12話 その時
お父様、お父様、やはり私は、出来損ないなのね……。
少女が儚い視線を送り続ける。
その先には父の背中と、次期当主の兄。
『無心の法』を最年少で完全に会得した、真の天才。
兄の目は全ての感情を失っていた。それは心を揺さぶられることが弱点の呪い師として、最高峰の成功作である事を体現している。
私がどれだけ呪いを極めようと、その域に近付くことさえ出来ない。
それはまるで、飛ぶ鳥を羨ましげに見上げる獣のようだった。
*
鼻ヶ(が)岳の戦況が、再びひっくり返った。
大勢で紙鬼に集中していたからこそ、鬼の体力を削る事が出来ていたが、上級妖の出現によって分散された今、それは困難を極める事になった。
「くそう、鵺に気を取られていると、紙鬼の攻撃が、紙鬼に気を向けると、他の妖が」
どこかの門下生から、悲痛な呟きが漏れた。
イッチーと共に山を登っていた千羽智鶴も、状況が変わったことに気がついた。
「これ、私のせいだ……」
戦場から悲鳴や断末魔が木霊してくる。その光景を目にして、智鶴の足は完全に止まる。
自分がわがままを言ったから。母の心を揺さぶってしまったから。せっかく好転した戦況を、台無しにしてしまった。私のせいで、みんなが傷つく未来へ舵を切ってしまった。
他の結界も効力が弱まったから、恐らく母は気絶でもしたのだろう。なら、もうあのレベルの結界が生産されることは、母が目覚めるまで無いのだ。いや、目覚めたところで、直ぐに術が使えるとは考えにくい。智鶴の中に最悪の想定が次々に広がっていく。
「イッチーごめん。私が甘かった。あのレベルの鬼を前にして、何を暢気な事言ってたんだろう。あれは別格だわ。全力で倒し切らなきゃいけなかったのよ。それを、お姉ちゃん、お姉ちゃんって。そりゃ、お姉ちゃんは大事よ? でも、人が無残に蹂躙されていく中で、それを言い続けるのは、只のわがままでしか無かったわ。……やっと気がついた、遅すぎた」
智鶴の懺悔に、イッチーが心配そうに裾を引く。ぬいぐるみは、まだ行ける? 登ろうよ。と、そう言っているようだった。
だが。
「ごめん。私、行かなきゃ…………紙鬼回帰」
鬼化すると、智鶴は素早く飛び去っていった。
テディベアは1人で山頂へと登っていった。
*
「いやあ。素晴らしい。これが、紙鬼……」
千羽町某所の廃倉庫。老若男女の区別が付かない声が木霊する。その人は、念写師によって紙に映し出された映像を見ながら拍手を送った。
月明かりが差し込んでも尚、彼の顔は暗く表情が分からない。
「お姿を見せられるとは、紙鬼とはそこまでの鬼なのですか?」
黒スーツの男が声を掛ける。
「見て分からないかい? これは私の野望にもっとも近い存在だ」
「それなら……」
「ああ、是非、欲しいねぇ」
その発言に、黒いスーツの集団が、ビシッと襟を正した。
*
「紙操術! 餓狼の鉤爪!」
智鶴の攻撃が紙鬼に食らいつくも、それは微々たる傷しか付けられない。
上級妖は各戦闘員達が引きつけてくれているから、自分は紙鬼をどうにかしなくてはならないのに、攻撃が通らないでは話にならない。
(もっと、もっとよ……もっと想像して……)
「そう言えば、紙鬼って、何も無い所から紙を出しているわよね……」
智鶴はそんなことを思い出した。
「私にも出来るんじゃないかしら?」
それは完全に物理法則を無視した想像だった。
なんとなしに、虚空へ手をかざしてみる。
「う~ん。やっぱりダメね。簡単な話じゃないわよね」
紙鬼の攻撃を避けつつ、次の一手を探す。
