第六章 真実とウソ エピローグ
木枯山を出て、早数時間。この電車を降りたら、次はバスに乗って、千羽の屋敷近くまで着くという所まで来た。智成が節約などと言い出さなければ、全部新幹線で行けたのになぁと、思わないでも無かったが、人生初の鈍行電車旅に、心が浮き足立ち、それもどうでも良くなっていた。そんな頃の事である。
「なあ、智成。智鶴をびっくりさたいんだ。協力してくれ!」
人も少ない在来線で、優雅にも四人がけの席を向かい合わせて座っていた時、何の前振りも無しに、突然栞奈が言い出した。
「何をする気だ?」
事前に連絡を入れて、拒絶でもされたら不安だったのか、智成は無断で実家に帰っている事を、栞奈は既に気がついていた。ここ最近、少し様子がおかしかったのも、きっとそういった事による不安からだったのだろう。どうにも、心ここにあらずという見た目で、山小屋の前にある丸太に座っている所を、何度か見かけていた。
だから、サプライズを仕掛ける前段階は、取り敢えずクリアーしている筈である。
「まだ、智鶴の所には、行くことを言ってないよな? なら、これを……」
栞奈は肩から提げていたメッセンジャーバッグに手を突っ込むと、サングラスを取り出した。
「お前、まさか……それは、流石にセンスねえよ」
「いや、こういうベタなのが意外と効くんだって!」
「そんなの、何処で試した前例を浮かべて言ってるのか、解んねぇ所だが……」
「試したことは無いけど。智成の部屋で読んだ漫画とかでは、こういう展開多かったぞ」
「お前、何勝手に……いや、どれを読んだ!?」
ま、まさか、本棚の裏にも気がついて……? と、智成の顔面が青くなる。
「どれって……」
何を読んだか、タイトルを思い出そうとしている内に、智成の慌てぶりに、察しが付いた。
さては、何か見られちゃマズいのを、隠してたのか? その考えに至ると、ニヤニヤが止まらない。
「そりゃ、凄んごいの、沢山、読んだぞ!」
「おい、お前、マジか……」
「誰にも喋られたくなかったら、わっちに協力してくれるよな?」
まるでマフィアが拳銃を突きつける様に、サングラスのヨロイ部分を、智成の胸に押しつける。
「お、俺は無実だ……。あれは、友達が……」
「わっち、智鶴以外の来客に、会ったこと無いぞ」
「クッ。……じゃ、じゃあ!」
「往生際が悪いなぁ。もう、諦めなよ。なっ!」
「うう……。クソッタレ。俺がこんなセンスのねえ事……」
渋々、手を震わせながら、サングラスを受け取る。
「あと、ジャケットも着てくれよな!」
ニコニコ顔で見せつけられる、真っ黒のジャケットに、がっくりと肩が落ちたのだった。
暴走紅茶です!
17話・エピローグお読みくださりありがとうございます!
6章どうでしたか? 隔週になって読みづらくなってしまいましたかね……。
何はともあれ、智鶴は真実を知って、どう生きるのでしょうか? と問いたいところ、幼少期に退行してしまいました。
はてさて、どうなることやら。
ではまた次回!!




