10 神憑き少女は仮装する
10月といえばハロウィン。
今年も渋谷とかすごいんだろうなと思いつつ。
マリーたちは、ジュリエッタと共に施設の裏にある小さな畑に来ていた。
ジュリエッタとマリーは手に籠を持っており、畑へ収穫に来たのである。
マリーは畑にしゃがみ込み作物に手を伸ばす。
「これなんかよさげね。どうジュリエッタ?」
「ええ、食べごろだと思いますよ。マリーも随分と見分けられるようになってきましたね」
「えへへへ」
『ほう、これは本当に出来の良さそうなカボチャじゃなー』
「当たり前じゃない。施設のみんなで大事に育ててるんだから」
施設の裏にある小さな畑で作っているカボチャの収穫。
ここにはカボチャの他にニンジンやトマトなども植えてある。
施設の食費が助かるほか、子供たちの教育にも役に立っている。
しっかりと学び考え、努力を継続し、愛情をもって育てなければ良い農作物は育たない。
ちょっとしたことで成長が悪くなったり、病気を発生させてしまったりする。
施設の子供たちはジュリエッタの指導のもと、毎日交代で世話に励んでいた。
今日はマリーの当番だった。
ジュリエッタと一緒にいい色合いになっているカボチャを選んで収穫していく。
『カボチャといえば、ハロウィンも近いわねぇ』
『そうだな。おいジュリエッタ今年も子供たちに行かせるのだろ?』
「そうですねえ。毎年の恒例行事ですし、子供たちが来るのを楽しみされている方々もいらっしゃいますからね」
『マリーは去年どんな格好しとったかいのう?』
『去年は白粉に目の周りを真っ黒に塗ってたわねえ。あれは何だったのかしらぁ?』
「……一応、骨の真似。一番お化けっぽいし」
『何、あれは俺の真似だったのか。だったら鎌も持つべきだっただろ』
『お化けっぽいって言われたのは気にしないのねぇ』
『神様扱いされてないのにのう』
「一応、神様なんですけどねえ」
疫病神と貧乏神、ジュリエッタは死神に失礼な物言いをする。
「骨が持ってるような大鎌なんてそこらにあるわけないでしょう」
『いや、そこはリアリティを求めてだな』
「そんなリアリティはいらない」
『今年はリベンジだ。農作業などやめて大鎌を作るぞ』
「何のリベンジよ。そんなものよりご飯の方が大事に決まってるでしょ」
☆
待ち合わせ場所でマリーはアイラと合流した。
「マリーちゃんお待たせ。……マリーちゃん今年の格好すごくない?」
「あ、うん。まあ、ちょっとね」
「そんな大きな鎌まで作っちゃって本格的だね。立派な死神に見えるよ。それなにで作ったの?」
「段ボールで作ったの。あまりにしつこく言ってくるから負けたんだけどね」
「え、負けた?」
「いや、なんでもない。いこっか」
マリーとアイラは手を繋いでご近所さん周りを始める。
『フフフフ、やはり死神には大鎌だな』
『『……死神やりすぎ』』
死神はマリーが折れるまで、選挙でもするかのように毎日大鎌をアピールしたのだった。
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