4 慣れが悔しい神憑き少女
くやしいのう。
マリーは持ち帰った荷物を、自分が使っていた部屋へ持っていき仕舞い始める。
所持品自体が少なかったこともあるが、一時間とかからず整理が終わった。
「いい加減慣れてしまっている自分が悔しいわ」
『よいことじゃ』
「よくないわよ! ジュリエッタたら、また私が置いていった物そのままにしてあるし」
『ジュリエッタちゃんも流石に慣れちゃうでしょ。8回も戻ってきたんだから。今回だって最初みたいに幸せで元気でいてね、とか目を潤ませながらじゃなくて、笑顔で行ってらっしゃいの一言だけだったもの。まるで旅行を見送るような感じだったものねぇ』
「うるさいわね! あんたらに言われると余計に腹が立つのよ!」
『怒りんぼうさんねえ。寿命が縮むわよ?』
『あー、大丈夫だ。こいつの寿命すんげえ長いから。90くらい生きると思うぞ。よっぽどへんてこな事に巻き込まれない限りは死なねえよ』
「とっくに巻き込まれてる気がするんですけど?」
突っ込み疲れを感じたマリーはいつも使っている椅子に腰を掛ける。
すると、ふよふよと浮いていた3人の神は、定位置となった場所へと身を置く。
マリーの頭の上には疫病神、右肩には死神、左肩には貧乏神である。
重さは全く感じないので負担はない。
「これにも慣れた自分が悔しいわ」
『もうかれこれ2年だものねぇ』
「最初のころは見られたらどうしようかと思ったわよ」
『ここにいる者でいうならジュリエッタとジャック以外は見えてないしな』
「霊能力を持ってるから見えるんでしょ?」
『じゃな。まれに力がなくとも見えるやつもおるから、わしらも普段は見えないようにしてあるがな』
貧乏神が言うように、ジュリエッタたち以外に気付かれたことはない。
マリーには見えているが、一般の人からすると全く見えていないようなのだ。
神に憑りつかれたといって、マリーに異常があるかと言われれば全くなく、傍にいるだけ。
一定の範囲内で好き勝手に動いているのがマリーの認識だ。
今も定位置で、死神がいきなり鎌をぶんぶん振り回して戦闘訓練を始めたり、疫病神は美容のためにヨガを始めたり、貧乏神は破けた帽子を縫い直していたりと、三者三様に何かしら始めていた。
「目障りだけどこれにも慣れた自分が悔しい」
お読みいただきましてありがとうございます。