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紙吹雪の舞う夜に  作者: 暴走紅茶
第四章 強さのイミ

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11話 集中修行

 今日も(どう)()()は花畑に居た。修行が始まって2週間が過ぎていた。毎日毎日昼は花畑で、夜は森の中でそれぞれの師匠に稽古をつけられている。

「へい! 百目鬼! 今日は何株何本だい!?」

「昨日、雨、123株、枯れて、245株、生えた、9845株。花の数、増減、して、7万、とんで、32輪」

 メダカの問いに、素早く回答を出す。

「おお~。いい線行ってるね~。正解は1万とんで1株と、7万とんで22輪だ。だんだん正確さが身についてきてるんじゃ無いのか~!?」

「イエ~~~~~イ」

 彼は幼い頃から積んできた基礎力のお陰で、目を見張るような成長を遂げていた。……そう、昼は。


 日が落ち、夜が訪れる。日のある間の修行が終わってから、大急ぎで腹ごしらえをすることにも慣れてきた。数日前に手頃な川を見つけたから、今日はそこで魚を捕まえ、焼いて食べた。だが、食後にのんびりする時間はない。鱗脚(りんきゃく)が来るまでにウォーミングアップを済ませておかなくては、体が持たない。

 そうこうしていると鱗脚がやってくる。

「さて、今日も組み手を始める。メダカの奴から昼の修行が上手く行っていると聞いた。ならば、夜もしっかりと目を開いているのだ。ちゃんと視るんだ。分かったな」

「はい」

 そして組み手が始まる。最初の頃は組み手と言う名のリンチだったが、それも徐々に、いや微々たる程にだが、組み手らしくはなってきていた。

「視ろ! 目を閉じるな! 相手の動きだけじゃない、筋肉の収縮、気の揺れ具合、力の移動、骨の軋みまで、全てを視て瞬時に判断しろ」

 そう言いながらも、容赦の無い攻撃は止まるところを知らない。

 昨晩も一昨晩もその前も、何度も何度も傷つけられ、血を流し、その都度再生を繰り返してきた。そんな生活が続いた今晩、彼の体に異変が生じ始める。

「なん、だ……? なんか、おかしい……」

 百目鬼の戸惑いに気がついたのか、鱗脚の手が止まる。

「とうとうか……」

 そう呟いた声は突然吹いた風にかき消され、森のどこかへ消えていった。

 百目鬼の大きくめくれ上がった皮膚が再生し始めたのだが、いつものように遅々と元通りになるのでは無く、繊維状のものが体から生え、それが折り重なることで皮膚を構築していったのだ。

「なに、これ……」

「それは再生繊維というものだ。通常の再生よりもより緻密に、そして素早く身体を元に戻すことが出来る上に、妖力の減少も少なく済む。主に上級以上で、回復力の高い妖の身体に起こる現象だが……。そうか、お前は上級以上の素質があったのか」

「どういう、事……?」

「まだ分からんのか、ノロマめ。お前の身体はどんどん妖の血が濃くなってきているのだ。お前はそろそろ選択しなくてはならない。妖として生きるか、人として妖の力を制御するか。それとも、諦めて帰るか。まだ間に合う。さあ、どうする」

「そんなの、決まって、いる! 俺は、人間だ!」

 間髪入れずに、迷うこと無く、スッパリとキッパリと、師匠にむかって宣言した。 

「よく言った。これから修行は第二段階に入る。更にキツいものになる。覚悟しろよ」

「望む、ところ、だ」

 鱗脚はただ百目鬼を傷つけ続けていた訳では無い。再生を繰り返させる事で、妖の血をより濃くしていたのだ。勿論人の枠からはみ出ないように注意しながら。そして今日第一目標である『再生繊維の発現』に漕ぎ着けたと言う訳だ。

 だが、これはテストのような側面もあり、鱗脚はもし再生繊維が発現しないのなら、最終日まで本題には入らず、そのまま千羽に帰そうと思っていた。百目鬼は知らぬ間に合格を貰っていたのだった。

