11 神憑き少女は小銭が好き
枚数を数えるとき四谷怪談が頭に浮かぶのは何故でしょう。
自室の机の上に4種類の硬貨を並べ数えていく。
25セント硬貨のクォーター、10セント硬貨のダイム、5セント硬貨のニッケル、1セント硬貨のペニー。
今月はご近所さんからの頼まれごとが多く、結構な感じでお駄賃が稼げていた。
「うふっ、うふふふっ、うふ。硬貨がいっぱい」
『『『こわっ!?』』』
小銭を積み上げてニマニマ笑うマリーに三人の神もドン引きだ。
今日は月末最終日、マリーは一か月の間にお手伝いでもらったお駄賃を集計していた。
ちょっとしたお手伝いもマリーの収入源の一つだ。
例えば、犬の散歩の代行であったり、庭の掃除だったり、買い物の代行であったりと、子供でもできる仕事だってある。誰がやっても概ね同じ報酬だ。
お駄賃は子供にとっての収入源。その分競争も激しく、つてが大事なってくる。
マリーにとって住んでいる施設が教会を兼ねているのが大きい。
信徒による参拝者が多く、ご近所さんとの顔つなぎもできるからだ。
小さな子供でも仕事を与えられ、それに応えれば報酬が貰える。
当然ちゃんと仕事ができていなければ、やり直しも要求される。
その辺りは子供が相手とは言えシビアであり、寛容なところでもある。
そうやって子供たちは社会の知識とお金について学んでいくのである。
ちなみに教会や施設でのお手伝いは、基本自分たちのために行うことだから報酬はない。
「クォーターが24枚で6ドル、ダイムが48枚で4.8ドル、ニッケルが40枚で2ドル、ペニーが205枚で2.05ドル。合計14.85ドル。学用品を買った分差し引いてもまだこんだけあるって凄くない?」
『必要なものを買って残りが10ドルを超えてるのは凄いんじゃないか?』
『今までの最高記録じゃの~』
『これはもしかして今度のペニー戦争でかなり貢献できるんじゃない?』
「でしょ~」(どやぁ)
毎年、年末近くになるとクラス対抗ペニー戦争の開票結果が行われる。
児童が自分の小遣いからペニー硬貨をクラスに寄付して、総額を競い合う。
一番を取ったクラスには学校からご褒美として休み時間の延長が認められたり、ピザパーティをしてもらえたりする。
「今月はお手伝いがいっぱいできたからね。お駄賃も多かったわ」
『『『……ああ~』』』
「何よその態度?」
『それは~』
『なんというかじゃな~』
『マリーがそれだけ暇だったってことかと』
「……お金稼げたからいいんだもん」
そう答えるしかできないマリーだった。
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