「紙操術! 巨人の拳固! 餓狼の鉤爪!」更に、距離をとって「針地獄!」
次々に技を繰り出していく。だんだん蓄積していくダメージに、攻撃も通るようになっていくが、いまひとつ決定打に欠ける。それでも、紙鬼にとっては鬱陶しいことこの上ないようで、完全に智鶴を目の敵にしていた。
と、その時。
「智鶴様! 危ない!」
左方から叫び声が聞こえた。
紙鬼に囚われている中、左から門下生を切り抜けてきた鵺が襲ってきたのだ。それを知らせるべく、中之条結華梨が叫んでいた。
流石に自動防御では上級妖の体当たりなど防げないし、丁度同じタイミングで紙鬼が拳を揮ってきた。紙鬼を紙壁で防ぎ、鵺は体を翻して避けようと考えたが、どうにも間に合わない。
(万事休す……)
そう思った。自分はここまでかと、腹をくくりかけた。
「風纏術! 突風!」
結華梨の声が、耳の奥に反響して、咄嗟にその方向を見た。
離れた場所にいたハズの結華梨が、突風に背中を押され、自分の目の前に一瞬で移動してきた。
鵺を制する方法が思いつかなかった彼女にとって、結華梨を制することなど出来るはずもない。
ドクン、ドクンと心臓の音がうるさく耳に響く。
鮮血がまき散らされた。
それは智鶴の顔にも飛び散り、視界を真っ赤に染め上げる。
「結華梨~~~~~」
鵺の口元からたらりと結華梨の血が滴った。そのまま肉を食いちぎり、彼女の体は中空に放り出される。
気を取られている間に迫ってきた紙鬼の重たい拳を、智鶴はドンと精一杯の力で受け止めると、勢いを利用して地面にいなす。
胴体の半分以上を食いちぎられた彼女が、全ての力を失い、地面に吸い込まれていく。
彼女の脳内に、走馬灯が駆け巡った。
親、兄弟の顔、一緒にそだった家、みんなで笑いながら囲んだ食卓。
(私に期待して、家を存続するために千羽へ送り出してくれたのに、本当にごめんなさい。ここまでみたい……)
中学、高校の友達。一緒に汗を流した部活。どうでもいい恋バナに、ちょっと胸がときめいたっけ。
(成人式で、また飲みに行こうねとか、夢の国に行こうねとか言ったのに、実現出来ないです。ごめんなさい)
大学の友達、講義のノートを貸して欲しいなんて言ってくれたのが、出会いだった。短すぎる大学生活だったが、それでも本当に楽しい時間だった。
(ちゃんと事情を話せないままでした。本当にごめんなさい。いつか再開したかった)
自分の身勝手な行動から、様々な人への謝罪ばかりが浮かんでくる。
(あ~あ。なんでこんな選択しちゃったんだろう。智鶴様だって、言っちゃえば余所の人なのに。ここまでする事無いのに。でも、孤独だった門下生活で、最初に寄り添ってくれて、本当に嬉しかった。ありがとうございます。ありが……)
紙鬼の追撃を逃れた智鶴が、最高速で空を滑り、結華梨を抱きかかえた。
「何してるのよ、バカ。そんな私の為になんて……。バカよ、バカ……ばか……」
(そんなにバカバカ言わないでくださいよ。私、頑張ったんですよ。ずっと強くなったんです。でも、よかった、智鶴様、無事ですね。本当に、よかった。最後にアナタを守れて、本当によかった……)
途切れかける意識の中で言葉を紡ぎ出そうと、必死に口を動かした。
「無理しないで。大丈夫よ。大丈夫!」
「智鶴様、無事で……」
なによりと、そこまで言いたかった結華梨の想い儚く、力尽きた。
智鶴の腕の中で、彼女の瞳孔がすっかり暗くなる。
「ゆかりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいい」」
智鶴は、結華梨を戦場から少し離れた木の根元に降ろしてやると、