「そうか、お前がその気なら、俺も止めまい。今日はここまでにする。それと、明日からの3日間、お前は帰ることなく、ここで生活して貰う」

「なんで……?」

「お前には一度完全覚醒してもらう」

「完全覚醒……」

 聞き慣れない言葉に、眉をひそめる。

「つまりは完全な妖者になってもらう」

「え?」

「妖に成り、お前に眠っている、本来使えるはずの力を、その感覚を知れ。勿論、人に戻る算段まで整えてある。それに、保険として助っ人も呼んであるしな。心配することはな……」

 そんな戸惑いを呼ぶ発言を最後に鱗脚はどこかへ駆け抜けて行ってしまった。

 1人取り残された百目鬼はその言葉の意味を探ろうと、何度も(かい)(しゃ)してみた。それでも何も分からないままに、気がつけば家の玄関を開けていた。

「ただいま~」

「お帰り。ご飯出来てるよ。今日は帰り、早かったのね」

「うん。母さん、俺、明日、から、3日、帰れ、ない、事に、なった」

 ダイニングテーブルに腰掛けながら、台所に立つ母の背にそう投げかける。

「あら、どうしたの」

「特別な、修行、あるんだ」

「無理はしてない?」

 母が心配そうな目で見てくる。その目は彼の『眼』なんかよりも、ずっと見透かすような気がして、心がザワッとした。それでも母を心配させまいと、笑顔を取り繕う。

「うん。平気」

「嘘ついた」

「え?」

「あなた小さい頃と変わってないのね。嘘をつく時、いつもより口角が上がるのよ。ちゃんと話して。無理はしてないの?」

 こんなにあっさりとバレるなんて、思ってもみなかった。これは敵わないな。と、彼は観念して正直に話す事にした。

「ホントは、ちょっと、危険な、修行を、するみたい。無理もするかも」

「……」

「でも、きっと大丈夫。俺、ずっと、頑張って、来たんだ。きっと、それが、応えて、くれる、はず。だから、心配、しないで。きっと、三日したら、帰って、来るから」

「きっとじゃだめ、ちゃんと帰ってきなさいね」

 母は息子を止める手立てを知らなかった。いや、厳密に言えば知って居たのかも知れない。それでも、大人になろうとする我が子を止めるのが、良い事だとは思えなかった。

「うん。ちゃんと」


 *


 翌日、とうとうこの修行期間、一番の難所がやって来た。

「それでは3日間の集中修行を行う。今日からの三日間は昼夜関係なく、俺と行動を共にして貰う。それと、(とも)()からこの修行の許可を問うた際につけられた条件から、事前に通達したように、助っ人を呼んである」

 鱗脚がそう言うと、背後に控えていた者たちが前に出た。

「先ず、お前の妖気を常に観測する者として、メダカ。お前の体調を管理する者として、()(たん)(ざか)()(まい)。だが、今日は桜樺(おうか)だけだ。そして、お前の衣食住を提供する者として、三柏翁(さんはくおう)! 以上の3名が助っ人だ。ちゃんと感謝しろよ」

「うん。3人とも、ありがとう」

 心強い助っ人が来たと思った。それでも、こんなに人や妖を集めない事には、智喜が許可しないほど、危険な修行が待っているのかと百目鬼は生唾を飲む。

「初日から早速、お前の妖化を始めて行く。やること自体は簡単だ。だが、ちゃんと戻って来ないと、お前はただ妖になり、そこら辺の術者に退治されて終わりだ。今一度問う。覚悟は出来ているか!?」

「ああ、構わ、ない」

 嫌なイメージも湧いたが、それでももう決心はしてあった。

 鱗脚が珍しくゆっくりと頷くと、桜樺が前に出る。

「百目鬼様、本当に宜しいんですね? 今日の為に作り上げた、この劇薬を飲んだら最後。百目鬼様は霊力を失い、妖力のみの状態になります。そうなれば先ず暴走状態に陥り、自我を失った状態になりますので、何とか自力で、ご自身の気力で暴走を止め、戻ってきて下さい。一応鎮静剤や解毒剤も用意しては居りますが、暴走状態がどのようなものか、ここに居る誰もが予想出来ませんので、それも効くかどうか……」

