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後編

後編です



「ん、理解した。では、女神パワー発動っ! コンラートの頭頂部。真ん丸に、はーげーろー☆」


ぱっちん、と。女神様がウインクをしたら……コンラート殿下の頭頂部の髪の毛が、きれいに円形になくなった。

しかも腰まであった長い髪も、肩のあたりで切りそろえられている。

まるで、東の彼方の国の「河童」という妖精のよう……っ!

なんて、ポップでキュートなのかしら!

その仕上がりに、わたくしは思わず瞳を輝かせてしまった。

周囲の貴族の皆様も、何やら口元を押さえて微笑んでいらっしゃる。

ああ、やっぱり、男性の髪形はかくあるべし!


「ありがとうございます女神様!」

「うんうん、よかったよ。で、あと二つ願い事、残っているよ」

「そうですわねえ……」


なんて、言っている間に、コンラート殿下は手で、ご自分の頭を恐る恐る触っていらっしゃった。髪がないことに気が付かれたらしい。


「う、うわああああああああああああああああっ!」

 

ものすごい大きな声で、感動を叫んでいらっしゃる。

喜んでいただけたようで何よりですわ。

フフフ、と笑うわたくし。


「戻せっ! あと二つ、願いを叶えられるというのなら、私のこの髪を戻せええええええええっ!」


コンラート殿下が女神さまに詰め寄るけど、女神さまは「願いはエリザベートちゃんのを叶えるんだよーん」とお笑いになっていた。


「え、エリザベートっ! 婚約は破棄しないから、私の髪を元に戻せっ!」


コンラート殿下が今度はわたくしに詰め寄ってきた。


「そうは言われましても……せっかく素敵な出来になったのに。コンラート殿下の御髪は永遠にそのままでいてもらいたいものですわ……」


わたくしがそう言えば「よし来た! 二つ目の願い、叶えましょう☆ コンラートの髪は、死ぬまでそのままね~」と女神様が、ご返答なさった。


「やめろやめろおおおおおおおおお」


コンラート殿下が叫ぶけど、二つ目の願いが届いた証拠に、コンラート殿下の頭皮がきらりと輝いた。


あら、光るのも美しいわね。

三つ目の願いはコンラート殿下の頭皮が光るようにしていただこうかしら……とも思ったのだけれど。

光りっぱなしもまぶしいわね……。

と、すると……。


「三つ目の願いはどーする?」


女神様にじっと顔を見つめられた。


「そうですね……もう一つ願いが叶うというのであれば……」

わたくしはちょっと考える。


「髪の長さは肩まででもなかなかにキュートなのですが。やはりコンラート殿下は男性でいらっしゃるので、キュートよりは凛々しさを求めるのもいいかしら……?」

「ん? 凛々しさ?」

「はい、女神様。残っている髪の長さをもう少し短くしていただいてもよろしいですか?」

「なんか好みの髪型とかあるの?」

「はい。ベリーショートまでとは言いませんが、襟足に毛先がつかないほうが好みでして……」

「えーと、昭和時代の野球部の新入生みたいに、がっつり短い坊主頭?」

「ショーワジダイのヤキューブ……に、ボーズ……という意味はよくわかりませんが……。ええと、わたくしの従者の一人が、まだ毛根も元気で頭髪の豊かな若者の場合は、ソフトモヒカンにツーブロックというのがやはり男らしいと主張していましたので、そういう短さの上に、頭頂部だけ、髪の毛がない状態にしていただけますでしょうか?」

「ファンキーでいいかもね。じゃ、お望み通り、コンラートの髪をソフトモヒカンにツーブロックにして、頭頂部だけつるっぱげ……と」

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


コンラート殿下の絶叫が会場に響き渡った。同時に短くなるコンラート殿下の髪の毛。

あら、すごい素敵。

今まで全然コンラート殿下なんかに興味を持てなかったけれど。この髪型であれば、わたくし、ちょっと惚れてしまうかも。ああ、なんて麗しい髪なのかしら。


「じゃあ三つ目の願いも叶えました☆ それじゃ、またねー☆」


光と共に、消え去っていく女神様に、わたくしは深々と頭を下げる。


「このご恩は忘れません女神様……っ!」


光が消えた後、周囲はしんと静まり返っていた。


コンラート殿下は、座り込み、両手を床につけて、頭を垂れている。

あら、王族が、額を地につけて拝礼するなんて、女神様に対する最大級の感謝かしら。ふふふ。良いお願い事をしたわ~と、わたくしもかなりの上機嫌。


コンラート殿下にまとわりついていたティナとかいう平民?下級貴族?の娘の姿は消えていた。

コンラート殿下の、新たなるお美しさに、恐れをなしたのかしら?

まあ、いいわ。


「さ、コンラート殿下。女神様に対する感謝を示すのはそこまででいいですわ。お顔をお上げになって」


のろのろと上げられたコンラート殿下のお顔は、涙に濡れ、しかも鼻水まで垂らしていた。


まあ、まあ、そんなにも感激するなんて!


わたくしは微笑ましく思い、ハンカチを取り出して、コンラート殿下のお顔をぬぐって差し上げた。


「ほほほ。髪が長いころは、うっとうしいと思いましたけれど。頭髪の進化により、コンラート殿下、かなり男前になりましてよ。頭頂部など、わたくしのおじいさまと同じように、光り輝いておりますわ!」




その後。コンラート殿下は我が一族の男性陣に、温かく迎え入れられ、わたくしとの仲も良好になった。


王妃様と国王陛下は、初めは驚いていらっしゃった。

けれど、傲慢さが消え、謙虚になったコンラート殿下のことを、たいそうお喜びになった。


フフフ、女神様ありがとうございます! やはり頭髪は進化するべきものですね!



終わり




登場人物紹介は次のページにて。



わたくしの初めての書籍、

『悪役令嬢は素敵な旦那様を捕まえて「ひゃっほーい」と浮かれたい 断罪予定ですが、幸せな人生を歩みます!』が、来月一迅社様より発売となります!

浮かれてこんな話を投下してみました。

お楽しみいただければ幸いです。


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