21話 宮下翔子物語2
さてと、どうしようかな。私はカウンセラーじゃない、ただの子守…お手伝いさん。
でも覚悟を決めたからにはやれる事をやる。
…取りあえず、掃除でもするか。
一日の家事に追われ、全て終わった頃に学校から梢ちゃんが帰ってきた。
「おかえりなさい、梢ちゃん」
「…ただいま」
帰ってきた梢ちゃんの様子がおかしい。
梢ちゃんはチラチラと私を見ては俯いた。まるでイタズラを隠している子供みたい。
「梢ちゃん、どうしたの?」
私は屈み、梢ちゃんと目線を合わせた。けれど、すぐに梢ちゃんの視線は下に落ちた。
もしかして、今の学校でも虐められているんだろうか。これは気づいて欲しいってサインなのか。
ハッ!もしかして私の質問が悪かった!?「どうしたの?」って追い詰めてるみたいに聞こえたのかな…。
わかんないよ。だって私こういうの初めてだもの。
「…宮下さん」
「はいっ」
声が裏返った。それに「はい」って私は…。
「…宮下さんは何も聞かないの?」
梢ちゃんは俯いたまま、でもハッキリとそう言った。
私は一瞬固まったけれど、すぐに納得した。
ああ、そっか。
梢ちゃんはコレが初めてじゃない。今まで何度同じ事を繰り返してきたか。
俯く頭、ぎゅっと握りしめられた両手。
私の様子をうかがっていたのはいつ聞かれるのか気にしていたから…ううん、恐かったからだ。
「梢ちゃんは聞いて欲しい?」
首を横に振る。
「言いたくない?」
コクリと頷く。
「言えない?」
梢ちゃんはバッと顔を上げた。目の前には私の顔がある。梢ちゃんは私の目を見て、頷いた。
「うん、わかった。じゃあ、おやつにしようか。梢ちゃんランドセル置いて、あっ手洗いうがいも忘れずにね」
「宮下さん!」
梢ちゃんの顔にはハッキリ「どうして?」と書かれている。
梢ちゃんの良いところであり、悪いところ。梢ちゃんはしっかりし過ぎている。
「それはね、梢ちゃんが可愛いから♪」
「っ宮下さん!」
「さぁ、おやつおやつ♪」
自分が悪いみたいな顔をしていた。話さないこと?話せないこと?義務じゃないんだから、言わなきゃなんて思わなくていいのに。
「今日のおやつはホットケーキだよ」
「わぁ♪」
蜂蜜がたっぷりかかったホットケーキを一口食べる梢ちゃん。おいしいと言うように笑う。
「おいしい?」
「はい!」
嫌なら思い出さなくていい。忘れられるならその方がいいと私は思う。
幸せそうに笑う、梢ちゃんを見たら余計にその想いは強くなった。
「梢ちゃん、今日学校どうだった?」
梢ちゃんは自分から「聞いて、聞いて」と話すタイプじゃなかったから、私は毎日学校の様子を聞いている。元気よく学校に通ってる姿から学校自体がタブーでない事がわかった。
「今日は先生に褒められました」
「なんでなんで」
「算数の問題を予習してたから」
「えらいな〜、梢ちゃんは」
毎日話を聞いているけど、梢ちゃんの口から友達の話題が出た事は一度も無い。
ワザと避けるように話していた。つまり「言いたくない」ことなんだろうと思う。
転校したばっかりだし、速攻で虐められてるとは思わないけど…気が合う子とか居ないのかな?それとも梢ちゃん人見知りしてるとか。
しかし、それを確かめる日は意外と早く転がり込んできた。
学校から電話があった。梢ちゃんの学校生活についてお話したいことがあるとの事だった。
学校側にも梢ちゃんが問題を抱えている事を伝えられているのかもしれないし、いじめ問題で敏感になっている学校側からの措置かもしれない。
これは梢ちゃんが隠している事を知る良い機会だと私は思った。
その日の深夜。梢ちゃんの両親が帰ってきて私は学校から電話があった事を伝えた。
二人とも仕事が忙しく学校に行けなさそうだった。そこで私が行くことになった。
「私でいいんでしょうか」
「君はよく梢を見てくれている。それに君なら梢を救える」
過大評価だとすぐさま思ったが口には出さなかった。
結果から見れば、梢ちゃんのお父さんの言葉はあながち外れていなかったのだけれど、その頃の私はそんな事知らない。
それと学校訪問をきっかけに私は探偵のような事を始めるのだが。それもまだ知らないし、夢にも思っていなかった。
学校訪問の事は梢ちゃんには伏せておいた。全て話すだけが得策でないことを二人は知っていたからだ。
翌日、梢ちゃんが学校へ行ってから学校に両親が多忙で変わりに私が行く旨とこの事を梢ちゃんに伏せていること伝えた。
梢ちゃんを担任している先先はとても察しの良い先生だった。
「では、梢ちゃんが帰る前に終わらせた方がいいですね。では急ですが、今日の2時頃に小学校へ来ていただけますか正門でお待ちしています」
「わかりました。よろしくお願いします」
展開を急ぎ過ぎた!っと思って書き直したらすっごく進みが悪くなっていた∑(´Д`)ハッ!!宮下さんと言うより梢ちゃんの過去編みたいになってきた。