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紙吹雪の舞う夜に  作者: 暴走紅茶
第一章 操られたアヤカシ

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12話 百目鬼 V.S. 竜子

竜に吹き飛ばされ、林の奥へ消えていった()(づる)とは反対、住宅街の道路に立つ(りょう)()目がけ、駆ける(どう)()()、強く踏み込み、アッパーカットを食らわそうとする。が、竜子はそれを後退する様に避けた。

「女の子殴ろうなんて、野蛮だね。根に持ってるの? 根に持つ男はモテないよ!」

「……うるさい!」

 そのまま、百目鬼は打撃の猛攻を繰り出すが、それもなかなか当たらない。当たってもいなされるか受け止められるかだけで、ダメージには繋がってくれない。

「やるな……」

「こんなもん? 千羽の門下筆頭だと思ってたのに、違うんだ。じゃあ、こっちから行かせてもらうよ」

 竜子は袖から(じゅ)()を抜くと、それを百目鬼に貼ろうと間合いを詰めてくる。

「させないっ」

 それを避け、百目鬼は鳩尾(みぞおち)に拳をねじ込……めなかった。

「え!?」

 攻撃を受けた竜子の姿は(もや)に消え、後から声がする。

「それは幻想~」

 よく見ると、竜子の肩に一つ目が開いた紫色の球体が浮いている。

 その正体は妖「マドウメ」漢字で「惑う目」と書く、人に幻術を見せ惑わす妖である。

「私が美夏萠(みなも)しか連れてないと思った? それは契約術師を甘く見すぎだよ」

 その声に向かい突っ込むも、それも幻、次も幻。百目鬼は完全に弄ばれていた。

「それでお仕舞い?」

 耳元で声がする。(とっ)()に避けるが、何かを貼られた。

 妖封じか!? と、血の気が引くが、それは()(じゅつ)()。呪術の火を吹く呪符だった。

「発動」

 百目鬼の脇腹に(しゃく)(ねつ)が広がる。

「ガッあぁ」

 彼は上着を脱ぎ捨てると、難を逃れたが、その隙に間合いを詰められる。

 それに合わせ、腕を掴み、投げようとしたが、それは幻で、実際に手は空を切る。

 そして、背中に衝撃が走る。

 蹴られたッ!

 そのまま、幻術に惑わされ、殴る蹴るのラッシュを食らう。

 このままじゃ、だめだ……。

 百目鬼はスッと目を閉じた。

 見る事に、頼りすぎた。彼女の気配なら、死ぬほど研究、した。大丈夫、大丈夫。

 集中、しろっ! 今は彼女の『気』以外何もいらない!

 顔の目が閉じられたのに呼応して、腕の眼がカッっと開眼する。

 百目鬼は静寂に包まれていた。まるで戦闘なんて無かったかの様。極度の集中に、『妖力の眼』以外、全ての感覚が閉ざされていた。

「あら? 降参? じゃあ、さっさと倒して、美夏萠の所に向かいましょうか」

 竜子が突っ込んでくる。百目鬼はゆっくりと構える。分かる……。分かるよ。敵の、動き!

 竜子の気配が、彼の間合いに入る瞬間、上へ飛んだ。

 世界が酷くゆっくりと動いている様に思える。竜子の動きに合わせて、百目鬼は右足を軸に、左足で後回し蹴りを繰り出す。知らない人が見れば、迫り来る攻撃を無視した、完全な悪手……というより、壊れた人形の様な動きに見えただろう。

 だが。

「グワッ。カハッ」

 何も居なかった筈の背後には顔を蹴られ、近くの茂みの中へ吹き飛ばされる竜子の姿があった。

「よし」

「何で……」

「見ない事で、見えるのが、俺だ」

「は?」

「もう、幻術は、効かない!」

「何を言ってるの? 訳が分からないよ」

 竜子はそう言いながらも、茂みに潜み、(おん)(ぎょう)を掛け、姿を消す。

 そっと忍びより、百目鬼に呪符を貼ろうと構えたが、「グフッ」まるで全てを予測していたかのように、百目鬼の(うら)(けん)が彼女の顔面に刺さる。完璧に隠形していたはずなのに、なのに。

 ヨロヨロと立ち上がってくる竜子に追撃を食らわす。すっかりと隠形は解けていた。だが、百目鬼は(つむ)った目を開けなかった。開いた眼を閉じなかった。

 体術もそれなりに出来る事は分かっていたが、顔に食らった攻撃が深かった様で、百目鬼のラッシュに対抗しきれていない。

「前言撤回。君、やっぱり流石は千羽の門下だね。強いや」

「今更、命乞い、しても、遅い」

「うん。だからね、こんなこと、本当はしたくなかったけど――

 そう言いながら、竜子は光る手で自分の両足に刻印を刻んだ。

 ――逃げるわ」

 契約術師にとって、人を操るというのは楽な話では無い。霊力の消耗が激しい上に、そもそも操る事が難しい。だが、走って逃げる程度なら、無理をすれば出来ない事も無い。

 竜子が地面を蹴った。

 アスファルトが割れ、弾丸の様な速度で前方へ飛ぶ。


「おかあさん……」

 

 突然百目鬼の脳内にその言葉が反響した。

 それは竜子の内から発せられた声だった。

 百目鬼はその言葉に一瞬たじろぎ、目を開けてしまった。それが運命の分かれ目だった。竜子は凄まじい勢いで百目鬼を追い越し、走り去っていく。

と、取り逃した……。 

 彼女が走り去るその方向にはその方向には美夏萠と智鶴が。

 彼は直ぐさま振り向き、追いかけようとした。

「おい! 待て!」

 そして、そう言ったか言わないか。百目鬼は膝から崩れ落ちた。

「え? ……」

 百目鬼の背中には妖封じの()()が貼られていた。

どうも。暴走紅茶です。

桜の季節になりましたね! 桜を見るとなんだか心がうきうきわくわく、そしてどこかそわそわします。

先日、花見散歩をしてきたのですが、丁度その日はどこかの小学校で入学式が行われたようで、一眼レフをもったお母様と、艶々とした新品のランドセルを背負った小学生が何組かいまして、とても微笑ましかったです。

いいですね。コロナ禍とはいえ、こうして始まることもあって、全くどうして、世界は止まることを知らないようです。

では、また来週。

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