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紙吹雪の舞う夜に  作者: 暴走紅茶
第三章 弱いワタシ
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17話 秘められたチカラ

「グワ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 ()(づる)の口から妖の様な雄叫びが上がる。

 そして、その気は霊力とは違った(まが)々(まが)しさを(はら)ませ、彼女の純白の呪力は深紅に染まっていく。

 また、体にも変化が訪れる。

 肌からは血管や筋が浮かび上がり、目はぐるんと廻り、真っ白になった。髪は白いまま乱雑に伸び、犬歯は伸びて牙となり、爪は鋭利に、左の額からは長さ4、50センチメートルほどの白くて細長い角が生えた。

 更には、智鶴の持てる紙という紙が彼女の周りを乱舞し始めた。細かいものはくっつき、大きな者は細かくなり、吹雪の中を歩いて居るかの様であった。

 そう、その姿は……

――その鬼、額より長き一本角を生やし、長い白髪と白い目そして無数の紙を従え――

 文献にあった、紙鬼の特徴と一致していた。

「何、これ、鬼気!? ち、智鶴……」

 (どう)()()が混乱した様子で智鶴の方を向くも、直ぐに額を抑えて倒れた。

「鬼気に、当て……られて、暴走、しそう……」

 動けなかった。目の前で大切な人が壊れかけているのに、止めに入れない。

 百目鬼はうずくまり、(りょう)()は安否が分からない。今の智鶴を止める者は居ない。

「グワ~~~~~~~~~~~~~~」

 智鶴が雄叫びを上げながら、両手で空を切り裂くと、彼女の周りを舞っていた紙が一塊に(じゃ)(こつ)()目がけて放たれる。

「ふん、そんな技、通用しないと……しないと……と、と、と、!」

 これまで攻撃の傾向から、難なく受け止められると思った蛇骨鬼だったが、その威力も重さも桁違いに跳ね上がっており、只正面から受け止めるのは無理と判断した。

「く、くそ! (じゃ)(こつ)(とう)!」

 その技により紙吹雪を切り裂こうと考えたようだが、今妖を襲う紙は20枚どころでは無い。何百何千という紙吹雪の塊が迫っているのだ。その内のたった数枚を切った所で状況が変わる訳も無い。

 智鶴の技は蛇骨鬼に直撃。その、数多い肋骨を半分以上削り、再び智鶴の周りへと戻っていった。どうやら、ただ紙をぶつけている訳ではなく、その一枚一枚が()(ろう)(かぎ)(つめ)と同じく鋭利になって居る様だった。謂わばトンネルを掘るシールドマシンをぶつけられたようなものだ。

「ガウ! ガウ! ギャ~~~~~~~~~~~」

 だが、智鶴の攻撃は止まらない。蛇骨鬼が1回目のダメージを回復する前に、大量の弾丸が彼女の元から放たれた。そして、それがまた妖の骨を叩き折る。更に、その攻撃の背後から音も鳴く忍び寄ると、高く跳躍、肩に担いだ紙刀は、今までの何倍も切れ味を増しており、一発で蛇骨鬼の首を刎ねた。

「あ、あわわ、あわ、ああああ。覚えてろ……貴様、覚えてろよ!」

 再生する間も与えられず、何度も致死量のダメージを負わされた蛇骨鬼は断末魔を残し、塵となったが、その声は今の智鶴に一切届いていなかった。

「ぐふぅ……ふしゅ~」

 智鶴の口からは何とも恐ろしげな音が漏れている。ふらり火は、最初の攻撃を見た瞬間に逃げ出していた。智鶴の願いはただ一つ。妖を滅する事、そして、今この場に妖の匂いは一つ。

「アヤカシ……イタ……」

 ゆっくりと百目鬼に向かっていく智鶴。

「智鶴! 俺、だよ! 百目鬼、だよ! 敵じゃ、無い!」

 自分も壊れそうな程に頭が痛いのにも関わらず、智鶴を止めようと必死に声を掛ける。

「誰か! 誰か~~~~~~~~~~~~」

 完全に智鶴は飲み込まれていた。もう自我が残ってなどいなかった。彼女の願った妖を滅する。それだけを目的に動く鬼。それが今の彼女だった。

「ヒヒッ。ウゴケナイ……チャ~~ンス……」

 彼女は拳を堅く握り、それを振り上げた。

「うわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~………………」

 頭を抱えたまま只悲鳴を上げる百目鬼。それでも、その拳は突如現れた刀の鞘に遮られ、彼へは届かなかった。

「千羽のお嬢さん。それ以上闇に墜ちてはいけない」

 百目鬼と智鶴の間に割って入る者が居た。それは何とぬらりひょんだった。

「ジャマ……スルナ……」

 智鶴は再び紙を束ね、操作し、敵を襲おうとするが、ぬらりひょんはその全てを片手に持った打ち刀で抜刀することなく、その鬼気ごと切り裂いた。

「紛い物の力など、届きはせぬ!」

「ガ~~~~~~~~~~~~」

 智鶴は再び雄叫びを上げると、ぬらりひょんへ攻撃を繰り出す。だが、何を繰り出しても、全ていなされ、受け止められるのみ。

「どうした、どうした。我が憎いのだろう? ほら、もっと本気で来ないと、攻勢にでるぞ」

 智鶴は闇雲とも思える攻撃を何度も繰り返す。そして、ぬらりひょんは何かを待つようにそれをいなすだけ。攻撃をしようとはしなかった。

 そして数分が経った。

()(ばく)(じゅつ)! (からめ)(いと)!」

 どこからかその声と、細く撚った紙が智鶴の手足を木々に縛り付け、彼女の動きを封じた。

「これは、一体……」

 (とも)()率いる援護隊が駆けつけたのだ。そして、その一軍の先頭を行くのは()(あき)だった。

「智鶴! 智鶴! 落ち着いて、元に戻って!」

 どんなに姿が変われども、どんなに溝があれども、妹の事は分かる上に心配なのだ。だが、智鶴はその心知らず、振りほどかんと暴れ、引きちぎる。その度に新たな糸を繰り出し、縛り直す。

「ちょっと熱いよ……ごめんね。()(ばく)(じゅつ)! (しゅう)(えん)!」

 智秋の放った紙の糸が一気に燃え上がった。

「グワ~~~~~~~~~~~~」

 紙鬼と化した智鶴の悲痛な叫びが上がる。だが、鬼気に散らされ、火も糸も直ぐに消えた。それでも諦めんと、直ぐに次の糸を放つ。

 そうして、智秋の素早い対応に、智鶴の動きも少しずつ丸め込まれていく。

「智秋、よくやった。これが今まだ効くかは分からんがのう。ほれ、()(そう)(じゅつ)(そっ)()(あやかし)(ふう)じとついでに(おに)(ふう)じ」

 智喜の手から白紙の札が放たれる、それは空中で文字が現れ、智鶴にぺたりと張り付いた。すると智鶴の体から鬼気が抜け、元の姿に戻り、糸が切れた操り人形の様にベシャッと地に倒れた。

「あ、ありがとう、ございます……」

 鬼気が消え、百目鬼が立ち上がれる様になると、智喜に礼を言った。

「何、お主も良くやった。気にするでない。それより、竜子はどこじゃ」

「あっちの、斜面に、落ちて、行く、ところ、見ました」

「それ、門下の者たちよ。取り敢えずは竜子を探してくれ」


どうも。

暴走紅茶です。

寒いですね。初雪暴風あめあられ。

気がつきゃ今年も年の暮れ。

あと何回の更新で。

今年が終わる事でしょう?

ではではまた来週です。

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