第一部 あらすじ
第1部のあらすじです!
明日から始まる第2部の前に、これで復習しましょう!!
気になった話や、思い出せない部分は、是非本編を読み返してみてくださいね!
※あらすじなので、大枠の抜粋です。細かいお話や二部につながる伏線や詳しい伏線は、是非本編にて!
【第一章 操られたアヤカシ】
清涼市は千羽町。そこには日本で5本の指に入る呪術大家「千羽一族」が住んでいた。吹雪会という多くの大家をも従える、大家中の大家。千羽家。その長女、千羽智鶴は高校1年生。入学式に心沸き立つ彼女だったが、そんな春の季節、千羽町に知らぬ人の気配が現れる。最初こそ気のせいかと思われたが、日に日にそれは千羽に呪術師が侵入しているという確信に変わる。その正体を追う智鶴と千羽家に使える、百目鬼の血が混ざった“混ざり者”の百目鬼隼人。そして現れる侵入者。それは蛟を従えた契約術師の少女、十所竜子だった。竜気を操る彼女の知らぬ術に翻弄されながらも、創意工夫の末、ギリギリの所で勝利を収める。彼女を捉え、千羽の屋敷に戻った智鶴は、当たり前に重い処罰が下されると思っていた。だが、当主・智喜が告げたのは、「竜子を千羽に迎える」という納得のいかない意向だった。
【第二章 ムカつくアイツ】
千羽に迎え入れられた竜子だったが、千羽への侵入者として現れ、百目鬼を傷つけた彼女を許せない智鶴は、何度も竜子と衝突する。そんなだからコンビネーションも上手くいかず、仕事にも支障を来していた。そんな折、警察から捜査協力の依頼が舞い込む。それは市内に現れたのっぺらぼうを調べて欲しいというもの。当主・智喜はその依頼を、智鶴・竜子・百目鬼の3人で調査するように指示する。嫌々ながらも、『仕事だからしょうがない』と自分に言い聞かせ、その仕事をこなす智鶴。調査の末、街の中で捕らえたのっぺらぼうの『唯雄』。彼は一家で移動する最中、家族とはぐれてしまったのだという。彼の家族を探す中、立ちはだかる上級妖『鵺』。智鶴は緊急事態だからと、竜子と協力し、戦闘を始める。身を挺して攻撃を繰り出す竜子が気絶したのを見た智鶴は、血が沸き立つような、今までに感じたことのない力の存在に気がつく。全身全霊、最後の力を振り絞って繰り出した一撃によって、鵺の頭を切り落とすことに成功。唯雄を家族に引き渡すことにも成功し、一件落着。余りの疲れとダメージから、屋敷に戻るするなり気を失うように眠りこけた智鶴と竜子。翌日、目を醒まし、智鶴の母・美代子が作ってくれた冷やし中華を食べながら、二人は笑い合うのだった。
【第三章 弱いワタシ】
唯雄との一件から、少しずつ距離が近づいてきた智鶴と竜子。だが、そのこととは別に、鵺との戦闘を経て、自分らの無力さを思い知った面々は、各自高みを目指して新たな行動を始める。竜子は実家へ指南書を取りに帰り、智鶴はずっと遠ざけて居た道場へ向かった。百目鬼は自身に重くのしかかる過去と向き合うべく、実家に帰る。だが、各々が各々で壁を乗り越えようとしているところに、大天狗を祭る鼻出神社を有した「鼻ヶ(が)岳」に信じられないほどの妖気の集合が確認された。それは、智鶴の宿敵ぬらりひょんとその百鬼夜行。「真実を知りたくば、相応の覚悟を示せ」と智鶴には理解出来ない言葉を吐かれ、戦闘が始まる。苦戦を強いられる中、禁じられていた20枚以上の紙を使った智鶴は、力が暴走してしまう。混ざり物でもないはずなのに、鬼と人が混ざり合ったような姿になり暴れ狂う智鶴。蛇骨鬼を追い払うも、智鶴の暴走は止まらない。そこに駆けつけてきた姉の智秋が糸状の紙を操る術「紙縛術」を使い、拘束。智喜の呪符が効果を発し、何とか場を収めた。
戦闘に敗れ、地面に叩きつけられた竜子と、鬼気の暴走により気を失った智鶴を千羽屋敷に連れ帰り、治療を施すも、智鶴はそれから1週間目を醒まさなかった。その期間中、智鶴は不思議な夢を見ていた。夢の中で智鶴は歴代の紙操術師になり、さまざまな歴史を目の当たりにした。さらに夢の中で、知らない声に話しかけられる。その声は「私はお前」だと言って、力の解放を迫ってくる。智鶴はそれでも自分の力でどうにかしたいと宣言し、その甘言を振り切る。
