プロローグ
突然だが異世界に憧れたことはあるだろうか? ちなみに僕は異世界で勇敢に戦ったり、生産職としてバリバリいいものを作る主人公の活躍に心躍らせたことは一度やニ度ではない。
なぜこんな疑問を投げかけたかといえば原因は少し前に遡る。僕こと幸田臆人は朝の土手に
て日課のランニングをしていた。というのも、高校時代に野球部に所属しており、大学生になった今でも続けているからだ。そしてランニング途中、突然意識を失い気がつくと真っ白なだだっ広い場所にいた。
そのとき僕は辺りを見回しそして、
「ここはどこだ……」
と思わず呟くと、
「ここは転移の間。新たな始点となる場所。」
と無機質な声が聞こえたのである。
そして今に至るわけです。はい。
転生なんて現実にあるわけないだろう、と冷静に考えるもののやはり少しワクワクしてしまう。
「貴方の可能性をポイントに換算します。」
「可能性? ポイント?一体何のことだ?」
と疑問を口にするも無機質音声さんの返答はないわけで……無視されるの辛い!! そんな呑気なことを考えていると、
「貴方のポイントは503ポイントです。続いて転生する世界、時間軸を決定します。」
503ポイントとかメチャクチャ微妙じゃね…… それはさておき世界はランダムに決まるらしい。てっきりポイントを使って決める流れなのかと思ったが……
などと思案していると、
「プラトニアのアレクシア歴28年に決定。続いて魂主の選択に移行する。」
聞いたことない名前だなやっぱり異世界転生か。選択ってなんだろうか?……
「目の前のモニターを使って手続きを完了させてください。」
すると目の前に近未来的なモニターが現れ、そこに日本語が浮かび上がった。
「種を選択してください。」
すると画面文字の羅列があらわれた!どうやら次に「何」になるかを決めるようだ。単純な人族だけでなく様々な動物や植物、昆虫が載っていた。それらの生物には地球にはいないような種もいたが何故か文字を凝視するとどんな生物なのか分かるのだ!ご都合主義万歳!
しかし、いかんせんかずが多すぎると思いふと文字の左側に数字が書かれていることに気づいた。どうやらここでポイントを消費するようだ。そこでポイント順にソートできないかと考えると、なんと成功したのだ!さらに条件によって検索もできるようだ。 これで選ぶ時間が省けると思い、検討した結果次の種のうちから決めることにした。
人族 200p
エルフ300p
魔族 300p
龍族 350p
中には古龍種なるものもいたが100000pかかるので速攻諦めた。そして悩んだ結果一番ポイントの高い龍族にした。単純に強そうだし。
画面の龍族の部分をタップすると、次に
「特性を決めてください。」
とアナウンスが響き、画面が変化した。画面をスライドさせていくと、剣術や棍術などの文字と共に10pなどと書かれている。横にチェック欄がある。どうやらスキルを選ぶらしい。
まだポイント使うのかよ!?と心で叫びつつスライドさせていくと
記憶保持 100p
効果は言うまでもないだろう。記憶保持にもポイントがいるんだなぁと思いつつ、チェックを入れる。もしこれに気づかなかったら異世界満喫できないところだった。しかしこれでポイントがたったの53ポイントだ。これじゃロクなスキル取れなくね、と考えながらスライドを続けるとふと気になるスキルが現れた。
補助魔法の才 50p
中身はその名の通り補助魔法系統に属する魔法が扱いやすくなるが代わりに攻撃魔法が一切使えなくなると言うものだ。
この逆の効果のスキルももちろんあったが僕は前者を選ぼうと思う。決して戦うのが怖いから支援側がいいと言う臆病な考え故ではない……ほんとですよ?
こんな感じにスキルを決め終わると
「残り3p余っていますがよろしいですか。」
とアナウンスされた。3ポイントで取れるスキルなどなかったので3ポイントは潔く諦める。そして
「はい。」
と答えると
「幸多き人生であらんことを!」
と聞こえてきて、 そのまま意識が薄れていった。そんななか僕はアナウンスに初めて激励のような感情が篭っているように感じた。
SIDE ?
今日もまた多くの転生者を見送った。多くの魂がこの転生の間を経て、新たな世界へ旅立って行くが、皆転生の間での記憶は規則のために消える。だから私は転生者を見送る。あくまで冷静沈着に あくまで淡々と。しかし一人だけ面白い選択をした者がいた。
其の者は前世での『可能性』を数値化した可能性ポイントを多く所有しており、来世で活躍するだろうことは容易に推測できた。
そしていざ其の者の『選択』を見てみると驚かされた。龍族を選択した時は武を重んじるのかと思いきや、攻撃魔法が使えなくなる補助魔法の才のスキルを取るという一見するとチグハグな内容だったからだ。
しかし同時に、今まで見たことのない『選択』をする其の者がどんな一生を送るのか興味も湧いた。
そこで一つささやかなプレゼントを贈った後に其の者を新たな世界に送ることにした。自分の久しぶりの興奮の念と共に。