湊姉さんは優樹の事が好き
「付き合う事になったって、まさか霞さんと」
「それ以外に誰がいるんだよ」
「だって本当に付き合うとは、思ってなかったから」
「まあ報告はしたからさ」
「あの、お兄ちゃん、お風呂沸いたから入ってきなよ」
「俺が先でもいいの」
「大丈夫だよ、湊さんもいいですよね」
「えっうん大丈夫だよ」
「それなら先に入ってこようか」
俺は服を取りに、一度部屋に戻った。
「大丈夫ですか湊さん」
都ちゃんは私を心配して近づいてきた。
「問題ないよ、それよりも今日のご飯は何かな」
私は鍋の蓋を開けてみると、カレーが出来ていた。
「今日はカレーか、これはもしかして優樹に頼まれて作ったのかな」
「何で分かるんですか」
「優樹は少しいいことが起こると、いつもカレーを作ってもらうよう、お母さんに頼んでたからね」
「そういえば、お兄ちゃんのお義母さんの話は、全然聞いてないんですけど」
「優樹のお母さんは、交通事故で亡くなったんだよ」
「そうでしたか、だからお兄ちゃんは、あんまり話してくれないんですね」
「私もここにはお世話になってるからね、それに事故が起きたのも、優樹が中学生になってすぐだから」
「私のお父さんも事故で亡くなったんで、お兄ちゃんの気持ちも分かりますよ」
「そうなんだ、だからさ少し驚いたんだよね、優樹に彼女が出来た事を」
「湊さんは、嬉しくないんですか」
「嬉しいか嬉しくないかで言えば、嬉しくないね、昔から優樹の事は私が知ってるし、それに私も優樹の事を一人の男の子で見てたから」
「そうなんですね、一人の男の子」
それから数秒、都ちゃんは考えていた。
「もしかして湊さん、お兄ちゃんの事を愛してるんですか」
都ちゃんは顔を赤くして、私に言ってきた。
「もう知ってると思ってたんだけどな、さっきだって都ちゃん、気を使って優樹にお風呂が沸いたって言ったんでしょ」
「違いますよ、湊さんの様子がおかしいと思ったから、少し話そうと思って」
「そうだったの、まあ勘違いは誰にでもあるか」
私は都ちゃんに近づくと、都ちゃんに抱きついた。
「あの湊さん」
「少しだけでいいからさ、抱きついててもいいかな」
私は優樹に聞こえないよう、都ちゃんの胸で泣き出してしまった。
「少しじゃなくてもいいですよ、湊さんの気持ちが落ち着くまで、側にいますから」
都ちゃんに頭を撫でられると、私は昔の記憶が蘇ってきた、私が泣いている時は、いつも優樹のお母さんが私の側にいてくれた、そして泣き終わると、私が決まってある言葉を呟くのだ。
「もう大丈夫だよ都ちゃん」
「本当に大丈夫ですか」
「うん、それよりも私お腹空いちゃった」
私は微笑み都ちゃんに言うと、都ちゃんは笑ってくれた。
「それなら先にカレー食べましょうか」
都ちゃんは二人分の皿にカレーをよそい、机に置いてくれた、私は椅子に座り、都ちゃんに言った。
「都ちゃん、私ね決めたよ」
「何を決めたんですか」
「優樹は人生初の彼女が出来て、喜んでると思うんだ、でもね私優樹と霞さんを別れさせようと思う」
私が言った事に、都ちゃんは食べようとしていたカレーを机に落としてしまった。
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