目を醒ました智鶴。当主・智喜は彼女に百目鬼と竜子は既に出稽古先を決めたが、お主はどうする? と問いかけられる。是非も無くと答えた智鶴は、強さを求め千羽から飛び出す決意をするのだった。
【第四章 強さのイミ】
ぬらりひょんの百鬼との戦闘を経て、自分の余沢を痛感した面々は、それぞれの場所へ修行に行くことになる。智鶴の着いた木枯山は、不思議なガスが充満しており、呪術を使うと霊気を放出させられてしまう。鬼気を扱うだけでもしんどいのに、智鶴はそのガスの対処も迫られながらの修行の日々。師匠であり、叔父である千羽智成と、山小屋に住み込んでいた魂の呪術師神座栞奈と共に試行錯誤を重ね、鬼化する呪術「紙鬼回帰」を修得する。竜子が赴いたのは、雄呂血川は龍刻の谷。そこで待っていたのは、雷竜――羅依華を従えた女性、常盤文子だった。人の姿をとり人語を解する美夏萠に驚きつつも、かつて戦闘中に禁呪を使用した結果、人を超え龍になってしまった文子の元で、美夏萠の力を引き出す術「境界霧化」を扱えるようになる。そんな2人とは打って変わって、百目鬼は実家にほど近い金峰山へと向かった。そこでは以前出会った妖、鱗脚と三柏翁と――見知らぬ妖、手目目高が待っていた。千里眼を操る手の目であるメダカに妖術を、鱗脚には戦闘を習い、暴走する妖力を何とか押さえつけ、千里眼を超える「万里眼」という新たな力と拳を強化する手袋型の呪具を手に入れるのだった。
【第五章 続きのハジマリ】
修行の日々を終え、千羽町に戻った3人。丁度時を同じくして、呪術界では神社のご神体が呪的に侵される事件が発生していた。その事件に対して、千羽家の率いる「吹雪会」では、千羽家に対する不信感が芽生え始めており、監査の履行を提案される。そこで選出されたのは、天候術宗家獺祭家の当主補佐獺祭漢吉郎と呪具制作一族弐ツ杁家の跡取り候補弐ツ杁杏銃。二人が監査をする中、雪華術宗家雪ヶ(が)原家の領地内で万年雪が溶け始めているから、調査を手伝ってほしいという依頼が舞い込む。万年雪とは雪見入道という妖が発する妖気がつくり出す現象。今日本中で起こっている事件と関係があるのではないかと、智鶴と百目鬼、竜子、そして漢九郎と杏銃が雪ヶ原に送られる。現地に着き調査を始めると、深く傷つけられた雪見入道を発見し、保護。その後、日本の暗部の更に奥深くに存在しているという、物部家の傘下だという呪術師と会敵する。何とか勝利を収めるが、捉えた敵が忽然と姿を消すのだった。
監査が終わり、ほっと胸を撫で下ろす3人だったが、再びぬらりひょんが現れ、強くなった力試しを提案されてしまう。敵として採用されたのは、文学妖妃・影狐・木人という3体の上級妖。それぞれが上級中の上級という強さを秘めており、苦戦を強いられる。戦闘の最中、百目鬼が再生しないほどの深傷を負い両腕を失ってしまう。だが、百目鬼の両腕から真っ黒の腕が生える。間一髪ピンチを救い、辛くも勝利を収めるのだった。
【第六章 真実とウソ】
勝利を収めた褒美にと、ぬらりひょんが過去を語ろうとする。だが、それを差し止めたのは紙操術宗家千羽家当主・千羽智喜だった。場所を千羽屋敷に移すと、智喜は自ら10年前に起こったことの顛末を語り始める。
10年前、鼻ヶ岳を訪れていたのは、千羽家当主・千羽智房。山頂付近の祠へと辿り着いた彼が目にしたのは、罅の入った封印石。元々その封印の調査と調整を目的に山へ入ったのだが、こんな異常事態に直面するとは思ってもみなかった。なんとか修復しようと試みるも、上手くいかず、その内岩の罅が進行し、真っ二つに割れた。岩の中からふよふよと光の玉が現れる。それはあからさまに本家屋敷の方へと向かっていた。それは、魂だった。それも、紙鬼の。本家には娘が居る。紙鬼の力を多く宿して生まれた智鶴がいる。智成は娘に危害を加えさせるものかと、身をなげうつ選択をとるのだった。