「すぐ終わらせて戻ってくるからね。それまで待ってるのよ」
亡骸に優しくそう言って、瞼を降ろしてやった。
紙鬼が近付いてくるのが地響きで分かる。
「ごめん、お姉ちゃん。もう許せないわ」
肩口で顔の血をぐいっと拭う。紙服が赤く染まる。智鶴の瞳孔が開く。
枯れた涙は頬を伝わず、心をぐしゃぐしゃに湿らせる。原型が分からなくなるほどに。
「紙鬼ぃ! ――その時が来た!!」
その叫びを聞いた魂に巣くう鬼が、ゆっくりと頷いた。
「紙鬼回帰 極」
紙鬼の放った紙糸が、先端鋭く、背を向ける智鶴に迫るが……。
それは、爆発した智鶴の鬼気によって、全て消し飛んだ。
霧散していく鬼気の中、右目の瞳以外が完全に鬼化した智鶴が立って居た。
以前と比べものにならない程の禍々しい鬼気が、辺りの塵に触れる度、深紅の火花を散らす。
「さあ、終わらせるわよ。私の失態は、私が自分拭いさる!」
更に濃く、鬼気が彼女を取り巻いた。
*
鵺を含め、3体の上級妖が滅された。
吹雪会・金烏会の面々は、各所で勝ち鬨を上げ、次の戦闘に向かう。幸い、妖が増えることは無かったが、いつまた邪気が振りまかれるのか分からない。それでも押されることなく戦えている。戦況がそこまで悪いとは、誰も思っていなかった。
なのに。
「紙鬼がもう一体? いや、新手の鬼か!?」
伝令が走るまでもない。紙鬼の他に、濃密で、凶悪な鬼気が山に垂れ込めてきたのだ。
戦場一帯、拠点に至るまで、全ての関係者に戦慄が走った。
そこへ送れて伝令が走る。
「伝令! 伝令! 智鶴様が紙鬼化、智鶴様が紙鬼化、詳細は分からないが、暴走に注意! 暴走に注意! 繰り返す……」
伝令を走らせた百目鬼にも、まだ智鶴がどうなっているのか見定められていなかった。それでも、なんとか力にならねばと、彼女の元へ駆け出す。
(智鶴……智鶴……。なんで、なんで。智鶴まで、失ったら、俺……)
今にも泣き出しそうだった。ずっと一緒だった智秋が紙鬼になったというだけでも、相当ショックが大きかったのに、智鶴までとなると、もう感情が追いついてくれない。
紙鬼を観察し伝令を走らせるため、拝殿付近で待機していた彼だったが、事態が事態である。我武者羅に木々を掻き分け、鬼気の濃い方へ濃い方へと足を向けた。もう視ている余裕はなく、荒ぶる感情に術が解けていき、一歩踏み出す度、眼が一つずつ閉じていった。
「智鶴!」
視なくても分かった。もうこの茂みを越えれば、その先に彼女がいると。だから、待ちきれず、名前を呼びながら戦線に飛び出た。
「え……?」
彼は眼を疑った。そこに居たのは、巨大な紙鬼と、小さな紙鬼。自分よりも背丈の小さな、ちゃんと服を着た紙鬼が、紙鬼と戦っている。
「どういう、こと……?」
「俺もまだ信じられてねぇけどな、智鶴は自我を失っちゃいねえ」
「うわ! びっくりした!」
知らぬ間に、隣に智成が立っていた。こちらは『紙鬼回帰 真』を発動しているらしく、かなり濃厚な鬼気を発している。なのに、百目鬼の視界に入っていなかった。
「万里眼持ちのくせに、驚くなんて、センスねぇなぁ」
「すみません。でも、どういう?」
「ああ、俺の『紙鬼回帰 真』は、自分の制御できるギリギリまで紙鬼を表面化させて、謂わば、70%紙鬼の力を引き出している。無理してるから、飲まれる寸前で、体のサイズも変わっちまう。けどな」
智成は、今一度姪の姿を眼に写すと、先を続けた。
「あれは別もんだ。智鶴の紙鬼回帰は、完全に紙鬼と一体化している。紙鬼に飲まれるんじゃ無く、協力関係で成り立ってるとしか考えられない」
