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9話 初めてのお友達2

今回は「初めてのお友達」の山城視点です。

飛ばしても支障ありません。


 なぜか私は鼓に頭を撫でられてる。

 どうしてこの状況に陥ってしまったのかサッパリわかりません。

「あの、鼓…」

「なに?」


「なぜ私は頭を撫でられているのでしょう」

「あっ、嫌だった」

「嫌ではありませんが…その…」


 なでなでなでなで


 本当は「恥かしいです」と言おうとした。だって大学生にもなって頭を撫でられるなんて子供みたいで恥かしい。

 でも、言えなかった。その手を拒めなかった。


 頭を撫でられるなんていつ以来だろ。


「ごめんね、梢」

「ううん」


「梢、済まない」

「いいよ」


 遊園地、動物園、海、山、ピクニック、キャンプ…。

 どれも行けなかった。


「次は絶対に行こうね」


 そう言って私の頭を撫でる両親の手。


 もしかして、それ以来?

 でも、今と昔じゃ全然違う。


 鼓の手は誰よりも温かい。

「無理して笑うなよ。心配になるだろ」

 ポンと一押しされ頭から手か離れる。

「……やっぱり、鼓はお兄さんですね」

 優しい手をしてる。温かい手をしている。


「あれ、俺言ったけ?」

「それくらいわかりますよ、それくらい」


 本当にお日様の匂いがする。なんて不思議な人なんでしょう。


 しばらくして宮下さんがお盆に紅茶とケーキを載せて戻ってきた。


「このケーキうまい」

 ケーキを一口食べた鼓の顔がほころぶ。

 あっ今、絶対家族の事考えてる。

 こんなに分かりやすい人なのに、どうして一人っ子だなんて誤解されるんでしょう。

 まったく不思議です。


「良かったですね、梢ちゃん」

 宮下さんニマニマし過ぎです。

「え?」

「そのケーキ、梢ちゃんの手作りなんですよ」

 ああ、余計な事を!

 浮かれて調子に乗った自分が恥かしいです!

「…あの、今日久しぶりに…その、両親と会えるから…もちろん、鼓の事も忘れてませんよ!」

 張り切って作ってしまったショートケーキ。

 両親と鼓と一緒に食べられたらいいなって思って作ったケーキ。


「そんなに多忙なのに、家に来いなんて…むしろ俺、迷惑だった?」

「そんな事は無いです。全く!」

 はぁ、折角来てくれたのに気を使わせてしまいました。


 そんな落ち込む私の隣にニマニマしてる宮下さんが座った。

「だって、梢ちゃんの初めてのお友達ですから」

 ああ、宮下さんが勘違いか誤解か何かしら間違えてます。

 その顔は絶対に間違えてます。

 しかも、ちゃっかりケーキも食べてます!

 まぁ、どうせ余ってしまうのでいいですけど。


「?あっ、初めての男友達だから珍しがって…て事?」

「いいえ、初めてのお友達です」

「え?」

「言葉の通りですよ」


「いや、そんな訳ないでしょ」


 ホラ、鼓が困惑してるじゃないですか。

 鼓にはわかりません。いいえ、わかっていて欲しくありません。

 チラリと宮下さんを睨む。

 その視線に気づいた宮下さんは肩をくすめた。


「梢ちゃんは凡人が近づく事ができないくらいの特上クラスの子です。その美しさ故に妬まれ、グループから爪弾きにされたり、虐められたり…」

「鼓、宮下さんの話を鵜呑みにしないで下さい」

 嘘のような本物もどきの話。そもそも特上クラスってなんですか。

 半分本当で半分嘘。

 私の睨みは半分しか効きませんでした。


「えっ、嘘なの」

「妬まれてたのは事実ですが、虐められてませんし、私の不注意が招いた事です」

 無知だった自分が招いた過去。

 今となっては良い教訓です。


「梢ちゃんに友達ができたって聞いておじさんとおばさん喜んでたよ。仕事休んでまで会いたがってたし」

 …そんな事……今伝えるなんて卑怯です。

 私は許さないつもりでいたんです。

 自分達から連れて来いと言っておいて帰ってこないなんて、鼓に無駄足を踏ませてしまって…。

 でもそんな事言われたら…。


 許さないといけないじゃないですか。


「結局、帰ってこれなかったけど」

 私だって、それくらいわかっています。もう小さな子供ではありません。


「また来るよ」

「えっ」

「友達なんだから、家くらい行くだろ普通」

「鼓にそこまでお世話になる理由はありません。今回約束を破ったのは私の両親ですし」

 また迷惑がかかってしまいます。


「梢ちゃん、そこは可愛くありがとうでしょ」

 一体何を言ってるんですか、宮下さん!

「宮下さん、意外と話わかりますね」

「どれだけ、梢ちゃんと一緒にいると思ってるのよ」

 なぜっ、鼓と意気投合しています!

「あの…」



「つまり、気にするな。友達だろ俺ら」

「梢ちゃんは、はっきり言葉にしないとわかりませんからね。私、紅茶のおかわり淹れてきますね」


 やはり、鼓は優しい人です。

 優しくて、正しい。

 あなたはいつだって私の期待以上の事をする。


 初めて辞書がその日の内に戻ってきた事。

 私と普通に接してくれる事。

 見返りを求めずに行動する所。


「鼓」

「ん?」

「…あっありがとうございます」

「うん」


 あなたはいつだって信じられないくらい温かい。



 鼓を駅まで送って行って帰ってきた私を迎えたのはニマニマした宮下さんだった。


「最初に言っておくけど、鼓は宮下さんが思ってるような人じゃないですよ」

「わかってますよ。梢ちゃんのお友達でしょ、今は」

「だからっ、純粋にお友達です!」

「そういう事にしておきます♪」

 ああ……宮下さんを調子にのらせてしまった。



梢ちゃんの過去はちょっと暗い。ああ、宮下さんで一話書きたい。

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