紙鬼が鼻ヶ岳に顕現した。それを察知した智喜は素早く門下生を集め、鼻ヶ岳へと出陣する。皆を見送った智鶴の母・千羽美代子も娘たちを守る結界を張り、家を飛び出していった。意気揚々と戦っていた千羽家一門も、次第に紙鬼の圧倒的な強さの前に押され始める。段々と落ちてくる士気。だが、そこに飛来したのは百鬼を従えた“人間”百鬼女帝こと、十所求来里だった。さらに、彼女は薬師一族牡丹坂家も率いてきてくれたのだ。頼もしい加勢に士気が高まる。押せ押せのムードが高まり、なんとか紙鬼を倒したものの、塵化が始まらない。そう、滅したと思っていた紙鬼はただ倒れていただけだったのだ。再び起き上がる紙鬼を前に千羽一門が怯む中、次はぬらりひょんの百鬼が“おもしろそうだ”と加勢する。さらに、近隣に湧いた妖の対処に追われていた吹雪会の面々も現着。求来里の作戦である紙鬼との契約を履行しようと、皆が一斉に動いた。良い風が吹いていた。だが、求来里は人知れず心に決めていた作戦を秘密裏に実行する。それは、自身が犠牲となり、紙鬼を再封印する術だった。全てが終わり、智房と求来里という偉大な術師を失い、10年前の一件は幕を閉じたのだった。
今までぬらりひょんに父を殺されたと思い込まされてきた智鶴は、あまりにも壮絶な真実に、言葉を失う。木人との戦いで両腕を失った百目鬼も目を醒まさず、失意の中迎えた文化祭。心が浮きたつわけも無く時間ばかりが過ぎていく。それは智鶴ばかりではなく竜子もまた同じであった。だが二人とも周りの助けもあり、次第に前を向き始める。そんな中智鶴にとって嬉しい来訪者――神座栞奈がやってくる。しかも、彼女は千羽に住むというのだ。そして、百目鬼も目を醒まし、ようやく日常が戻ってくるという時。初めて栞奈が千羽の夜に出た日、智鶴たちの目の前に物部五人衆が現れる。彼らとの戦闘の末、智鶴は呪われ、5歳に退行させられてしまうのだった。
【第七章 隠したダイスキ】
「約2週間以内に術が解けないと、二度と元の年齢に戻れないどころか、幼い体では鬼気を抑えきれず、最悪紙鬼化の恐れもある」智喜にそう告げられた面々は、智鶴のお世話や仕事の代行、そして元凶となった物部五人衆の「時貞萬匠」を追い始める。だが、手を拱いている内に智鶴は精神まで退行してしまうが、それをきっかけに、姉・智秋は妹のわだかまりを埋めるように手を差し伸べる。その後も智鶴の悪戯に手を焼いたり、蔵に侵入した智鶴が鬼気を暴走させたりと日常が続いていく中、ようやく百目鬼は時貞萬匠と対面する。どう攻撃するかと思案するなか、心強い助っ人が参上。それは、千羽智成と常盤文子だった。二人の加勢も相まって、時貞萬匠を捕らえることに成功。ようやく智鶴を元に戻せると高揚を隠しきれない百目鬼だったが、千羽に連れ帰り、どれほど尋問をかけようとも智鶴の術は解けないまま、時貞は自害してしまう。もう手がかりもなし、万策尽きたかと皆が落胆する中、美代子の嬉しげな声が響く。智鶴にかけられた呪いの解呪方法を見つけ出したのだ。無事に術が解け、元に戻った智鶴。歓喜に湧く千羽家はそのまま宴という流れになった。しかし、その裏では影が動き、朝なると時貞萬匠の死体は忽然と消え去っていた。千羽には結界が張ってあるというのに、誰にも気づかれないまま。
元に戻った智鶴の日常は、何だか少しだけ変わっていた。ずっと縁の途絶えていた姉・智秋が、智鶴に口を利くのだ。しかも、ずっと呪術師の仕事を休止していた姉の智秋が復帰するという。退行している間に何があったと訝しむ智鶴だったが、何とか思い出そうと頭を捻るたびに、何だかか温かい気持ちになるから、きっとそういうことなのだろうと思った。そして、これから始まるだろう姉との日々に期待が膨らんで仕方ないのだった。
