第4話
今回は前回に続き説明が多くなっています。今後設定集などを作ろうと思っているので、多少読み飛ばしてもらっても構いません。
本をめくるとこの世界で生き抜くためにと題してこの世界の知識と自分の世界の知識の相違が書かれていた。
一つ、この世界に呪術に似た魔法と呼ばれる未知なる力がある。
一つ、この世界では霊獣をモンスターと呼んでいる。
一つ、この世界の文明は発達している。
これを読んだ瞬間、この人の本は当てにならないかもしれないと考えてしまった。正確にはこの人と僕は同じ別世界から来たけれども、元いた世界があまりにも違いすぎるのだ。日本には科学は発展していても、呪術や魔法のような不思議な力はあまり見受けられないし、もちろんモンスターの類も存在しない。「文明が発達している」というのもおそらくフィリアという世界を参考にしたものだろう。とりあえずこの世界にはよくあるファンタジー小説よろしく、魔法とモンスターが存在しているらしい。まぁもうそんなことは分かりきっていたが。
続きを読んで行くと面白い事がいくつか分かった。まずこの世界には龍人族、人族以外にも種族がおり、その種類は大きく分けて8種類であるが混血も含めると数えられないほどである。また、魔族はファンタジー小説でよく見るような魔物のような容姿をした種族ではなく、人族との違いは魔法との親和性は高いが比較的貧弱な者が多いという点(もちろん例外がいる)で、見た目は人族とほぼ同じ種族で、人族と魔族の国の関係も良好らしい。
なお、魔物のような容姿をした者はまとめて魔物されるため、一般的に僕らが魔族と認識されるやつは総て魔物となるのだろう。そして、人族は魔物と敵対しているという構造だ。エルフやドワーフ、龍人族は絶対数が少なく閉鎖的な環境であり、ほとんど人族や魔族らとの交流はないようだ。
特に龍人族はその絶対数が少なく作者もあったことがないらしい。噂では、北の大陸にドラゴンとともに住んでいるとか。ちなみにこの世界には三つの大陸があり、北のピオネア大陸、西のコンフォト大陸、東のティムート大陸である。そして、ピオネア大陸は天候の変化が激しく人が住みにくい環境であるのでそこに龍人族が住んでいるのではないかという見立てのようだ。しかし僕の推測では普段の龍人族と人族の見た目は変わらないから分からないだけなのではないかと思ってしまう。つまり、龍人族に実際会っても気づかないのではないかと思うのだ。
まぁ、この世界についての知識についてはかこんなことが分かったのだが、それよりも興味深いことが書いてあった。それは、魔法と武道そしてスキルと呼ばれるこの世界のユニークな知識についてだ。
まずは、魔法についてだが自身に宿る魔力を用いて自分のイメージした事象を引き起こす物らしい。というのも著者自体あまり詳しくなく、「魔法スキル」を用いるのが一般的だからだ。ここで関わってくれるのがスキルという分野で太古の卓越した実力を持った者が体系化、簡易化し決まった訓練をすることで得られる能力という定義だ。(魔法の本調べ)
簡単に言うと、火魔法がわからない人でもファイアーアローの「魔法スキル」は習得できるということだ。まぁ、このスキルにも適性がありみんなが使える訳ではないらしい(泣)。ちなみにスキルが習得したかどうか特殊な水晶で確認する。(ご都合主義的に家にありました。)
長々とした説明は終わりだ! 早速実践タイムに入る。試しにファイアーアローの魔法スキルの訓練をしてみる。まずは、実際の弓矢を見ながらその形をイメージする。そしてそのイメージを持ちつつその矢を炎に変えて、鋭く放つ。これを繰り返す。これだけだ。めちゃくちゃ簡単である。
そして1年の月日が経った。結論から言うと4つのスキルを得ることができた。
まず、魔法スキルからは治療魔法ヒールスキルを得られた。このスキルは文字通りキズや一部の病気を治せるといったものでかなり汎用性がありそうだ。まだスキルの練度が低いので簡単なキズしか治せないが。
次に戦闘スキルとして格闘術のスキルを得られた。このスキルは決められた型を練習することで得られるらしいが既に習得していた。前世の影響だろうか?(実質得たスキルは三つだろとかいうツッコミはなしで!)
あとの二つは隠密スキルと察知スキルで、これらを得るのにはめちゃくちゃ苦労した。なんせ前世の日常生活では全く使わなかったのもあるが、察知にするにしても気配を消すにしても相手がいなければ基本的に成立しないからである。ただ察知スキルに関しては外にいる生物の気配を探ることで練習した。その結果隠密スキルがどれほどのものかは未だ見当がつかないものの、察知スキルにおいては家の外の気配を察知するトレーニングによって生物気配の強弱などを測ることができるようになった。(最も、まだ強い気配は卒倒させられたあの化け物しか感じたことはないが。)
そして最後に龍化についてだが、最初は数十秒で解けてしまったものの今は2分も持つようになった。この短時間では通常時の攻撃には使えないが、緊急時に防御などには十分に使えそうだ。まぁ、基本戦闘は避けるつもりであるが。
1年でこれらのスキルと龍人族の専用技?的な龍化(といっても防御力が上がるくらいだが…)を磨きいよいよその時を迎える。
外への第一歩を踏み出すのだ。 汗ばんだ両手で握り拳を作る。そして、ドアに手をかけ、察知スキルで外に反応はないことを確認して隠密スキルを発動しそっとドアを開けた。
察知スキルからうっすら感じていた通り周りは木々が生い茂っており薄暗い。察知スキルが無ければ進むのは相当困難であっただろう。そのまま、察知スキルと隠密スキルを使いつつ、北の方へ進むことにする。とりあえず、自分の家の場所が分からなくならないように気をつけつつ探索をしようという考えである。北に1キロほど歩いて、家を認識できなくなったのでとりあえず戻ろうとしたとき、察知スキルに四つの生物の反応を確認した。どれも弱い反応示しているので、接触を図ることにし、生物の元へゆっくりと近づく。
茂みから覗いてみると傷だらけのゴブリンとそれを囲む3体のガタイのいいゴブリンであった。