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25話 宮下翔子物語6


 私たちは場所を変え、近くの公園のベンチに並んで座った。


「それで、幸枝さん。梢ちゃんを追い詰めたものはなんだったんですか」

 幸枝さんはクスリと笑った。なぜ笑えるのか、不振に思った。けど、幸恵さんはとても悲しそうな目をしていた。

 その目はふと博樹君を思い出させた。

「そうねぇ、あなたも大分頑張ってくれたみたいだし。私の知ってる事なら教えてあげるわ」

 幸枝さんはふと上を見て、遠くを見るように。けれど全て見てきたかのように語り始めた。

 それを私はただ静かに、一言も取りこぼさないように聞いた。


 梢ちゃんは病気がちであまり学校に行けなかった。

 一週間学校に行っては、身体が弱り熱を出した。

 一人部屋のベッドの上で一日の大半を梢ちゃんは過ごし、体調が万全になる頃にはクラスメイトの名前を覚えきれていないのは梢ちゃんだけになっていた。梢ちゃんは友達を作るタイミングを逃してしまった。


 けれどそれは梢ちゃんの苦にはならなかった。

「梢ちゃん」

 学校が終わると真っ直ぐに博樹君が梢ちゃんの部屋にやって来た。

「昨日より顔色良くなってるね」

「うん、昨日よりずっといいの。ねぇ、昨日のお話の続きを聞かせて」

「梢ちゃんはお姫様の話が好きだね」

「だって、幸せな気持ちになるもん」

 梢ちゃんの側にはいつも寄り添うように博樹君がいた。

 二人の世界をそこで完璧に完結していた。


 しかし、箱庭のような幸せは一生続くものではなく、そして脆かった。

 

 梢ちゃんの身体は成長と共に段々と丈夫になっていき、小学三年生の秋頃には毎日学校に通えるようになっていた。

 そこで初めて梢ちゃんに友達ができた。同じクラスの女の子。

 クラスの中でも可愛くて、明るくて、人気者だった女の子。

 

 梢ちゃんは初めての友達に素直に喜び、「こずちゃん」「みんちゃん」と仲良く呼び合うようになるまで時間はかからなかった。


 友達ができても、梢ちゃんはクラスになかなか馴染めなかった。

 いつも一人でいた梢ちゃんは大勢の人間と一緒に行動する事がどうも苦手だった。

「はーい、みんな5人グループを作って下さい」

 こんな時、梢ちゃんの周りでは次々と人が固まっていく。その中でどうしたらいいのかわからず、梢ちゃんはボー然とその光景を眺めていた。

 観察することで対処法を見つける。身体が弱く、あまり動けなかった梢ちゃんが生活する上で身につけた力だ。

 梢ちゃんは無自覚に癖としてそれを行っていた。その癖の意味を知っているのは家族と博樹君だけだった。

「梢ちゃん、何ボーっとしてるの」

 それを教師からしばしば注意されることもあった。

 しかし梢ちゃんが不登校になる事はなかった。教師に怒られようと、集団の中で上手く動けなくても、それを大して苦に感じていなかったからだ。梢ちゃんは学校で孤独を感じることがなかった。

「こずちゃん、こっち」

「うん!」

 なぜなら隣には必ず出来たばかりの「友達」が寄り添っていたから。


 それからしばらくして、放課後3人でいることが多くなった。

 梢ちゃんと友達と博樹君の3人で。

 一見するとそれは自然な流れのように見えた。いつも一緒に居た梢ちゃんと博樹君、そこに友達が加わる。

 けれど、それは完璧な箱庭にはほど遠かった。


 それから友達が本性を現すまでそう時間はかからなかった。


 


久しぶり過ぎてちょっとペース上がらない。

今回少なくてごめんなさいm(_ _;)m !!

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