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第3話

「うっ……ここは?」


「おっ!目が覚めたみたいだよ。」


ベッドの近くにあるテーブルの上の黒縁の紫色の石からマイトの声がする。ってかココドコ?


「それでは早速訓練を始めるよ。」


「どういうこと?」


「色々疑問はあると思うが質問は説明の後で答えるから。」


「う、うん……」


「よし。じゃあまずレンのいる場所についてだけど、家から南に40キロほど離れた小屋だよ。これからレンには家に自力で戻ってきてもらうんだ。けれどもね、ここの森、特に家の近くには強力な魔獣と一般に分類される生物が跋扈しているんだ。そこで鍛えて強くなってもらうんだ。これがさっき話した『特訓』の内容だよ。」


「特訓ってマイやマイトの教えのもとじゃないの!?いきなり放り出されても死んじゃうんですけど!」


「大丈夫!実戦の方が多く経験が積めるし成長が早いのよ。私たちの故郷ではレンくらいの年には一人で狩りもしてたのよ。それに魔法や武術についての専門書がその小屋には一杯あるからそれで勉強できるから。それにイングの実がなる木が一杯あるから食料にも困らないはずよ。」


龍族はみんな脳筋なんだろうか?そもそも僕の武術経験といったら前世の時に習った空手ぐらいしかないんですが。


「それじゃあ、最後にヒントをあげるから扉を開けて外に出てくれる?」


ヒント?何かが置いてあるのだろうか?ベッドを降りて扉を開ける。



そこにあったのは黒く大きな二つの瞳でその視線がただ一点僕に注がれている。その瞳から逃れるべく下を向くとくちばしがありその鋭いエッジは容易く命を刈り取れるだろう。


逃げなければ。 体動かない。何か、来る……。




















「うっ……。ここは?」

そうだ!僕は恐ろしい化け物に襲われて……。アレ?生きてる!あいつは!?慌てて飛び起きるが扉は閉まっていて化け物も見当たらない。


「レン。今のがヒントだよ。さっきの魔獣は僕の従魔でね、レンに殺気を放って貰ったんだ。」


「なんのつもりなの?本気で死ぬかと思ったよ!?」


「何も言わずにレンをこんな目に合わせたのには訳があるんだ。どう強くなりたいかを考える上で必要な事はなんだと思う?」


確かに、僕を受け止めてくれた二人が意味もなくこんなことをするはずないか。


「やっぱり知識じゃないかな。」


「確かに知識も必要だけど一番大事なのは気持ちなんだ、そしてどんな生物でも何か必要に駆られた時に一番力を発揮する。だから、レンに『死』を体感させてレンの本能に訴えかけたんだ。それともう一つ理由があってね、龍族の生存本能を呼び起こすためなんだ。レンは元々人間だったから精神と体が釣り合ってないようだったからね。」


『死』か……。確かに現代の日本で、しかも二十歳で死と直面する事はまずないだろうし、実際経験した事は一回しか無いからなぁ。


「レンならさっきの脅威にどう立ち向かう?そこに答えがあるはずだよ。おっと、もうすぐその魔道具の魔力が切れるから、聞きたいことがあるなら早めにね。」


質問をしようとして電話のような魔道具を口に近づけると、魔道具の光が消えた。二人の声がプツリと切れる。



質問できないんかい!








気を取り直して、どうするか考える。さっきの魔獣のような奴がウロウロしている可能性を考えると外に出る前に身を守る術を身に付けなけれなるまい。そうなるとやっぱり防御系&支援系だな!……ファンタジー系小説の主人公よろしく剣技や強力魔法で敵を蹴散らす方がカッコいいって?


いやいやこちとら家畜の屠殺すら見たことがない一般人、それも豚の頭の解剖で豚肉食べられなくなるレベルだぜ?早々生き物を殺せるはずがないでしょ。

そうなるとゲームで言うHPや素早さ、防御力に全振りだな。それとマイトのように従魔が欲しいな。前世では先に死んじゃうのが怖くてペット飼えなかったし、いざとなったら助けてくれる仲間にもなるし。



まずは本棚から役に立ちそうな本を探そう……って文字読めないじゃん。二人とも僕が『話せ』ても『読み書き』ができないことに気づいていないのだろう。つまり僕に残された選択は、


1,頑張って二人の元に帰る。

2,頑張って文字を覚えて本を読む

3,ここに引き篭もる


取り敢えず1はないな、すぐに死んじゃいそうだし。となると、2か3の二択になるのだが……まぁ3はないよね。せっかく転生したんだからこの世界を楽しみたい。よしどんな本があるか調べよう。文字分からないケド。







あれから2ヶ月、全くと言っていいほど成果はない。そもそも辞書があったとしてもその辞書の文字が読めないし、ほとんど本をパラパラ捲ったが絵本のような類もない。という訳で、期せずも選択肢3を選ぶほかない状況である。しかし何もしてなかった訳ではなく、分かったこともある。それはこの自分の体のことである。

どうやら龍族とやらは相当ハイスペックなようで、体操選手のような動きが何の苦もなくできるほどなのだ。それに相当なスピードで走ることも可能なようだ。


加えてお腹に力を込めて集中すると、体が熱くなり何と黒い鱗が生えて来るのだ!しかもこの状態の体は通常よりさらに強靭で試しに家にあった丸太をパンチしてみると水に手を入れたかのように手が木にめり込み、しかも木片が手に刺さることもなかった。おそらく、相当な強度なのだろう。なぜ急にこのようなことが分かったのか。おそらくこれは龍族の生存本能の影響なのではないか?と考察してみたが今はもっと重要な場面に直面している。

今この龍化(自分で勝手に名付けた)が出来た時本棚の奥の本が光り出したのだ。龍化をトリガーにして光り出したのだろうか? とりあえず本を開き、中を覗くと衝撃が走った。なんと、本の内容が分かるのだ、しかも本の始めにはこう書かれていた。



『異世界に迷いし仲間たちにこの本を捧げる』



やはり僕以外にも異世界に転生あるいは転移など何らかの状態で訪れている人がいるんだろう。異世界ファンタジーものでは当たり前の展開だし、僕1人だけこの世界に迷い込んだとは考えにくいとは思っていたが、それでも少し安堵した。人は自分と同じ境遇の人がいると安堵するものだ、というが僕も例にもれずそうだったようだ。

とりあえず本の続きを読もう。

大きく息を吸いページを捲ってみる。次には著者のプロフィールが書かれていた。彼の名前はボルバヤ・ド・モービルと言って、フィリアという世界からこの世界に転移してきたらしい。





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