bad end
教室の前。
息を切らせ、胸と足がこんなに痛くなるほど全力で走ったのは初めてかもしれない、翔悟はそう思いながら教室の中を窺った。
そこには、仲良く友人同士で話をする生徒達の輝かしい姿───はなく。
「何だ、これ……」
驚きの言葉しか、出なかった。
翔悟が孝治を見る。
彼もまた、言葉を失っていた。
目の前に広がった光景。それは、赤と黒の、グロテスクな世界。
孝治が来てからこのような事態に陥ったことは確かだ。彼は逃げてきた様子ではなかったし、それに、このアメーバの数を見てみれば到底この場から逃げられることは不可能だろう。
これでは、他のクラスもといここの生徒教師全員が『喰われた』ことになる。翔悟、孝治以外は。
絶望感に打ちひしがれている人に目を付けたアメーバが一体、動き出す。
それに気付いた孝治が、
「おい、逃げるぞ!」
皆の死体に別れを告げ、再び一目散に走り出した。
だが。
何処へ行っても黒、黒、赤。
行く手を阻むように、黒いアメーバが集団であふれ帰ってきた。目の前に。
生臭い臭いが鼻を刺激し、嘔吐を誘ってくる。
「うあああああああッ!」
二人の叫び声が、誰も居なくなってしまった校舎に虚しく響いた。