 桜樺に差しだされた箱を開けると、ビー玉ほどの丸薬、『(よう)()(がん)』という、数種類の妖花を煎じて作った丸薬が入っていた。効能は先に彼女が話したとおり。……だが、百目鬼は何も迷うこと無く、それを一呑みに(えん)()した。

 それは即効性があるようで、呑んで直ぐ、身体に異変を感じた。

 まず、力が抜けた。これは人として必要量の霊力が抜けていく事による症状。

 次に沸々と力が湧いてきた。それと同時に意識が(もう)(ろう)としてくる。これは、妖気が異常に高まり、また強制的に妖力へと練られる事による症状。

 そして一声「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」と雄叫びを上げた。

 これにて全症状そろい踏み。百目鬼隼人の暴走が始まった。


 完全に妖化した百目鬼は、いつも腕だけに出ている眼が全身に(・・・)広がっていた。

「鱗脚様、百目鬼様のカルテにある暴走状態とは、まるで姿が違うようですが」

 桜樺が掲げるカルテには、百目鬼の主な暴走症状として、『腕に眼が現れる・千里眼の制御不可による昏倒・脳への負荷あり』と書かれていた。

「そんなに心配そうな声を出すな。これは予想通り。今までの暴走は先祖返りとしての枠の中で起こったもの。今は違う。元々アイツの中に居た妖が、表に出てきているのだ」

「ですが、百目鬼様は百々目鬼の先祖返りでは?」

 桜樺は言外に、百々目鬼の先祖返りなら腕にしか眼は現れないと抗議した。

「いや、これで合ってる。アイツの中に居るのは、普通の百々目鬼ではなかった。というだけの事」

「個体差ですか……」

「まあ、そんなものだ」

 と2人が流暢に話している間にも、百目鬼は頭を抑え、何かと戦うかの様に抵抗し、身体を大きく揺さぶっていた。

 彼の脳内は大きくなった先祖・百々目鬼の力により、より高度な千里眼が発現し、山中の、いや町内の、市内のもっと広い様々な情報が、まるで大図書館の本棚の如く、理路整然と並べられていた。だがその力に呑み込まれてしまっては、人を辞めなくてはならない。必死に抵抗する百目鬼。

 だが、そんな彼の前に立ちはだかる者が居た。

「よし、じゃあ、組み手を始めようか」

 鱗脚が誰も想像していなかった行動に出る。なんと、独り自分の先祖の力に抗う百目鬼を思い切り殴りつけたのだ。

 うつ伏せで地面に叩きつけられる百目鬼は、ピクリともしなくなっていた。

「ちょっと、鱗脚の旦那。そんなことしたらコイツ、死んじゃうぜ?」

「そうです! いくら修行に口を挟むなと言われても、これは黙っていられません」

 メダカと桜樺が、鱗脚の背に向かって抗議する。

「まあまあ、お2人さん。此奴にも訳あってのことじゃ。暫く様子を見ていてやってくれ」

「……」

 三柏翁に止められ、一旦閉口する事を選んだ二人だったが、やはり納得は出来ていない様子で、いつでも止めに出られるよう、前のめりに身構えている。

「さて、どうなることやら。ひょひょっひょ」

 地面に伏す百目鬼の体が、ピクリと動く。死んでは居なかったようだが、どうにも様子がおかしい。地面に手を突き、スタッと立ち上がる今の彼には、先程までの抵抗が無く、ただ鱗脚を敵と認識して対峙していた。

 百目鬼の身体は完全に乗っ取られた。

 そうなった百目鬼は、今までの彼とは比べものにならないほど正確な突きを繰り出す。それを間一髪で反応し避ける鱗脚。彼が回避行動を取らされたのは、実に修行始まって以来初の事だった。だが、鱗脚も負けていない。直ぐさま攻勢に出るが、いとも簡単に避けられてしまう。まるで未来が見えているかのような回避行動に、一同目を逸らすこと無くじっと見守る。

