第七章 隠したダイスキ エピローグ
誰もが寝静まった朝の4時。
夜の仕事もすっかり終わって、布団に入っているはずの時間。
千羽家屋敷の中を歩く者が居た。
完璧な隠形の成果で、誰も起きてこない。
その人物の術では無かった。他人からかけられた術だ。
智鶴が退行した事による諸々の対処で、みな疲れているのかも知れないが、誰一人として気がついている気配は全くない。
歩く者は欲しい物の在り処は分かっていたから、真っ直ぐにそこへと向かう。
奥の間、智喜が寝ている部屋の障子を開ける。この男にバレないのならば、誰にバレる心配も無い。
地袋の1番左を開けると、1枚の呪符が貼られた壁になっていた。この先に何かがあると言っているようなものである。普通にしても剥がれない智喜特製の封印だったが、言われていたとおりコツンと呪具で小突くと、いとも簡単に剥がれた。札の下が取っ手になっており、横で無く、上に向かってスライドさせると、その中に箱があった。
何も知らなければ、そのまま手を伸ばしてしまうだろうが、ここにも結界が張られている。手を突っ込めば、術者にくせ者の存在を伝えられて仕舞うから、これも聞いていた手順通りに解き、ようやく中の箱を取り出した。これにも何やら術が掛けられているが、それを解くのは帰ってからでも遅くは無いだろう。
侵入者はそれを懐にしまうと、次は戸棚の引き出しに手を伸ばす。
こちらには特に呪的な鍵はかかっていなかったから、簡単なピッキングで開けられた。中から倉の鍵を取り出し、これもまた懐にしまう。
隠形に自信があるのかも知れないが、なんとも大胆な行動だった。
足下で当主がスヤスヤ寝息を立てているが、それには一瞥もくれずに、全てを元通りにして、部屋を去った。
智喜は起きることが出来なかった。それを悔いる事となるのは、また少し先の話。
どうも! 暴走紅茶です!
エピローグまでお読みくださり、ありがとうございます。
不穏で幕を閉じた七章ですが、この不穏さ、次章で解決するのでしょうか……?
乞うご期待!
ではまた次回!!




