6 神憑き少女は料理する
神様が便利な件。
学校も無事に終わり、我が家でもある教会へと帰宅。
神様に今日の無事をお祈りして、自分の部屋へと向かう。
途中、シスターのジュリエッタに会い、食事を作る手伝いを頼まれる。
マリーは文句の一つも言わず承諾する。
以前から、自分ができることは手伝い、みんなのためになるように暮らしていた。
施設にはマリーとジュリエッタの他にも、身寄りのない子供たちが10人ほど住んでいる。
ほとんどがマリーよりも年下だ。
恰好が悪いところは見せたくないのだ。
『また見栄はってるわよ』
『一応、成長もしてるからな。そこは認めてやれよ』
『マリー、それは砂糖じゃ。塩は左のやつじゃ』
「おっと危ない。また間違えるとこだった。ありがと」
今日は豚肉のソテー。
味付けはシンプルに塩胡椒。
『ちょっと、塩かけすぎじゃないの?』
『あれぐらいなら普通だろ?』
『そうそう、それから胡椒は軽くでよいぞ』
「これぐらい?」
『それぐらいで大丈夫じゃ』
パラパラと胡椒をかけ、準備よし。
熱したフライパンにさっと脂を引く。
豚肉を乗せ、焼き加減を見る。
『まだ?』
『豚はしっかりと時間をかけるのが普通だろ』
『やけどに気を付けるんじゃ。ひっくり返すのは、じっくり焼いてからじゃぞ』
「ちょっとさあ、じいさん以外黙っててくれる?」
マリーが作った料理をおいしそうに食べる子供たち。
マリーはちょっぴり誇らしげな顔をしていた。
教会での暮らしは、贅沢な暮らしはできないが、衣食住に関して全く問題ない暮らしができる。
国や市からの補助金と富裕層からの寄付金のおかげで、高校卒業までは保証されていた。
しかし、この教会にいる子供たちで2年を超えて教会に居続ける子はほとんどいない。
ほとんどの子が里親に引き取られ、ここを巣立つのだ。
別れの時はほんの少し寂しいけれど、その子にとって新たな未来への一歩。
マリーは応援するつもりで、笑顔で見送ってきた。
『気が付けば、一番古株になったのね』
『お前ずっとここにいるもんな』
『マリーは、ここに来て何年じゃったっけ?』
「あんたらマジでうるさいよ」
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