「協力、関係……」
「ああ、紙鬼が智鶴に力を与えているんだ。紙操術師が引き出してる訳じゃねえ。だからどこにも無理が生じてない。その証拠に、ほら、体のサイズまでは変わってねぇだろ」
「確かに……」
説明を受けたところで、納得にほど遠い百目鬼は、まだ気が動転して目の間を見つめたまま固まっている。
「いったいどういう絡繰なのかねえ。羨ましさよりも、嫉妬するな。こりゃぁ」
ニヤニヤと満足そうに笑う智成と、まだ思考が追いついていない百目鬼。2人の目の前では、どんどん紙鬼が蹂躙されていく。
そんな折、ふと、智鶴が木枯山で修行していた頃を思い出す。
(そういえば、アイツ、起きたまま紙鬼と会話してやがったな……)
「……鬼に祝福された少女、か。なるほどな」
「冥沙~。ここはもう大丈夫だ。俺たちは他の妖を倒しに行くぞ」
「はいはい、分かりましたよ~」
いつからそこに居たのか、木の枝に足を掛けて、ぶら下がる冥沙は、ペチコートを丸出しにして返事した。
「お前さんは、アイツの隣に居てやりな。いつアイツの紙鬼がへそを曲げるか、分かんねぇからな」
「は、はい……」
よろよろと、言われたとおりに足を踏み出す百目鬼は、まだ状況が飲み込みきれていなかった。それでも。
「やるしか、ない」
言葉に出した途端、視界が晴れた。足取りもハッキリしてくる。
「万里眼!」
*
紙鬼回帰 極を発動してからというもの、智鶴は体も頭も全てが軽くなったような錯覚に囚われていた。いや、錯覚ではないのかも知れない。事実、ほぼ完全な紙鬼化により体力筋力などの身体的な能力が上がり、鬼の魂に蓄えられていた知識によって頭脳もブーストされているのである。
「すごい、すごい、すごい! どんどん知識が増えていくわ! からだも凄く軽い!」
――だから、早く解き放てと言ったろう――
「そうね! でも、これで破門だわ」
――不服か?――
「いいえ、全く!」
冷静になったとき、きっと様々な後悔が湧き出てくるのかもしれないが、今は最高にハイだった。
「紙鬼! 行くわよ!」
――おう――
智鶴の鬼化が極まった。深紅の赤黒い火花が散る。
「紙鬼操術 拳固! 薙ぎ蹴り! 抜き手!」
拳を引き絞り、高く飛び上がる。
紙操術とは、元を正せば紙鬼の力を操る術。紙を操るのは、その副産物に過ぎない。紙操術なんて言葉も、紙鬼操術が時代の流れと共に訛り、鬼が消えた言葉であって、その始まりでは紙鬼操術であった。そんな知識も、紙鬼から殆ど全ての知識を引き出せる今の智鶴には、50音を諳んじる程の当たり前になっていた。
呼吸をするように、鬼気を拳へ、足へと集中させる。だが紙鬼も負けていない。智鶴の攻撃を受け止め、流し、反撃に出ようとした。それでも尚、智鶴の方が一枚上手であった。小さな体躯を活かし、紙鬼の攻撃をちょこまかと躱す。足場にしている紙も、ただ1枚の紙に乗り続けるので無く、飛び移り、飛び跳ね、縦横無尽に戦場を移動する。
「お姉ちゃん、やるわね。次はこうよ!」
智頭が中空で手を翻すと、紙片が現れた。先程はただ祖父の行動を思い出し、思いついただけで実現出来なかった術が、紙鬼の中に蓄えられていた先代までの知識と経験により、いとも容易く実現する。
「紙鬼操術! 紙吹雪! 焔円舞!」
紙鬼に接近し、そう唱えると、彼女を中心に紙片が半径3メートルの円環を描く。続いてその紙が発火し、円形の炎が紙鬼を焦がした。
「紙吹雪! 餓狼の鉤爪!」
以前よりもより鋭利になった紙吹雪が鬼の肌を抉り取る。
「紙壁!」
紙鬼の反撃はいとも容易く、紙の壁に受け止められた。
