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第1話

目を覚ますと、優しい木の香を感じる。体を起こし辺りを見回すと自室のベッドではなく自分がだだっ広い部屋にポツンと置かれた木製のベッドに寝ていたことが分かった。


意識が明瞭になるに連れて、今自分が不味い状況に瀕している可能性を悟る。音を立てないようにベッドを降り、部屋を見回す。部屋に窓などは付いておらず外の様子は窺い知れない。続いて部屋を調べてみようとした時、ガチャリとドアの開く音と共に扉が開くと、澄んだ碧い目に銀髪のロングヘアーの綺麗な女性が入ってきた。


「!!!」


「あのー「バタンッ」……」


見知らぬ相手故少し警戒しつつ、ここはどこなのか聞くために声をかけようとしたがその前に驚いていた女性は部屋を出て行ってしまった。凄い勢いで扉を閉めて行ってしまったので少し呆然としていると、今度は黒髪に細い黒目のイケメンを連れて先ほどの女性が入ってきた。




僕はこの二人に会ったことがある気がする…………


どこで会ったか必死に考えていると、





「俺の言葉を理解できるかい?」


とイケメンが子供に語りかけるかのように知らない言語で話しかけてきた。そう、英語でも日本語もない言語で。そしてその言語を母国語のように今理解できているのだ。とりあえず相手の意思が伝わっていることを分かってもらうため、


「はい。」


と答えると、


「良かった!ようやく私達の子供が誕生したのね!」


「そうだね。で本当に良かった……」


と抱き合いながら喜ぶ二人を見て誘拐などの類ではないことを察すると同時に、ふと考える。誕生……なんの事だ? 僕は彼らの子供ではないし、自分の体はどう考えても新生児のそれではない。


「あのー………なんの話でしょうか?」


「そんなに畏まらなくていいのよ? 気軽にママって呼んでほしいわ!」


「メイ、いきなりそんな事を言ってもレンが混乱するだろう?どうやらこの子の精神年齢はかなり高い様だし、説明をしてあげないと。」


「……そうね。少しはしゃぎ過ぎてしまったわ。」


「レン、今から私の言う事をじっと聞いてほしい。質問には後から答えるからね。」


「はい。分かりました。」


「君は今15歳の少年で名前は、ドラグ二スト・レンブラントというんだ。そして昨日までは君は話すことはおろか、意思疎通さえ出来なかったんだ。」


「!!!」


「君がそんな状態に陥っていた原因はとある病なんだ。その病はね脱魂病と言って、まるで魂がないかのように、意識がなく寝たきりの状態になってしまうんだ。」


「そして、この病に罹った者はほとんどが亡くなってしまうんだ。寝たきりだから病人の食事や排泄など身の回りの世話が大変な上、他の病気に罹りやすくなってしまうからね。その上意識が形成されたとしても、健全な精神になるとは限らず、多くは意思疎通出来ないまま死んでしまうんだ。」


「レンの場合は生まれた時からこの病を患っていて、今日までずっと寝たきりだったんだ。そして今日、レンは無事健全な精神意識を伴って『誕生』したんだ。」


「…………。」


なるほど、到底信じられない話であるが、同時に納得もできる。このまるで自分のものではないかのように気だるい身体。どこかも分からぬ場所で目を覚ます。極め付けは、両手は白玉のよにうに白色であり、弾力がありつつも硬く、どう見ても『自分』の手ではない。







ここから導き出しされる答えを僕は一つしか知らない。…………そう転生したのだ。ここが地球なのか異世界なのかそれは分からない。 …………体が熱くなるのを感じる。


「まだ病みあがりだからキツイだろう。少し眠るかい?」


「いえ、大丈夫です。」



冷静に考えると、実質0歳児のはずの僕がペラペラ言葉を話せているのは、二人から見たら不自然極まり無いはずだ。それにおそらくぼくの精神が0歳児のそれで無い事など、とうに気づいているだろう。


正直に話すべきだろうか? 確かに、彼らの話は嘘かもしれない。

けれど『この身体』自身が二人はレンにとっての両親であると告げている、そんな感覚がするのだ。




よし!





「お二人とも次は僕のはなしを聞いていただけますか。」


「……その他人行儀な口調をどうにか出来ないかしら。私たちは家族なのよ。」


「すみません……。ですが話を聞いてください。実は僕には前世記憶があるんです。だからあなた達の子供としてやっていけるか分からないです。それに前世の記憶があるなんて不気味でしょう?」


「……何が不気味なの?レンは私とマイトの間に産まれた大事な息子である事に変わりはないし、レンは私達とやって行く自信が無くても全然構わないわ。だって、子供を導くのは親の務めだもの、私達がレンと仲良くなれるように頑張るわ!」


「メイの言う通りだよ。レンはレンだし、私達はいつもレンの味方だよ。」


「………ありがとう。」


気づけば涙が止めどなく溢れ出てていた。







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