本来そうあるべきなんだけど、山城は行かない方が身の為だ」

「そうですか、鼓が言うなら行きません」

「打ち上げに関しては鼓君だけでもいいよ。しかも飲み代は向こうのサークルが持ってくれるし」

「なんですか!そのおいしい話」

「それが梢ちゃんを連れて行く報酬だから」

 ああ、なるほど。一応ボランティアって名打ってあるし、堂々と報酬をもらう訳にもいかない。

「俺が行ってもいいんですか?」

「もちろん。鼓君と一緒に君目当ての女の子が集まるからね」

 それを言うなら博樹さんの方だろ。見た目完璧な好青年、今にも爽やかな風が吹きそうな笑顔持ってるくせに。

「駄目です!鼓、行ってはいけません!!」

「えっ?」

「木野村の食いものにされます!!」

 山城は博樹さんの何を知ってるのか一度じっくり聞いてみたい。

 山城の目は真剣そのもの。山城が冗談なんて言ったことないけど。

 それに博樹さんも山城の言葉を一言も否定せずニコニコと笑っている。

「えっと、じゃあ山城の忠告に従います」

「そっか、報酬は俺だけありがたく頂いとくよ」

 …ああ、タダ酒。

これから夏休みの話を書こうとしてるけど、夏終わるし…。大学生の夏休みは長いさ!

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