「もしもこの小僧に眠る力が、かつてこの山に居たあの百々目鬼のものなら、こんなもんじゃ無いだろっ! もっとだ! もっと! 己の限界を超えろ!」


 この組み手はここから翌日の昼過ぎまで続き、桜樺は椿姫(つばき)と交代、メダカはまだ平気な顔をして起きていた。

「流石だな……。まだ立っていられるのか……」

 かつての百目鬼との組み手なら、汗の一滴も垂らすことの無い鱗脚だが、今、彼は全身に傷を負い、汗と血にまみれていた。

「すげ~……じゃねえ! 百目鬼の妖気は……。おいおい、こりゃ駄目かもしれんぞ」

「駄目とはどういうことですか!?」

 椿姫が噛みつかんばかりに身を乗り出して問う。

「一晩……いや、正確には昨日の昼からだから、もうかれこれ一日以上経ってるって言うのに、まだ霊力が少しも復活してねぇ」

「え!? で、では、鎮静剤を!? 解毒剤が先ですか!?」

「もうどっちも、間に合わねえかもな……」

「そんなっ。これじゃ、()(づる)様に合わす顔がありません!」

 いつも怪我ばかりしている智鶴にとって、牡丹坂姉妹は旧知の仲である。そんな彼女にとって、現状を静観するには耐え難かったのだろう。顔を伏せ、泣きそうに顔を歪める。だが、その時だった。百目鬼のはだけた修行着に張り付いていた「何か」がハラリと落ちた。

 更に鱗脚へ攻撃を出そうとした百目鬼の手が止まり、足下のそれに釘付けとなる。

「ち、づる……?」

 彼の目にはあの割り符が映っていた。

 暴走状態になってから今まで、言葉として取れる言語を発していなかった彼が、実に24時間以上ぶりに人語を放った。全員がそう言ったと聞き取った。

 そして、その言葉を最後に、バタンとまるで木の板が倒れるようにして、百目鬼は仰向けにぶっ倒れた。

「百目鬼様!」

 椿姫が心配そうに駆け寄る。

「旦那、お疲れ様。組み手をして発散させることで、アイツの暴走を一定以上振り切らないようにさせてたんだろ? 全く流石だぜアンタはよぉ」

「俺のことは良い……。アイツは、アイツは今どうだ……?」

「すっかり元通りだ。乗り越えたんだなぁ。ドーメキもドーメキですげぇや。百々目鬼の姉御の力を抑え込んだんだもんなぁ」

「いや、まだ予断を許さない状況だ。妖力も呪力も暴走すれば揺り返しがあるかもしれん。それも乗り越えてくれんことには、第二段階クリアとは言ない。メダカ。悪いがまだ見ててやってくれ……。俺はちょっと眠る……」

「あいよ。お疲れさん」


 

 すっかり日も沈み辺りが真っ暗になった頃、鱗脚がのそりと目を覚ました。だが、百目鬼はまだ眠ったままだった。

「メダカ。百目鬼の調子はどうだ?」

「変わった所はねえな。揺り返しという奴も起きちゃいねえ」

「そうか。牡丹坂の。百目鬼の調子はどうだ?」

「変わりありません。脈拍も正常ですし、血液もこれと言って大きな異常は見られませんでした。この分だと、恐らくあと数刻で目覚めるかと」

「そうか……。お前ら、コイツが目を覚ましたらもう帰って大丈夫だ。危険があって見張りが必要な修行は、コイツが無事に起きた時点で終了。そこからは完全変化の感覚を薬無しで思い出す修行が始まる」