そのような騒動の裏ではまだ別の闇が蠢いていた。呪術界に一切関係ない智鶴の幼馴染み、木下日向の部活の顧問――安心院先生が彼女に「千羽智鶴についてどれほど知っている」かを尋ねる。確かに長い付き合いだというのに、彼女について知らないことの方が多い。最初こそ詮索するのはよくないと思う日向だったが、次第に興味が膨らんでいき、安心院先生に声をかける。そんな先生が渡してきたのは、そこにあるはずのない本『千羽家之歴史』だった。智鶴の正体を知った日向は、だからといって自分にできることはないと明るく暖かい家に帰るしかないのだった。
【第八章 これにてマクヒキ】
原因究明が追いつかない時貞萬匠の死体消失事件。何度も出入りする魔呪局員に忙しない雰囲気の抜けない千羽屋敷で、また新たな事件が起こる。それは鼻ヶ岳の結界を無効化する鍵――呪具の消失。盗まれたのは、盗難避けに用意したダミーだからよかったとはいえ、短期間に2度も屋敷の結界を破られ、気がつかないウチに物を盗まれたことから、内部犯の可能性も浮上してくる。
智喜が頭を抱える中、智鶴はこれまで智秋との間にあったわだかまりを埋めるように、姉妹での時を楽しんでいた。一緒にご飯を食べて、一緒に学校に行って、一緒に道場へ赴いて……。ある学校帰り、姉に連れられて鼻出神社でお参りをすることに。賽銭を投げてこれからのことを想いながら手を合わせていると、空から光の玉がふよふよと落ちてくる。初めて見るものだったが、智鶴の直感が触れてはならないと叫び、眠る紙鬼の魂が猛烈に反応を示している。血の気が引いた智鶴は、咄嗟に姉の手を掴んで走り出す。だが、境内から出る直前、その光に触れてしまい、姉は絶叫する。その光景から逃げるように帰った智鶴は、祖父にことの顛末を語るのだった。
10年前の再来と判断した智喜は、門下生を集め、鼻ヶ岳へと出立する。だが、智鶴はようやく姉妹仲を取り戻せたところだというのに、姉を失うのが怖くて仕方なかった。母に諭され、重い足をひきずりながらも鼻ヶ岳へ赴いた智鶴の目の前には、巨大な鬼が立っていた。優柔不断に行動を起こせない智鶴だったが、百目鬼と話したことで想いが吹っ切れ、前線に躍り出る。
そんな鼻ヶ岳の他にも、吹雪会各所の領地内には、あり得ないほど上級妖が湧き出していた。それも10年前を思わせ、早く鼻ヶ岳に参じたいのにと思う彼らの心をかき乱していた。ただでさえ強い上級妖が何体も……しかも、吹雪会には非戦闘一族もいるのに。どの家も悶々とした気持ちを抑えながら戦う中に、すっと光明が差し込む。
戦いの最中、智鶴はあること――竜子がいないことに気がつき、嫌な予感が脳裡に現れたが、それを振り切るように紙鬼と向き合っていた。栞奈は魂から紙鬼にアプローチし、百目鬼も解析を続け、美代子は結界で皆をサポート……と、そこかしこで各々が最善を尽くす中、紙鬼が第二形態に移行する。素早い行動に対処が遅れ、一旦敗走を……としたとき、百目鬼が紙鬼の前に立ちはだかり、一撃。紙鬼を転ばすことに成功する。それと時を同じくして、山には新たな人影が現れた。それは、吹雪会を率いて到着した魔呪局直轄の戦闘部隊『金烏会』に所属する千羽智成とその相棒片桐冥沙を始めとする一群だった。加勢にほっと胸を撫で下ろした智鶴は、智秋を元に戻す算段を聞くために智喜を探すも、彼もまた戦線から姿を消していた。百目鬼に探してもらおうと拠点に戻った時だった。美代子最大の結界術が展開する。大詰めだと張り切る彼女だったが、姉を助けられると信じて止まない智鶴は、その術を辞めてくれと懇願し、叱責を喰らう。項垂れる彼女の手をとったのは、なんと今まで可愛がってきたテディベアのイッチーだった。言葉を話せないイッチーは、智鶴の手を引いて、山頂へと駆け出す。
