表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

0 プロローグ

ネタが降臨したので書いてみた。

多分、神様のせい。 

 古びた養護施設内の教会で祈りを捧げる少女がいる。

 まだ成長しきっていない未熟な少女だったが、その姿は美しかった。

 しゃがんで祈りを捧げる彼女の金髪は床に着くほど長く、天井から射す光にキラキラと輝く。

 小さな手を重ね、誰かのために祈りを捧げる姿は、人が見れば心打たれるものがあるだろう。

 それほどに祈る少女の姿は美しく見え、神々しささえ感じられた。


 カツンと教会の床に靴の音がして、少女は静かに目を開けた。

 少女が振り返ると、そこに執事服に身を包んだ老齢の男がいた。

「マリー様お迎えに上がりました。旦那様と奥様がまもなく出られます」

 小さな笑顔を浮かべながら言った

「ビオラさんありがとうございます。無理を言って申しわけありませんでした」

 美しき少女――マリーは立ち上がり、満面の笑みと感謝の言葉をビオラに向けた。


 老執事のビオラのあとを、マリーはついていく。

 1年ばかりと短い期間であったが、世話になった施設を名残惜しむように目を馳せながら。

 両親を事故で失い、身寄りのないマリーは擁護施設へと預けられることになった。

 幸いなことに養護施設のシスターは躾にこそ厳しい人であったが、とても優しく、心からマリーのことを慈しんで育ててくれた。同じく施設で過ごす子供たちも、些細な喧嘩はするけれど、困ったときには絶対に助けてくれるとても頼れる家族だった。そんな環境でマリーは居心地よく仲良く暮らせていたのである。


 兄弟姉妹同様にこの施設でともに育った者たちは、別れを惜しんでくれるだろうか。

 祝福してくれるだろうか。また会いにくることは叶うのだろうか。

 そんな不安も少女の胸にかすめていた。


 別れの理由――それはマリーに里親が見つかったからである。

 里親となるデービット夫妻は教会のミサに何度も来てくれていた。

 子供に恵まれなかった夫妻は施設の子供たちにおやつをくれたり、一緒に遊んでくれるとても心の優しい夫婦であった。その夫妻からマリーは養女にならないかと誘われ、彼女も合意したのである。


「みんな今までありがとう。みんなのこと絶対に忘れないから」 


 施設のみんなへ送る最後のあいさつ。

 涙をこらえて言い切った。


 言葉を受けた者たちは、中には大泣きする者もいた。

 ともに苦労し、ともに喜び、苦楽を分かち合ってきた仲間との別れがそうさせた。


「またいつか、みんなに会いに来るから、待っていて」


 そう言って少女は歩き出した。  

  

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