地獄のカラオケ終わる!
「じゃあ、僕はさっき歌ったので阿智君か青井さんからどうぞ!ゾウさんチャレンジですよ」
歌う曲をゾウさんで埋め尽くした小萩君は、ニヤッとしながら、マイクを机の上に置いた。
(たしかに皆んなが知ってる歌って言ったけど、禿げの野郎め…)
青井は、心の中で、どんどん隣の小萩への怒りを積もらせていた。
「俺が歌うよ。青井さんは見てて!」
この状況で女子に歌わせるわけにはいかないと思ったのか心までイケメンな阿智君は、机の上のマイクを持った。
(頑張って)
そんな阿智君の姿には、胸を打たれるものがあった。
馴染みの笛の音色が聞こえて、阿智君のゾウさんタイムが始まった。
阿智君が歌っている間小萩君は腕も足を組んで、ニヤついていた。
阿智君が歌い終わると、いつのまにか全国対戦モードを入れられていたらしく全国でゾウさんを歌った人の中で順位が出た。結果は、30人中30位で61点と言う結果だった。
「どう?ゾウさんの厳しさが分かって貰えたかな?ゾウさんは非常に短い曲、一字一句が重要なんだよ。発声の仕方から、リズムの取り方。ゾウさんには歌の全てが詰まっている。ゾウさんでその程度ということは阿智君、君さては音痴だね。次は、僕がお手本を見せてあげるよ」
小萩君は、阿智君の結果を見ると、これを見よがしにイケメンの阿智君を口撃してきた。
そして、全国でビリの阿智君の手からマイクを奪い取った。
そして、再び前奏の笛の音色が流れ始めた。
歌い終わると、小萩君の時と同じように、点数と順位が表示された。順位は全国2位で、点数は98点だった。
実際、小萩君のゾウさんは、神秘的でとても上手かった。
だか、所詮はゾウさんである。青井は真顔だった。
「どうだぁ!これが僕のゾウさんだ。君たちには真似できないだろ。愛情が違うんだよ。まぁ、そんな僕でも1位にはなれないんだけどね。ゾウさんで全国1位目指して共に頑張ろう!」
小萩君は、自分のゾウさんを自慢できてとても満足そうだった。
「くっそ、小萩君ゾウさん上手いんだね。おれも負けないぞ」
どうやら、煽りを受けたのか、単純にゾウさんにハマったのかは分からないが、阿智君までゾウさんチャレンジにやる気なったらしい。
その後は、ひたすら2人でゾウさんを交互に歌い続けていた。
途中一回阿智君に「青井さんもゾウさん歌うかい?」と聞かれたが、「いや別に…」と断った。
(てゆーかなんで、高校初のカラオケで男2人のゾウさんを何時間も聞かなきゃなんなんだよ。一字一句丁寧に、ゾの時はもっと口を開けてとか知らねんだよ。
後、さっきから扉の下のところ普通のガラスだから、向かいのクラスメイトと目が合って気まずいんだよ)
青井は内心めちゃくちゃキレていた。
そして、そのまま4時間半くらいゾウさんを聞き続けて高校初のカラオケは終了した。
「いやー、僕楽しかったよ。また行こうね」
「意外とゾウさん楽しかったわ。また、指導頼むよ小萩君」
(私は、二度と行かねーけどな)
青井は、無言のままカラオケ出ると、別れて家に帰った。そして、高校生活1日目が終了した。
【阿智 政豊】彼は、残念なイケメンである。