山を登る最中、美代子の結界が破られる光景を目の当たりにした智鶴。戦況が一層悪化したことに気がつき、自責の念に駆られた彼女は、イッチーに一言謝り戦線に戻る。前線には、紙鬼の他に鵺も湧いていた。紙鬼と鵺、両方の攻撃を捌きながら、対応に追われる中、智鶴を助けようと間に飛び込んできた中之条結華梨が命を落とす。仲間の死と、悪化し続ける戦況と自責の念が折り重なり、これこそ“その時”だと直感した智鶴は、紙鬼に呼びかけ「紙鬼回帰・極」を発動。それは9割の鬼化。暴走スレスレの鬼気が渦巻き、彼女に新たな力を与えた。これでようやく互角。戦況は大きく変わらない。それに気がついた百目鬼は、まだ完成していない力「黒腕」をなんとか扱い、二人で力を合わせ、紙鬼に片膝をつかせることに成功するのだった。
イッチーがひとり登り切った山頂には、智喜がいた。そこで、千羽家の奥儀ともいえる隠し兵器を起動しようと試みていたのだった。祝詞を上げ終えた祠から、大昔に組まれた術式が起動し、紙鬼と人を完全に分離する術を発動させる。だが、それも急に現れた謎の人物によって阻まれてしまう。万策尽きたと智喜は落胆し、仰向けに倒れ夜空を見上げた。
智喜の術を破った「無形」とよばれるその存在は、そのまま紙鬼を攻撃し、完全にダウンさせた。目を見張る智鶴たちの前に、音も無く現れる人影。その人は自らを「物部萬斎」と名乗った。暗部のさらに奥深くに存在するとされている悪の呪術師一派。気がつけば囲まれてしまっている。そんな集団の中から進み出てきたのは、あろうことか黒衣を纏った十所竜子だった。そう、裏切り者は彼女だったのだ。その事実に、心をかき乱された智鶴は紙鬼回帰が解け、茫然自失の渦中に陥り、身動きが取れなくなってしまう。そんな中でも、百目鬼は諦めず物部の一群に躍りかかる。だが、抵抗むなしく紙鬼は連れ去られ、多くの犠牲を出したこの一件は幕を引くのだった。
翌日。千羽を後にしようとした智成の前に、呪術界のトップに立つ骨董屋惣五郎が現れる。何やら千羽に話があるということで、客間に通すと彼は昔話を始めた。その話によると、骨董屋と物部は志波白葉という伝説の呪術師を祖に持つ、遠い親類のような関係だという。そのことから今回の件を詫び、これからも手を貸してほしいと願う惣五郎だったが、智喜はそれを許さず、多くの条件を付け、渋々それを承諾させたのだった。
そんな騒動から1週間後、殉職者たちの葬儀が執り行われた。千羽式の葬儀、紙舞葬送の紙吹雪を見送った智鶴は、まだ気持ちの整理がついておらず、これからのどう行動するか決めあぐねていた。だが、鼻ヶ岳の天狗・八角斎との会話を機に、心を決める。
それは、千羽を出る決断だった。姉を探し、竜子を探し、全員連れ帰る決断だった。
一人で家を出ようとした朝。急に現れた母に抱きしめられる。そして、智喜は智鶴に「門外業務」として、破門ではなく仕事として送り出した。どこまでも自分に甘いんだからと、はにかむ智鶴が玄関を潜ると、その先には百目鬼と栞奈と、日向がいた。百目鬼に呼ばれてきた日向に全てを打ち明け、別れを告げ、さあ、出立と思ったら、次は藤村馨が現れ、未成年である彼らの保護と、車を出してくれることに。何度も暖かく出端をくじかれた智鶴は、千羽を後にした。だが、まだサプライズは待っている。千羽町を抜ける直前、小天狗が車に向かって飛んできたのだ。彼の言うことには、大天狗の遣いとして、智鶴たちに同行するように言付かってきたのだという。どこまでも背を押された智鶴は、意気揚々と旅に出るのだった。
第一部・了
どうも。お久しぶりです。暴走紅茶です。
早いもので、第1部が終わってから1年くらい経ってしまいました。
長々とお待たせしてしまい、申し訳ございません。
こうして第一章からまとめ直してみると、筆力が上がったのか、内容が深まってきたのか、面白いことに後半に向かうにつれあらすじも長くなってますね。キャラや用語も増えてきたので、どこかのタイミングで辞書も作りたい……気持ち……気持ちはあります。
明日から第2部第一章が始まります。
いったいどんな物語が始まるのか!? 乞うご期待!!