「また妖になるのですか!?」

「いや、違う。妖にならないギリギリを覚えてもらう。何、一度完全に妖となったにも関わらず、戻って来られたんだ。もうコイツは大丈夫だ」

 そう言うと彼は百目鬼の前にしゃがみ込み、頭を撫でてやった。

「……ん」

 百目鬼の顔がクシャッとする。そしてゆっくりと目を開いた。

「あれ……? 俺……」

「起こしてしまったか。牡丹坂とメダカの診察が終わり次第、修行を再開する。診察が終わったら、お前がいつも魚を捕まえている川辺に来い」

「あ、はい。あれ? 何でそれを知って……」

 百目鬼の疑問を聞き終わる前に、鱗脚は走り去って行った。

「ははは、ああ見えてちゃんとお前さんを心配してるのさ」

 メダカがそんなことを言って笑った。


 メダカも椿姫も身体に異常は見当たらないとの診断を下してくれたので、(しっか)りとお礼を言って別れる。

 そして彼がいつも魚を捕まえている川辺に向かって歩いて行くと、何だか香ばしい良い香りがしてきた。

「お待たせ」

「遅いぞ! 診断は!?」

「良好」

「よし!」

 鱗脚とたき火を境にして座ると、焼けた魚を差し出された。

「良いの?」

「良いから食え。俺は人の作るような、良いもんは作ってやれん! だが、これくらいでなら、弟子を労おう!」

「ありがとう」

 きちんと礼を言って受け取ると、良い香りのするそれにかぶり付く。丸一日何も食べずに戦い続けた後の塩味の効いた焼き魚は、ストレートに胃袋へ響き、旨さのあまり叫びだしそうになる。

「食事のついでに、聞いて貰いたい話がある」

「改まって、何?」

「お前の先祖、お前に眠る妖についてだ」

「……!」

 百目鬼は驚いた様な顔をする。

「知ってるの?」

「ああ、アイツは100年だか、1000年だかずっと前、ここに居た百々目鬼で間違い無い。お前の暴走状態を見て確信した」

「俺の、先祖」

「簡単に話すから、ちゃんと聞いとけよ。彼女はただの百々目鬼じゃ無かった。父に百目、母に百々目鬼を持つ、ハーフの妖だった。

 似て非なる千里眼を両親に持った彼女は、(がん)(こう)(けい)々(けい)として一瞬の隙も無く、様々な強者と渡り合った。この山切ってのエース的な存在だった。人も妖も関係なく、誰もが彼女を()()しまた尊敬すらしていた。

 そんな最強の日々も無限には続かなかった。アイツはある時、人間の男と恋に落ちた。そして山を去った。旦那が死んだ後にまた山に帰ってきが、人と(まぐわ)った彼女は妖から蔑まれ、かつての()(こう)を失った。そして、結局居場所を見つけられないまま、自ら地獄へ還った」

「……そんなことが」

 2人とも不規則に爆ぜるたき火を呆然と見つめていた。時折風に吹かれては、その(ほむら)を揺らす光景にただただ見とれる。

「そうだ。アイツはとても強い妖だった。懐かしい、俺ともよく色んな無茶をしたもんだ。そんなアイツが強いと言われてた原因は、アイツの妖術にあった。アイツの使う力は現実の全てを捉え、全てを視、そして未来まで視ていたと言われている。……その名も『万里眼』」

「万里、眼」

「そうだ。千里眼よりも多くを捉えるその術は、攻防どちらをとっても、右に出る者が居なかった。本当に懐かしい。人の男と恋に落ちさえしなければ、今も山に居て、一緒に色んな事が出来ただろうに。……惜しい、実に惜しい」

 心から名残惜しいという雰囲気が、言葉や仕草のあちらこちらに散見された。

「好き、だった、の?」

「馬鹿言え。そんなこと無い」

「ふ~ん」

 火に照らされているからだろうか、鱗脚の顔が赤いような気がした。

「さあ、百目鬼。お前にはこの万里眼を習得出来る可能性が出てきた。辛い修行になるが、どうだ? やるか?」

「勿論」

「よし! 腹は膨れたな!」

「うん」

「さあ、立て! さあ、構えろ! 修行だ!」


 三日間の集中修行も残すところあと一日。果たして百目鬼はこの日の暴走を糧に出来るのだろうか……?

どうも暴走紅茶です。

今週も読みに来てくださり、大変ありがとうございます。

休日前に立てた、週末の1人行動の予定って、どうして金曜日の夜から破綻するのでしょうか?

意志薄弱にしても、早すぎる気がします。

それでは今週はこの辺で。また次回!

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