跳ね回り、飛び回る智鶴の表情は晴れやかである。
強さを手に入れ、紙鬼と互角に戦う彼女は、姉との姉妹喧嘩をしているような気分になっていた。
「お姉ちゃん、意地っ張りね! いい加減負けを認めなさい!」
地面に飛び降りた智鶴は、居合い切りをするように、腰の位置に手を回す。すぅっと息を吸うと、何の言葉も無く、紙刀が形成される。
「紙刀術 抜刀」
小さく呟くと、息を止める。
ダンッと地面を蹴ると、一気に加速し、紙刀を抜き放った。
紙鬼は反応する間も与えられず、脇腹から邪気を吹き出す。
「まずい!」
深傷を与える事には成功したが、このままではまた妖が寄ってきてしまう。
「折紙! 風車!」
いつぞや蛇骨鬼の毒霧をまき散らしたときのように、紙で大きな風車を作り、邪気を吹き飛ばそうとした。だが、今回の風車は前回と様子が違う。その羽1枚1枚に、速記術による呪的文字が書き込まれているのだ。その意味『突風』。
風車が動き出すと、突風が紙鬼を襲った。
「結華梨みたいには出来ないわね」
この風では切り裂くところまで発展させられないと踏んだ智鶴は、邪気がまき散らされると、直ぐに紙を紙片に戻す。
風に煽られた紙鬼が、腕のバネで体勢を立て直すと、その勢いのまま智鶴に殴りかかる。風車を紙片に戻した瞬間のことであり、智鶴は対応しきれず、紙壁ごと殴り飛ばされた。
地面が抉れ、クレーターが出来るような威力の攻撃。だが、砂埃の中からはほぼ無傷の智鶴が現れた。
「蚊に刺された方が、致命傷よ!」
彼女は地面を強く蹴ると、空に飛び立ち、戦闘を再開した。
*
「え!? 回復、して、るのか!?」
側で視ていた百目鬼が、驚きの表情を作る。
だが、これは回復では無かった。地面に叩きつけられる瞬間、地面に向かって鬼気を爆発とも呼べる出力で放出、衝撃を相殺していたのだ。
「すげぇ……。俺も、負けて、いられない!」
智鶴の勇士に背中を押された百目鬼が、目を瞑り、妖気を練り上げる。
まき散らされたと言えども、空気中の邪気は通常よりも濃くなっている。それを集積し、自身に取り込むと、彼を中心に妖気が渦まく。
「できる、か、わからない、けど」
暴走スレスレに高まる妖気を、緻密にコントロールする。
「グゥ……」
腕が爆発しそうな感覚に、脂汗を浮かせて、うめき声を漏らした。
「……いまだ! 黒腕!」
百目鬼が両手の拳をぶつけると、渦巻いていた妖気が腕に収束する。すると、みるみるうちに彼の腕は漆黒に染まり、開いていた眼は真っ白に虹彩を失った。
「で、でき……できた……」
だが、様子がおかしい。何かに乗っ取られたかの様に、身もだえし始める。
「収まれ……。収まれ……。智鶴は、鬼を、抑え込んだ。俺だって、出来る、はず、なんだ!」
自分の中で暴れようとする妖気を、制御下に収めるべく、意識を必死に保つ。
(もっと、出力を、抑えれば、制御、出来る、けど、それじゃ、紙鬼に、届かない……!)
数分の時が流れた。
旧態依然として、智鶴はまだ紙鬼と互角の戦いをしている。そう、互角。どちらが優勢でもないから、勝敗がつかないでいた。きっと誰かが加勢したら、戦況は変わるのかも知れない。だが、複数体の上級妖が暴れ、低級・中級の妖も這い回る現状、それが出来るのはただ1人。
百目鬼が紙鬼に向かって飛びだした。
どうも! 暴走紅茶です。
今回もお読みくださりありがとうございます。
これを皆さんが読んでいる頃、僕はフェスに行っています。
多分ホテルにいると思います。
探さないでください。
では、また次回……。




